【Web小説】トーテムポールと学校の七不思議⑲

【Web小説】トーテムポールと学校の七不思議⑲

「なるほど。ありがとう、水麗さん。私の分を残してくれたのね」

「お前は、僕の顔を見て、まだ痛めつけようっていうのか?」

あれから三十分かけて水麗にボコボコにされ、床に正座されられている僕。
顔はおたふく風邪を遥かに凌駕した面積と熱を持っている。

視界の半分が見えない。
なるほど。
試合後のボクサーはこんな風景なのか。

「私は控えめな性格なのよ。止めを刺せればそれでいいわ」

「余計、タチ悪ぃわ!」

唯織ちゃんはというと、部屋の隅で震えていた。まさか、あそこまで水麗が豹変するとは思っていなかったのだろう。

「まさか、新入部員の唯織さんに抜け駆けされるとは思ってもみなかったわ」

「うんうん。油断したねー。絶対に、ないと思ったのになー」

「これは、教育が必要ね」

「ひっ!」

チラリと布姫が唯織ちゃんを見る。

「何をする気だ? 止めろ!」

「悪い子猫ちゃんにはたーっぷり心の芯に刻み込んであげないとね。佐藤くんの変態性を」

「そっちかよ! あ、違った! この突っ込みだと、僕が変態だと認めてしまう形になっちまう」

「絶対に手を出さないどころか、半径百メートルに近づくのも嫌になるくらい、達っちんは変態だって教え込まないと!」

「僕の人権を蹂躙するんじゃねえっ!」

「佐藤くんの人権? ……ぷぷっ!」

何言っちゃってんのこいつ、っていう目で見てくる布姫。
ああ、こういうのが一番傷つくんだよなー。

「まあ、いおりんの教育は次の合宿でするとして、まずは土曜日の結果見に行こうよ」

「教育はするんだな……」

これ以上いたぶられるのも嫌なので、水麗に同意してトーテムポールの場所へ行く。

「おお! ほらほら! 見て見て! 顔が増えてるよー!」

水麗の指さす方向には髑髏マーク……いや、がしゃ髑髏の顔が増えていた。

「それでも、先は長いわね」

「んー。そうだねー」

「ああ、そうだ。唯織ちゃん。このトーテムポールなんだけど……」

僕が説明しようとした瞬間だった。

いきなり、トーテムポールが強い、目がくらむほどの光を発し出した。
まるで、最初に見つけた時みたいに。

「きゃあっ!」

「んんっ!」

僕、布姫、水麗が慌てて目を手で防ぐ。
だが、唯織ちゃんだけはトーテムポールを凝視している。

もしかして、これも見えてないんだろうか?
それなら、ちょっと可愛そうな気がする。

「……すごい」

ポツリと唯織ちゃんがつぶやいた。

「え?」

「すごいです! 今、この木の柱、光りましたよ!」

今までにないくらい興奮気味の唯織ちゃんがトーテムポールに近づき、ペタペタと触ったり、裏側を見たりしている。
そういえば、水麗も同じようなことをしていたことを思い出す。

「何も仕掛けがありませんね! これは怪奇現象なんでしょうか?」

「……まあ、そうじゃないかな?」

「うふふふ。そうですか。怪奇現象ですか」

泣きじゃくった顔から一転、満面の笑み。やっぱり、唯織ちゃんは笑顔の方が似合う。

「私、新聞部に入って良かったです!」

太陽の光に照らされ、さながら天使のように光っている唯織ちゃんは可愛かった。
こうして、創部から一年と三か月。我が新聞部に新しいメンバーが増えたのだった。

3章 終わり

<18ページ目へ> <20ページ目へ>