【シナリオブログ】スタンプゲーム⑤

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築井「おらぁ」
貴志「うわっ」

  築井に殴られ、倒れる貴志。
  その横では将太が板場に殴られている。

将太「(倒れて)ぐうぅぅ」
築井「お前ら、行くぞ。くそ、時間食っちまった」

  築井たちが去っていく。
  良子が貴志たちの元に駆け寄ってくる。

良子「あんたたち、弱いわね」
将太「お前なぁ、『大丈夫?』だろ、そこは。気がきかねえやつだな」
良子「なんで、あんたに気を使わなきゃなんないのよ」
将太「……ちっ。かわいくねえ奴」
良子「でも、二人とも、ありがとう」
将太「……バカ。お前のためじゃねえよ」
貴志「えへへ」
良子「そろそろ立ちなさいよ。みっともない」
将太「立ち上がれねえんだよ」
貴志「もう少し休ませて」
良子「……去年のちょうど、今日。弟と二人でスタンプラリーに参加したの」
貴志・将太「……?」
良子「弟はまだ五歳で、どこに行くにもわたしの後をついてきてた。わたしはそれが嫌だった。遊びに行くのを我慢して、弟の面倒をみたりしてた。あの日もそうだった。友達の家に遊びに行く約束してたのに、あの子がスタンプラリーのキーホルダーが欲しいなんて言い出して……。わたしは約束を断わって、弟と一緒にスタンプラリーに参加したの。それなのに、あの子、全然わたしの言うことを聞かないの。わたし、何回も『この子さえいなかったら』って思った。それで、あの子を少し困らせてやろうって思って、手を放して隠れたの。あの子、泣きながら必死にわたしを捜してた。ふらふらって道路に飛び出して……」
将太「痛っ(立ち上がる)貴志、立てるか?」
貴志「う、うん(立ち上がる)」
良子「(涙声で)だから、わたし、あの子が好きだったガオレインのキーホルダーを……。あの子にあげたかったの」
将太「……」
貴志「じゃあ、あげようよ」
良子「……え? でも」
将太「忘れたのか。良子のシートは……」

  貴志がポケットの中をゴソゴソと探って
取り出す。

貴志「はい、これ」
良子「それって……」
将太「スタンプシートじゃねえか。どうしたんだ、それ」
貴志「えっと、あの人のポケットから……」
良子「うそー」
将太「すげー。お前、すげーよ」
貴志「えへへ」
将太「貴志。お前、立派なスリ師になれるぞ」
貴志「将太くん。それ、ほめてないよ」
将太「あん? そうか? まあ、いいじゃねえか(バンバンと貴志の背中を叩く)」
貴志「はい。良子ちゃん」
良子「……でも、受け取れないよ」
貴志「え? どうして?」
良子「だって、わたし、ふたりにウソついてたし……」
貴志「……ぼくは、良子ちゃんのひとり言、聞いてないよ」
良子「……ひとり言?」
将太「そうそう、ひとり言。お前、ブツブツと何か言ってたけど聞こえないぞ。な?」
貴志「うん。だから、はい。スタンプシート。キーホルダー、弟にあげるんでしょ」
良子「……ありがとう」
将太「よし。最後の一個だ。行くぞ!」
良子「(少し涙声で)おー」
貴志「うん!」

貴志(N)「みんな、それぞれ悩みをかかえてるんだ。たとえ、それがどんなものでも、受け止めてくれる。それが友達……。だから、ふたりに隠しごとをしているぼくは、友達に、なれていないんだと思う。ふたりと友達になりたい。でも、でも、それ以上にふたりに嫌われることが怖い。本当の事を言ったら、卑怯者と言われるだろうから」

  駅の中。

貴志「この駅が最後だね」
将太「結局、普通に回るより、時間かかっちまったな」
良子「将太が考えたことだもん。仕方ないよ」
将太「……お前なぁ」
貴志「でも、ぼくはこれで良かったと思う」
良子「うん」
将太「そうだな。じゃあ、最後の一個を押しに行くか」

  三人が歩き出す。
  その時、遠くから慌しい声が響く。

築井「くそぉ。なんで無いんだよ!」
板場「もう少し、探してみましょうよ」
築井「うるせえ! 何回も探してんだよ。……板場。お前のよこせ」
板場「そ、そんなぁ」

  立ち止まって見ている三人。

貴志「あ、あの人……」
将太「ぷっ、くっくっく。ざまあみろ」
良子「ねえ、どうする?」
貴志「もう少し、様子を見よう。また盗られたら嫌だし」
将太「そうだな」
築井「じゃあ、柏田。お前のよこせ!」
柏田「ちょ、ちょっと待ってよー」

  築井たちの声よりも大きな声が響く。

築井の母「憲次! 何やってんだい!」
築井「げ、母ちゃん……」
築井の母「あんた、学校から連絡あったのよ。
勝手に学校サボって」
築井「こ、これには、訳が……」
築井の母「言い訳は家で聞くから、来なさい」
築井「ちょっと、待って……」
築井の母「いいから、来なさい!」
築井「は、はい!」

  母親の後をトボトボと着いていく築井。

築井「お前らも来い」
柏田・板場「そ、そんなぁ」

  築井の後を歩いていく柏田と板場。

将太「よし。じゃま者も消えた。行くぞ」

  貴志、将太、良子がスタンプ台まで走る。

将太「最後の一個だ」
貴志「なんか、ドキドキするね」
良子「ちょっと、さびしい気もするけど」
将太「(深呼吸をして)じゃあ、押すぞ」

  バン、バン、バンとスタンプを押す三人。

将太「あとは、交換所に行くだけだ」
貴志「三つ残ってればいいんだけど」
良子「きっとあるよ」

  三人に近づく足音。

貴志の母「……貴志?」
貴志「え?」
貴志の母「貴志、どうして、こんな所にいるの?」
貴志「……お母さん」
将太「マジか……」
貴志の母「学校から連絡があったのよ。『貴志くんが登校していません』って。一体なにしてるの?」
貴志「……それは」
良子「あ、あの。もう少し待ってもらえませんか?」
将太「そうそう。あとちょっとでいいんだ」
貴志の母「あなた達が貴志をたぶらかしたのね。家の子に変なことを教えるのは止めて頂戴!」
貴志「ち、ちが……」
将太「別に、おれたちはっ」
良子「将太、ダメ!」
貴志の母「さ、帰りましょ。貴志に聞きたいこともあるし」
貴志「……聞きたいこと?」
貴志の母「栄一君のお母さんから相談されたの。栄一君が学校に行きたがらないって」
貴志「……!」
将太「……栄一?」
貴志の母「貴志と同じクラスだし、よく一緒に遊んでたでしょ。何か知らない?」
貴志「ぼ、ぼく……」
貴志の母「とにかく、帰りましょ」
将太「貴志……」
良子「貴志くん……」
貴志「(つぶやくように)……ごめん」

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