【シナリオブログ】人生オークション⑥

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○  家電量販店・店内
店内を一生懸命掃除する裕介。
それを陰から見ている店長。

○  同
笑顔で接客する裕介。
それを見て、笑みを浮かべる店長。

○  同・事務室
店長と裕介が向かい合って話している。
裕介が目を開いて驚き、自分を指差す。
店長が微笑んで頷く。

○  公園
ベンチに座っている木原に駆け寄る裕介。
木原に、興奮気味に報告する裕介。
木原が嬉しそうに微笑む。

○  家電量販店・店内
裕介が笑顔で接客している。

○  公園
ベンチに座っている木原が、立ち上がろうとする。
よろけて倒れ、ベンチの角に頭を打ち付ける。
額から大量の血が流れる。

○  街中・公園横の通り
救急車がサイレンを鳴らしながら、進んでいる。

○  家電量販店・店内
接客している裕介がふと顔を上げ、不思議そうに外の方を見る。

○  同・事務所
裕介がパソコンに向かい、データを入力している。
店員1「お疲れさまでした」
裕介「お疲れ様です」
私服に着替えた店員1が帰っていく。
店員2「聞いた? 今日、昼間の救急車、この近くだったんだって」
店員3「うん。公園でしょ? おばあさんが血だらけで倒れてたらしいよ」
裕介「……」
一瞬、手を止めるが、すぐに作業を続ける裕介。

○  公園
ベンチに座っている裕介。
横を見るが、木原はいない。
裕介「……」
そこに老婦人が通りかかる。
老婦人「あら、木原さんのお孫さん?」
裕介「あ、いや……」
老婦人「木原さん、大丈夫? 凄い怪我だったみたいだけど……」
裕介「え? どういうことですか?」
立ち上がり、老婦人に詰め寄る。

○  病院
受付に駆け寄る裕介。
裕介「あの、木原って人が入院してるはずなんですけど!」

○  同・病室
木原がベッドで寝ている。
頭には包帯が巻かれている。
その様子をしょんぼりとした表情で見下ろしている裕介。

○  同・診察室
先生「無理してたんだと思います。随分と悪化していて、本当はすぐに手術しないといけないんですけど……」
裕介「……」
先生「木原さんは身寄りがないですし、手術代もないようでして……」
裕介「あの……その、手術代、他人が払ってもいいんですか?」
先生「え? ええ……。それは可能ですけど」

○  コンビニ・店内
ATMの前に立って操作している裕介。
画面には『残高 ¥235670』と表示されている。
大きく、ため息をつく裕介。

○  家電量販店・店内
他の店員に頼み込む裕介。
首を横に振られて断れる。
違う店員に頼み込もうとする裕介だが、後ろから店長に肩を叩かれる。
もうやめなさいとばかりに首を横に振る。

○  銀行・外観
裕介が肩を落とし、入り口から出てくる。

○  貸金融・外観
店から出て来た裕介の手には十万円程度のお金しかない。
大きくため息をつく裕介。

○  裕介のアパート・部屋
パソコンに向かっている裕介。
オークションの画面が開かれている。
パソコンの横にある、桜井と写っている写真をジッと見る。
目をつぶる裕介。
フラッシュバック。

○  公園
ベンチで裕介と木原が並んで座っている。
楽しそうに話している裕介と木原。
フラッシュバック

○  同
ベンチで木原が作ったおにぎりを頬張る裕介。
喉を詰まらせる裕介に、お茶を差し出してくれる木原。

○  裕介のアパート・部屋
目をカッと見開く裕介。
そして、パソコンを操作し始める。

○  病院・病室
ベッドの上で上半身を起こし、他の患者さんと話している木原。
患者「へえ。素敵な人ね。手術代を払うなんて、凄いわ」
木原「ええ。感謝してもしきれないわ。本当の孫みたいですのよ」
そこに裕介が花束を持って、入ってくる。
裕介「木原さん。手術うまくいったみたいだね。良かった」
花束を渡しながら話しかける裕介。
木原「(ポカンとして)えっと……どこかでお会いしました?」
裕介「え? ああ、その……前に、少し話したこと、あって……」
木原「あら、そうですか……」
裕介「実は友人が入院してて見舞いにって思ってたんだけど、もう退院しちゃったみたいで……。だから、その、花、貰ってもらえると嬉しい……です」
木原「……そ、そう? ありがとう」
不思議そうに花束を受け取る木原。
そこに青年が入ってくる。
青年「木原さん。具合、どう?」
木原「あら、来てくれたのね。(隣の患者に)ほら、さっき、話してた子よ。いつもお見舞いに来てくれるの」
裕介が寂しそうな顔をして、部屋を出て行く。
最後にもう一度振り返る。
木原と青年が楽しそうに話しているのを見て、再び前を見て歩き始める。

○  家電量販店・店内
見知らぬ男が接客している。
それを寂しそうに見ている裕介。

○  カフェ
裕介が奥の席にポツンと一人座っている。
周りにはカップルや家族連れの客がたくさんいる。
ふと、目の前に桜井がやってくる。
桜井「席、ご一緒していいですか?」
裕介「(目を見開いて)望……?」
桜井「え?」
裕介「あ、いえ。なんでありません。どうぞ」
裕介が桜井に席を譲るようにして立とうとする。
桜井「あの……迷惑じゃなかったら、もう少し席にいてもらえませんか?」
裕介「えっと……」
桜井「一人でいると、声かけられることが多くて……」
それを聞いて、裕介が微笑む。
裕介「それだと、俺に声かけられるんじゃない?」
桜井が目を丸くした後、舌をペロッと出して微笑む。
桜井「それもそうですよね」
桜井が裕介の向かい側に座る。
桜井「ここには良く来るんですか?」

○  駅前・時計台の下
裕介が時計台の下で待っている。
時計は『九時五十五分』を差している。
そこに桜井が走ってくる。
桜井が裕介の目の前で手を合わせて、ごめんというようなゼスチャーをする。
裕介が微笑んで首を横に振る。
裕介と桜井が並んで歩き出す。
二人の手はギュッと強く握られている。

終わり。

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