【Web小説】龍と姫と聖剣エクスカリバー⑱

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 剣と槍が交差し、火花が散る。
 オレの戦術は最初と同じ、ヴィジョンで速さを最大限に引き出してヒットアンドウェイで距離を保ちつつ攻撃するのに対して、ジーノはその場から動かず、あくまでオレの攻撃に対して対処するという戦法だ。
 奴のヴィジョンの能力である重力増加のせいで、若干スピードが鈍るがそれでもジーノはオレの動きにはついて来られていない。
 フィオナが送ってくれる力を使えば、ヴィジョンを解除することも容易だけど、あくまで自分の力だけで勝ちたい。
 だから、体が回復してエクスカリバーを取り返してからは、ドラゴンの力を使っていないのだ。
 フィオナの方もそのことに気付いたのか、力が流れ込んでこなくなる。
 ジーノの方も、気付いているのか怒りの形相でオレを睨む。
「舐めるなよ、小僧が!」
 オレなんかに情けをかけられていると勘違いしているのか、プライドを傷つけられたと思っているんだろう。
 だが、それでもジーノは暴走することはなかった。
 あくまで自分のスタイルを貫き通す。
 オレの速さに慣れてきたのか、それともこっちのスピードが鈍くなってきたのか、徐々にジーノの攻撃を被弾するようになってきた。
 気を抜けば殺られる。
 手や足に浅い傷が刻まれていく。
 ただ、回復に力を回している余裕はない。
 とにかく、全ての力をスピードに投入する。
 低い姿勢からの突き上げ。
 槍の柄に弾かれ軌道は逸れたが、ジーノの肩口をかする。
 僅かに体勢が崩れた。
 ――勝機。
 オレは足を止め、その力を腕に回す。
 光速の連撃。
 接近戦での攻防は、オレの方が有利だった。
 それは剣と槍という武器の差だ。
 オレの攻撃に対し、ジーノの動きが少しずつ遅れていく。
 そして――。
 ついに、オレの剣がジーノの胸を貫いた。
「ぐっ……」
 口から血を吐き、その場に崩れ落ちるジーノ。
「……まさか、本当に自力で負けるとは思いませんでした」
 倒れた状態でオレを見上げる。その表情は初めて見せる穏やかなものだった。
「バリス先生と……あんたのおかげさ」
「ふふ。師匠は、あなたの成長を見れなくて、さぞかし残念だったでしょうね」
「……」
 先生は誰よりもオレのことを評価してくれていたのかもしれない。オレ自身、自分がここまでやれるなんて思いもしなかった。
 ジーノの言う通り、この姿を先生に見てもらいたかった。
「私に勝ったご褒美です。あっちに行ったら、彼に伝えておきますよ」
「……ああ。頼むよ」 
 ジーノは満足そうな笑みを浮かべ、目を閉じたのだった。

 グングニルの発動を解除し、エクスカリバーと共に内ポケットに入れる。
 あとはフィオナをどうやってドラゴンの中から回収するか。
 そう思って振り向いた瞬間だった。
 そこには衝撃的な光景が。
 フィオナが壁に寄り掛かった状態で座り込んでいる。
 ぐったりとしていて、意識がなさそうだった。
「フィオナ!」
 オレが慌ててかけると、あっさりと顔を上げた。
「あ、終わった?」
 ……ただ、普通に寝てただけだった。
「……おい」
「なによ。あんたが、あいつを倒すのが遅いからでしょ」
「……そんなに簡単に出られるもんなのかよ」
「そうね。私もびっくりしたくらいよ。あんたに力を送る必要もないみたいだし、暇だなーって思ってたら、いつの間にか外に出ていたわ」
「いや、暇って……。それにオレがあんな死闘を繰り広げてたのに寝るって……」
 相変わらず、神経が太い奴だ。オレが負けたらどうすんだよ。
「仕方ないじゃない。早すぎて目で追えないし。これはもう、心眼に頼るしかないと思って目を閉じたら、意識が飛んじゃったのよ」
「お前は心眼を舐めてる」
 そう言いながら手を差し伸べると、フィオナはその手を握って立ち上がる。
「さてと。まずは家具とか、食糧とか調達してこないとな」
「は? 何それ?」
「こんな何もないところで、ずっと封印の術とかしてられないだろ」
「……ああ。そのこと」
 なーんだと、つぶやき、つまらなそうに前髪を掻き上げるフィオナ。
「必要はないわ」
「え? 必要な言って、お前はそうかもしれないけど、オレは地面で寝るとか嫌だぞ」
「だから、封印の術自体が必要なくなったのよ」
「……へ?」
 衝撃的なことをさらりと言ってのける。
 フィオナはドラゴンを見上げる。オレもつられて見上げると、ドラゴンの瞳は閉じられていた。
「これなら、少なくてもあと千年は起きないと思うわ」
「……どういうことだ? 封印の術は長い時間がかかるって言ってただろ」
「ほら、私、一時的にはドラゴンと同化してたでしょ? ドラゴンの力を使い放題だったのよ。で、その力で強引に眠らせた、ってわけ」
「……物凄い、力技だな」
 ホント、器がデカ過ぎて呆れる。
「本当は、お父さんが助けてくれたんだと思う」
 そう言って、ネックレスを外してオレの目の前に掲げてきた。
 ネックレスに付いていた龍石が砕け散っている。
「ドラゴンに吸収されて意識が朦朧としていたとき、あんたの声が聞こえて……それで生きたいって思った瞬間、龍石が砕けて、意識がはっきりとしたの」
 フィオナの話を聞きながら、もう一度龍石をジッと見つめる。
 確か、もう絶滅したドラゴンから採れたものだと言っていた。特殊な力を持ったドラゴンだったのかもしれない。
「そしたら、今度はドラゴンの意思を私が支配できるようになったってわけよ」
「なるほどな。もしかしたらこの石は、意識を増幅させる力があったのかもな」
 考えてみれば、ドラゴンの意識や力を同化した状態で操るなんて無理な話だ。
 ジーノだって、そんなことはできないと思っていただろう。だからこそ、フィオナを必要としていたのだから。
 そんなことを考えていると、フィオナが「ふふん」と鼻を鳴らす。
「というわけで、巫女からは解放されたってわけよ」
 子供のように無邪気に笑うフィオナに対して、オレはただただ大きくため息を吐くことしかできなかったのだ。

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