【Webライトノベル】チャーリー・バロットと墓場の女王⑳

【Webライトノベル】チャーリー・バロットと墓場の女王⑳

第2章 アメリアの秘密

それは満月の夜のことだった。

コウモリがキィーーー!と甲高い鳴き声で目が覚める。

……もう、夜か。
ダルイ。
二度寝したい。

ベッドの上でアクビをしながら伸びをするが、寝起きで頭がボーッとしている。

「チャーリー。早よ、来い。防腐剤配りに行くで」

ボブがガチャリと僕の部屋のドアを開けて覗き込んできた。

「先に行っててくれ。すぐ行くから」

「なんやねん。まだ着替えてないんかい。いっそ、ゾンビになれば着替えとかいらんくなるで」

「遠慮しておくよ」

「あんなぁ、それでなくても最近新人が激減してるんや。ぼやぼやしとったら、他の街に取られんで」

「大丈夫さ。この街にはボブっていう凄腕の勧誘者がいるんだ。きっと、なんとかしてくれる」

「ん? ま、まあな。オレがいりゃ、なんとかなるよな」

ボブは照れたように頬を掻く。
そのせいで、ボタリと頬の腐肉が落ちる。

これがなけりゃ、いい奴なんだけどな。

「じゃあ、駅近のいつものとこで待ってるで!」

上機嫌でボブは行ってしまう。

ボブがいなくなったのを機会に二度寝しようとか考えたが、そのあとアメリアに拷問されるくらいなら素直に起きた方がマシだと思い直し、のそのそとベッドから出る。

えーと、服、服っと……。
あ、やべえ、洗濯してねえ。

一瞬、ボブの言うとおりゾンビになれば、服の洗濯とかいらなくなるならいいかもと思ったが、ボブの腐った体を思い出すことで、その考えを打ち消すことができる。

仕方なく、昨日着た服を着ることにして、パジャマを脱ぐ。

「チャーリー君、大変!」

今度はニナがバンと僕の部屋のドアを勢い良く開けた。

「きゃー! チャーリー君、早夜から大胆! 私、まだ心の準備できてないよ」

「すまん、ゾンビに興味ない」

「ひどいっ!」

「で? なにが大変なんだ?」

「あ、そうそう。変わったゾンビ犬が出たの」

「変わったゾンビ犬?」

「うん。ちょっと来てくれないかな?」

やれやれ。
とっくにニナの勤務時間は終わっているのに、真面目な奴だ。

僕は若干急いで服を来て、ニアが言うゾンビ犬のところへ向かった。

……あ、防腐剤配り、忘れてた。
すまん、ボブ。頑張って僕の分まで配ってくれ。

「……ただのゾンビじゃねーか」

「え? そうなの?」

墓地の入り口辺りにぐったりと白目を剥いて倒れていたのは、真っ二つに切り裂かれた男のゾンビだった。
ゾンビとは言っても、両手両足、顔の一部分は生身だ。
なんとか、朝に少しくらいなら行動できるくらいのレベルである。
あと、真っ二つになっているのは、ニナがチェーンソーで切ったからだろう。

「お前はどう見たら、これが犬に見えるんだ?」

「ええー。だって、街に入ってくるのって住民以外は犬だけなんだもん」

「だからって、問答無用で切ることねーだろ」

「だって、怖かったから……」

「こいつ、この街の住人じゃないってことは確かなんだな?」

「うん。一応、私、街の人の顔全部覚えてるから」

「全部っ! すげーな」

「えへへ。すごいでしょ」

「取り敢えず、中に運んじまおうぜ。こんなところに置いておいて、犬に食われても後味わりーし」

「もう私の話し終わりっ!? もっと、褒めてよー!」

「別に街の住人じゃなくても、中に入れてもいいんだろ?」

口を尖らせプイっと横を向いて、ニナは不安そうに答える。

「うん。そんな規則はないよ。もし、一週間以上滞在するなら、観光の申請書が必要だけどね」

「意外と面倒くさいんだな。ニナはそっちの左半分持ってくれ」

「ええっ! 真っ二つのゾンビって、なんか怖い」

「お前が切ったんだろうが!」

……ホントにニナの相手をしていると疲れる。

<初めから読む>

<前のページへ> <次のページへ>