【Webライトノベル】チャーリー・バロットと墓場の女王⑯

【Webライトノベル】チャーリー・バロットと墓場の女王⑯

結論から言うと、僕の作戦というか犯人探しは失敗に終わった。

一応は容疑者というか、それぞれの街にいる体が結構揃っている奴に会ってきたのだが、アリバイがあったり体格が違ったりして、調査は難航した。
それっぽい奴もいたけど、「お前が犯人だな!」と言うわけにもいかないし、結局は現行犯で捕まえないと意味がないことを最後の一人に会った時に気づくという体たらく。

くそ、時間を無駄にしたぜ。

というわけで、あっという間に夜が過ぎ、再び朝が訪れている。
ニナは横でスヤスヤと眠っているのだが……。

よく、この状況で寝れるもんだ。

墓地の正面にはちょっとした小屋があり、何故か入口が二階にあるというなんともアメリアが好きそうな構造をしている。
バカと偉い奴は高いところが好きというのは本当らしい。
別に、アメリアが使うわけじゃないのに……。

言われてみれば、この街って無駄に高い建物が多い気がする。

「う……ん」

ニナが階段から落ちないように、器用に寝返りを打つ。

……こいつ、手馴れてやがる。
いつも、サボって寝てやがるな。

なんとなく、イラっとしたのでニナにデコピンしてみるが、眉一つ動かさない。

首を伸ばして、階段の横にある壁から顔を少しだけ出して墓地を眺めてみる。
取りあえずは墓の方から僕たちの姿が見えないように隠れてはみたものの、一向に墓荒らしが現れる気配はない。
太陽は既に真上に登ろうとしている。あれが沈めば、また一日が過ぎてしまう。

「暇そうだな」

「うおっ!」

不意に後ろから声をかけられ、慌てて振り向く。

メリッ。

顔面に何か物体を押し付けられた。

「たわけ、見えるだろうが」

どうやら、僕の顔に押し付けられたのはアメリアの靴底だったらしい。
つまり、顔面を踏まれたのである。

なぜ、いきなりこんな仕打ちをされなければならない?
見えるって、何がだ?

今のところアメリアの靴底しか見えない。
さらに襟を掴まれ、無理矢理立ち上がらされる。

アメリは口をへの字に曲げ、僕をギロリと睨んできた。

……ああ、なるほど。

今日のアメリアの格好は、相変わらずお高そうなものだが珍しく短いプリーツスカートを履いている。
まあ、確かに僕が座った状態で見上げればスカートの中が見えるかもしれないけど、踏むことはないだろうが。

「珍しい格好だな」

「ん? 何がだ?」

不機嫌そうだった顔が、元のしかめっ面に戻る。

……あれ? あんまり変わらねーな。

「ほら、お前っていつも貴族っていうか豪華な服着てるよな。なんか、今日は普通っていうかおしゃれな女の子って感じだぜ。可愛いぞ」

「なっ! ば、馬鹿者!」

ガンと脛を蹴られる。思わずしゃがみこんで脛を抑えたい衝動に駆られたが、なんとか我慢した。
どうせ、しゃがんだら顔面を踏まれるに決まってる。

「まったく、無礼な奴め。ご主人様に向かって可愛いなど……。そ、それにいつもは公務中だからあんな堅苦しい格好をしておるのだ。別に趣味なわけではない」

鼻息を荒くして、プクゥと頬を膨らませる姿はいつもとは違い、年相応の十七歳に見える。

いつも、こんな感じなら可愛いのにな。もったいない。

「で? どうなのだ? 墓荒らしは捕まえられそうか?」

いつも通りの小憎たらしい笑みを浮かべて、アメリアが聞いてきた。

「余計なお世話だ」

「昨日は取り逃がしたらしいな。しかも、警備してると相手にバレたのだろう?」

「う、うるせーな」

「普通の神経なら、少なくても一週間以上はやってこないと思うがな」

「だから、うるせーって」

何が面白いのか、一瞬だけ笑みを浮かべて、すぐに真顔で僕の目を真っ直ぐ見てくる。

「今、許しを請うなら、考えてやらんこともないぞ」

「……それはニナも含めての話か?」

階段の上で寝ているニナをチラリと見下ろす。幸せそうに寝ている。
アメリアも同じく寝ているニナをチラリと見て、わずかに眉をひそませた。

「……いや、それはダメだ。責任を負う者は必要だからな。下の者に示しがつかん」

「なら、お断りだ」

「なぜだ? ニナとはそれほど付き合いも長くないだろう。命を賭けるほどの仲とも思えんが?」

「仲が良いとか、悪いとか関係ねーよ。女の子が目の前で困ってる。なら、男として助けるのは当然だろ?」

「本当に変わった男だな。だが、三日間で捕まえられなかったら、貴様のその体、貰い受けるぞ」

「うっ……。な、なあ。もう少し刑を穏便にできたり……」

「するわけなかろう」

呆れたようにため息をつきつつ前髪をかきあげるアメリア。

「貴様は格好いいんだか、悪いんだかよくわからん奴だ」

……あれ? 今ってちょっと褒められたりしたのかな?

「策は何かあるのか?」

「え? いや……。その……」

「ふん。やはり、ただの阿呆か」

うわっ! 馬鹿にされた。

「このまま待っていても駄目、かといって探し出すのも難しい。そうなればおびき出すしかないだろう」

「……おびき出すって言っても、どうやってだ?」

「あたしはそこまで親切な人間ではない。後は自分で考えるんだな」

「ケチ」

「……猿並みの知能しかない上に向上心がないのか。本当に使えない奴だ。……自分が相手の立場だったらどうするか、その視点に立てば自ずと見えてくるはずだ」

そう言い残し、アメリアは再び小屋に入って行った。

……あ、この小屋って屋敷に繋がってるんだな。
っていうか、あいつ、何しにきたんだ?
わざわざ朝に起きてるなんて。

……おっと、今はそんなこと考えてる場合じゃなかったな。

えっと……相手の立場になって考える、か。

僕は頭をひねってみる。
すると……。

「あっ!」

すぐにピンとアイディアが閃いたのだった。

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