【シナリオブログ】人生オークション④

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○  街中・公園横の通り
裕介が電気代の明細書を見ながら歩いている。
明細書の金額は『¥4630』。
携帯を出して、電話をかける。
数回のコール音の後、ガチャと出る音。
裕介の母「はい? もしもし」
裕介「あ、母さん? お願いがあるんだけどさ、金送ってくれない? ちょっと今月ピンチでさ」
裕介の母「……どなたですか?」
裕介「いや、俺だって。裕介」
裕介の母「裕……介?」
裕介「いや、冗談止めてよ。あ、もしかして、連絡してなかったの、怒ってる?」
裕介の母「……息子のお友達ですか? 恵介なら今部屋にいるから呼びますよ」
裕介が目を見開く。
慌てて、電話を切る。
茫然と空を見上げる裕介。

○  裕介の実家・外観
表札には『三田村』と書いてある。
そこに背広を着た三十代前半の男が来て、家に入っていく。
その様子を家の向かいの電柱柱の陰から見ている裕介。

○  同・リビングの外
部屋の中はカーテンが閉められているので見えないが、声だけは聞こえてくる。
裕介の母親の声「就職おめでとう!」
男性の声「ありがとう、お母さん」
裕介の母親の声「仕事も決まって、家にも戻ってきてくれるし、私としては万々歳ね」
男性の声「今までの分までしっかり、親孝行するからね」
裕介の母親の声「あんたが、そんなこと言ってくれるようになったなんてね。本当に嬉しいよ」
笑い声が家の外にも聞こえてくる。
裕介「う、うう……」
ボロボロと泣き始める裕介。

○  街中・公園横の通り
虚ろな目をしながら、通りを歩く裕介。
敏也の声「腹減った。飯、食っていこうぜ」
武史の声「またここ? 敏也も好きだね」
裕介が顔を上げると、敏也と武史、男の三人が牛丼屋の前に立っている。
敏也「(裕介を見て)あ、またあいつだ。さっさと店の中に入ろうぜ」
肩をガクッと落とす。
ベンチが目に入り、公園の方へ歩いていく裕介。
崩れ落ちるようにベンチに座る。
ボーっと、空を見上げる裕介。
裕介「……」
裕介が公園を見渡す。
公園内では親子がキャッチボールなどをして遊んでいる。
ふと、一組のカップルに目がいく。

○  カフェ(回想)
裕介が奥の席に一人座っている。
周りにはカップルや家族連れの客がたくさんいる。
ふと、目の前に桜井がやってくる。
桜井「席、ご一緒していいですか?」
裕介「もう出るんで、いいですよ」
裕介が桜井に席を譲るようにして立とうとする。
桜井「あの……迷惑じゃなかったら、もう少し席にいてもらえませんか?」
裕介「え?」
桜井「一人でいると、声かけられることが多くて……」
裕介「でもさ、それだと、俺に声かけられるんじゃない?」
桜井が目を丸くした後、舌をペロッと出して微笑む。
桜井「それもそうですよね」
回想終わり。

○  公園
木原の声「何かあったのかい?」
裕介が横を向くと、そこに木原が座っている。
木原「寂しそうな顔してるわね」
裕介「……」
木原「あ、そうだ。おにぎり持ってるから食べない?」
木原が隣に置いてあるバスケットから、アルミホイルに包まれたおにぎりを出す。
裕介「……」
裕介が顔を逸らして、立ち上がる。
木原「あら、もう行っちゃうの?」
裕介「……」
歩き始める裕介。
そして、徐々にスピードを速めていき、走り出す。

○  裕介のアパート・部屋
ベッドに寝転がっている裕介。
腹が鳴り、起き上がる。
パソコンを開き、オークションの画面を開く。
出展画面に『男・恋人との思い出』と打ち込んでいく。
その途中、桜井と一緒に写っている写真が目に入る。
裕介「くそっ!」
×ボタンを押してブラウザ自体を消す。

○  街中・公園横の通り
フラフラと通りを歩く裕介。
定食屋の前で立ち止まる。
見ているのはバイト募集の張り紙。
店の中に入っていく裕介。

○  同
定食屋から出てくる裕介。
大きくため息をつき、肩を落として歩き始める。

○  同
ラーメン屋の前で立ち止まっている裕介。
バイト募集中の紙を見て、店に入る。

○  同
顔をしかめながら店から出てくる。
裕介「んっだよ! くそっ!」
歩き始める裕介。

○  同・公園
ベンチにどっかりと座る裕介。
裕介「……」
ぐったりと前かがみになる。
木原の声「あら、あなた、この前の……」
裕介が顔を上げて横を見ると木原が座っている。
裕介「……」
そのとき、裕介の腹が鳴る。
木原「お腹減ってるのかい?」
木原がバスケットからアルミホイルに包まれたおにぎりを出して、差し出す。
裕介「……あ、でも」
木原「多く作りすぎちゃってねぇ。残して持って帰るのもなんだから、食べてくれないかい?」
裕介「い、いただきます……」
おにぎりを受け取って、アルミホイルの包み紙を取る。
そして、おにぎりを食べ始める裕介。
ポロポロと涙が出始める。
裕介「う、うう……」
泣きながらおにぎりを頬張る裕介。

○  同(夕方)
裕介と木原がベンチに並んで座っている。
木原「……」
裕介「……」
木原が腕時計を見る。
木原「あ、そろそろ帰らなくっちゃ」
木原が立ち上がる。
木原「それじゃ、またね」
裕介「(立ち上がって)あ、ありがとうございました」
木原「こちらこそ、食べてくれてありがとうね」
木原が立ち去っていく後姿を見送る裕介。

○  同
パン屋の壁には『バイト募集』の張り紙。
そのパン屋から、ため息をつきながら出てくる。
歩いていると、公園の場所へ差し掛かる。
木原「あら、また会ったわね」
裕介「(頭を下げて)……あ、どうも」

○  同
ベンチに裕介と木原が並んで座っている。
裕介はおにぎりを食べている。
裕介「なんか、また貰っちゃってすいません」
木原「いいのよ。私も、食べて貰えるなんて、嬉しくってねえ。昔を思い出すよ」
裕介「……昔?」
木原「この公園はね。孫とよく一緒に来てたんだよ。私が作ったおにぎりを、美味しそうに食べてくれたの」
裕介「へー。そうなんですか」
木原「私は、木原順子。あなたは?」
裕介「三田村裕介です」
木原「あら、良い名前ね」
裕介「そんなこと、初めて言われました」
木原「そう? ご両親には感謝したほうがいいわよ」
裕介「……両親」
木原「あ、ごめんなさい。辛いこと、思い出させちゃったかしら」
裕介「いえ。大丈夫です。……それより、その……また、来ていいですか?」
木原「もちろん。嬉しいわ」

○  コンビニ・休憩所
店長と裕介が向かい合っている。
裕介の表情は緊張して固い。
裕介の履歴書を見て、渋い顔をしている店長。

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