【Webライトノベル】チャーリー・バロットと墓場の女王⑬

【Webライトノベル】チャーリー・バロットと墓場の女王⑬

「チャーリー君、伏せて!」

ニナの声で咄嗟に地面に伏せる瞬間、頭の上を何かがかすめる。

「ぎゃわんっ!」

けたたましい音と同時にゾンビ犬が横に一刀両断され、ぱかりと割れた。

うーん。
実にグロイ。
これはトラウマものだ。

犬が地面に落ちると同時に、髪もひらひらと落ちてくる。

……僕の髪だ。

一瞬でも伏せるのが遅かったら、ゾンビ犬の代わりに僕の頭が真っ二つになっていただろう。

「おい! 危ねえだろ!」

「うん、危なく噛まれるところだったね。大丈夫だった?」

いつの間に、出したのか右手にチェーンソーを持ったニナがにこりと笑う。

「いや、噛まれるより、お前に切られるほうが被害甚大だよ!」

「え? 助けてあげたのに、どうして文句言われるの?」

きょとんと首をかしげて見せるニナ。本当に天然さんだ。

「まあ、いいや。それより、なんでこんなところにゾンビ犬が来るんだ? こいつら、街には入ってこれないんじゃなかったのか?」

「うーんとね、入ってこれないって言うか、見張りがやっつけるから街にいないだけだよ」

「え? そうなのか?」

「朝は私で、夜はキース君が見張りをやってるんだよ。ほら、この場所って街の端っこでしょ? 結構、犬が入ってくるんだあ」

「へー。そうだったのか。スゲェし偉いな、お前」

「えへへ。褒められちゃった」

頬を赤らめてモジモジと体をくねらせ、恥ずかしがっている。可愛らしい仕草だが、右手にチェーンソーを握っているから台無しだ。

「でも、安心したよ」

「え? なにが?」

「墓荒らしが出ても、ニナがいれば平気って話。寝なきゃ、いいってだけの話だろ。正直、墓荒らしが出たとき、どうやって捕まえようか考えてたんだけど、心配なかったな」

「あ……。う、うん……」

一気に表情を曇らせてうつむいてしまう。

「どうしたんだよ? また居眠りしないか、心配なのか? それなら平気だと思うぜ。僕がずっと起きてるんだから。墓荒らしが現れたとき、もし寝てても起こしてやるからさ」

「ね、ねえ、チャーリー君……。あのね……」

意を決したようにニナが顔を上げた。
何を言うのか聞こうとしたとき、目の端に黒い影が通り過ぎたのが見える。

「ニナ、話は後だ。今、あっちの方に誰かがいた。行くぞ」

「あ、う、うん。わ、わかった。今度こそ、頑張る!」

顔を青くして、チェーンソーをぎゅっと握り締めるニナ。
怖いのか、小さくブルブル震えている。

「大丈夫だ。僕がついてる」

そう言って、ニナの両肩をガシッと掴む。
そうすると、青かったニナの顔が一気に真っ赤になる。

「好きだよ! 結婚して!」

「あ、ごめん。ゾンビは無理」

「ひどい!」

いつも通りのやりとりを終わらせて、ニナと一緒に身を屈めて墓石の影を縫うように歩いて黒い影がいたところまで進んだ。

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