【Webライトノベル】チャーリー・バロットと墓場の女王⑮

【Webライトノベル】チャーリー・バロットと墓場の女王⑮

「ドクロ、怖いんだもんっ!」

 二時間後、目を覚ましたニナを問い詰めると、泣きながら言い訳を始めた。

「私、昔からドクロとか、お化けとか苦手で……。見ると気絶しちゃうの」

「ええー。お前自身も、お化けみたいなもんじゃねーか」

「これでも、ゾンビはなんとか慣れたんだけどね……。ドクロはどうしても……」

「じゃあ、過去二回、寝てたっていうのは……」

「うん。気絶してたの……」

 肩を落とし、しょんぼりしながら隣に座っているニナ。

 太陽は結構傾きかけているので、日差しは柔らかくなっている。
 日没まではあと三時間ってところだ。

「そうならそうって言ってくれよ」

「ええ! 言おうとしたよ。言おうとしたときに、あいつが来ちゃったんだもん」

「……ああ」

 そういえばあの時、何か言おうとしてたな。
 まあ、これ以上、このことを言っていても始まらねーし、とにかく僕らはかなり崖っぷちに追い込まれたと言ってもいい。

「なあ、ニナ。もう一度聞くけどあいつの声とか体つきとかで、何か気づいたこととかはないんだよな?」

「……うん。ごめん」

「ってなると聞き込みもあんまり意味ねーよな。どうしようかな」

 腕を組んで目をつぶり、頭をフル回転させる。

 何かいい方法はないのか……。
 おそらく奴は、今日はもう来ないだろう。
 残り二日のうちに来るかも怪しい。
 なんとか、犯人の特定ができればと思ったのだが……。
 
 と、そこでふとあることが気になる。

「そういえば、僕たちみたいなのはどのくらいいるんだ?」

「え? どういうこと?」

「ああ、ほら。朝活動できるくらい、体が揃ってる奴だよ。この街だと、僕とニナ、アメリアくらいしか見たことないからさ。そんなにいな
いのかなって思って」

「うーん。トラボルタ墓地は少ない方だと思うけど……大体、一つの街に五人くらいじゃないかなぁ」

「へえー。ホント、少ないんだな」

「体は高いからねー。なかなか揃えるのは難しいよ」

「ニナも結構、苦労したのか? 体揃えるの」

「ううん。全然。私の場合はチャーリー君に近い感じだから」

「僕と近い?」

「私、心臓麻痺で死んで、こっち来たんだ。だから、心臓以外は最初から揃ってたの」

「心臓麻痺? 冬に川にでも飛び込んだのか?」

「んー……」

 ニアが視線を左右に何度も移し、言葉を濁す。

 どうやら、言いにくいことらしい。

 無理に話さなくていいと言おうとしたが、先に言葉を発したのはニナの方だった。

「まあ、チャーリー君になら話してもいいかな」

 決意したと言っても、話しづらいことには変わりはないのだろう。
 顔を赤らめて、胸の前で両手をモジモジとさせている。

「実はね、私、誘拐されて死んだの」

 ……重い話だった。

 うん。ごめん。
 あまり聞きたくなかった。
 
 だが、僕の思いとは裏腹に一度口にし始めたことで勢いがついたのか、スラスラと話し続ける。

「うちはね、結構お金持ちだったし、私が見た目と違ってトロくさいってバレちゃって、それで狙われたみたい」

 いや、見た目通りだよ。
 見るからにトロそうじゃん。
 そりゃ狙われるよ。
 
 などと突っ込むとまた話が逸れるし、無駄に心に傷を負わせてもしょうがないので黙っておく。
 
 それにしても、自分ではボーッとしてそうな顔をしてるって気付いてないのか……。

「でね、私を誘拐しようとした犯人さんの一人がね……。その……ふ、覆面を……してて……」

「……お、おいおい。まさか」

「うん……。ドクロのマスクだったの」

 耳まで赤くしたニナは自分の顔を両手で覆った。

「そっから記憶がないから……きっと、それで……」

「心臓麻痺を起こしたと」

 顔を覆ったまま頷くニナ。

 ……ある意味、それで死ねるのがすげーよ。
 
 慌てただろうな、犯人も。
 若干、犯人に同情してしまいそうだ。

「……あれ? 笑わないの?」

 ニナが指の隙間から、こちらを伺うように見てくる。

「呆れた」

「もっと酷い!」

「まあ、そんなどうでもいいことよりも、今後の対策を立てようぜ」

「私の死因がどうでもいい!?」

 うずくまって泣き始めるニナを見ているのも鬱陶しいので、腕を組んで目を閉じる。

 話が逸れたが、情報を整理してみよう。

 まず、墓荒らしは朝にやってきたということで、ほとんど体が揃っているはず。
 次に、そこまで体が揃っている奴は一つの街に五人前後。
 最後に、この付近の街は三つ程度。
 
 ということは、この街の人間を除けば、容疑者は十人くらいということか。
 
 ……これで犯人がアメリアだったら、さすがに意外過ぎるし、意味がわからん。
 僕を追い詰めるために、墓荒らしを装うくらいはしそうだが、実際に墓石の名前を削りまでしていることから、それはありえない。

 十人か。
 それくらいなら。

「よし、行くぞ、ニナ」

「え? どこに?」

「犯人を探しにだ」

 落ち込んでいるニナの手を引っ張り、僕は犯人探しのために隣街へと繰り出したのだった。

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