【ボイスドラマ】たとえば、ニコルズ家の可憐な妹について①

【ボイスドラマ】たとえば、ニコルズ家の可憐な妹について①

人物表

ジェラルド・ニコルズ (23) 

スチュアート・ニコルズ(21)ジェラルドの弟

シンシア・オールドリッジ(14)

チェスター・バーナード(28)

キャロン・ニコルズ  (17)ジェラルドの妹   

○ シーン1
  廃墟の中。
  倒れているジェラルドに銃を突き付ける チェスター。

チェスター「ジェラルド・ニコルズ。随分と手こずらせてくれたな」
ジェラルド「……く、くそ」
スチュアート「兄さん!」
シンシア「お兄様!」
チェスター「まあ、素人の割にはよく頑張った方だ。……が、マフィアに手を出したのは、少々はしゃぎすぎたな」
ジェラルド「シンシアは……妹は絶対に守る」
チェスター「ああ。あの世から、しっかり見守ってやってくれ」
スチュアート「逃げて! 兄さーーーん!」

  ドン! という銃声が響く。

〇 シーン2
ジェラルド(N)「いきなり絶体絶命のシーンから始まったわけだが……続きを聞いてもらう前に、まずはどうしてこうなったかを聞いてもらいたい。……事の始まりは五時間ほど前に遡ることになる」

〇 シーン3
  ニコルズ家。

ジェラルド「わわわ! ちょ、ちょっと待て」
キャロン「(パンチを繰り出す)死ねーーー!」

  ジェラルドがパンチをよける。
  大きな破壊音。

ジェラルド「か、壁が……。キャロン! お前、兄を殺す気か!」
キャロン「言ってるじゃない。死ねって……」
ジェラルド「な、何故だ! 俺は少しでもお前の負担を減らそうと洗濯物を干してただけじゃないか。感謝されても、殺される覚えはない」
キャロン「……今、あんたがその手に持っている物は何?」
ジェラルド「パンティだ」
キャロン「……誰の?」
ジェラルド「お前のだ」
キャロン「……今日の晩ご飯はハンバーグにするわ」
ジェラルド「お、そうか。俺の大好物だ。で? 肉は何だ? 牛か? 豚か? 合挽か?」
キャロン「お前のだーーーーーー!」
ジェラルド「ぎゃあああああああ!」

  破壊音が響く。
  そこにスチュアートがやってくる。

スチュアート「おやおや。騒がしいね」
ジェラルド「スチュアート。助けてくれ!」
キャロン「兄貴。どいて。巻き込まない自信は無い」
スチュアート「ふっ、可愛い妹よ。落ち着いて考えてごらん。こんなことをしても、お前の人生を棒に振るだけだよ」
キャロン「仕方ないわ」

  キャロンがジェラルドの首を掴んで締め上げる。

ジェラルド「う……うぐ」
キャロン「世界平和の為だもん」
スチュアート「いやいやいや。世界平和って。兄さんはそんな偉人じゃないよ」
キャロン「それに、ニコルズ家の名誉を守るためよ。このバカを今、殺しておかないと。……何かあった後じゃ遅いわ」
スチュアート「う……うーん」
ジェラルド「いや。何、納得してるんだよ!」
キャロン「(可愛く)はーい。ドンドン締めていきますよぉー。どこまで耐えられるかなぁ?」
ジェラルド「あ……ぐ。首が……締まる……というより……折れる……」
キャロン「(可愛く)遠慮せずに逝っちゃってくださいねぇー」
ジェラルド「が……ふ」
スチュアート「危ない、危ない、危ない! 白目剥いてるって! キャロン、ホントに死んじゃうから!」
キャロン「あはは。泡まで吹いて。なんか、死ぬ前のニワトリみたい(うっとり)」
スチュアート「え? ニワトリ殺ったことあるの? って、ホント、手を放して」

  その時、キャロンの携帯が鳴る。

スチュアート「あ、ほら、キャロン。携帯鳴ってるよ。出ないの?」
キャロン「……今、いいところなの」
スチュアート「で、でも、ほら。急用の用事かもしれないし……」
キャロン「ちっ!」

  キャロンがポケットから携帯を出し、電話に出る。

キャロン「ああっ! 誰だよ! ……あ、アルバート君?」

  キャロンがジェラルドを放す。

ジェラルド「ぐっ……」
スチュアート「大丈夫! 兄さん」
キャロン「(可愛い声で)え? ううん。何でもない。ちょっと風邪ひいちゃってさ。ヤダ。変な声聞かせちゃったね。キャロン、恥ずかしいぃ」
ジェラルド「うう……」
スチュアート「兄さん、しっかり!」
キャロン「え? 行く行く! 休日もアルバート君に会えるなんてキャロン、嬉しい。あ、ちょっと待ってね。(ジェラルドに)命拾いしたな」

  キャロンが話しながら歩いていく。

キャロン「え? 風邪? アルバート君の声聞いたら治っちゃったよぉ」
ジェラルド「……弟よ。最後に頼みがある」
スチュアート「そんな! 最後だなんて」
ジェラルド「俺の葬式には可愛い女の子を百人参列させてくれ……」
スチュアート「兄さん! 色んな意味で戻ってきて! 兄さん! 兄さーーーん!」

〇 シーン4
  街中。
  ジェラルドとスチュアートが歩いている。

ジェラルド「痛ってぇ。首、ムチウチになっちまったぜ」
スチュアート「それだけで済んだんだから、奇跡だよ」
街人1「おっ! ジェラルドじゃねえか。明日、また煙突掃除してくれねえかな?」
ジェラルド「この前やったばっかじゃねえか。何燃やしてんだよ」
街人2「あら、ジェラルドにスチュアート。散歩かい? 今、パン焼きあがったから持ていきな」
スチュアート「ありがとう。マダム」
女学生「あ、スチュアート先生。また、勉強見てくださいね!」
スチュアート「テスト問題は教えないよ」
女学生「あはは。バレたかぁ」

  ジェラルドがスチュアート並んで歩く。

ジェラルド「スチュアート。気になることがある」
スチュアート「なんだい?」
ジェラルド「妹の定義とはなんだ? 学術的観点から教えてくれ」
スチュアート「それは当然、可愛いこと。そして、お兄ちゃんの言うことを何でも聞いてくれること。あと、絶対に外せないのは『お兄ちゃん』と呼んでくれることかな。毎朝、起こしに来てくれるのと、時々、夜寂しくて布団に潜り込んでくるという条件も入れる説もあるけど、そこはまだ議論中ってところかな」
ジェラルド「なるほど。じゃあ、キャロンはどうだ? あいつは妹と呼べるのか?」
スチュアート「生物学的に見れば、妹ということになる。けど、論理学、心理学的に見ると程遠いね」
ジェラルド「条件、何一つ満たしてねえからな」
スチュアート「そうだね」
ジェラルド「……俺、最近思うんだ」
スチュアート「?」
ジェラルド「俺たちには……キャロンとは別に、本当の妹がいるんじゃないかって……」
スチュアート「……兄さん」
ジェラルド「……」
スチュアート「僕も、そう思っていた!」
ジェラルド「弟よ!」
スチュアート「妹を探す旅に出よう。兄さん!」
ジェラルド「ああ!」

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