【Webライトノベル】チャーリー・バロットと墓場の女王㉒

【Webライトノベル】チャーリー・バロットと墓場の女王㉒

「別に案内など必要ありません」


「まあまあ、そう言うなよ。せっかくなんだから、楽しめばいいだろ」

 夜の街をランシエと共に、並んで歩く。
 既に深夜の一時を過ぎているので、街は大賑わいしている。

 ちょうど夜食の時間で、防腐剤店や死肉店の前はどこもゾンビの行列ができていた。
 ゾンビの列を縫うようにして進んでいく。


「言っておきますが、ぼくは本当に観光したいわけではないんですけど」

「知ってるって。あの貴族を見張るためだろ? 大丈夫だって。勝手に逃がしたりはしないし、逃げられたりもさせない。もし、この街からいなくなるようだったら、僕が責任を取るさ」

「あなたに責任を取るほどの甲斐性はなさそうですが」

「う……」

 痛いところを付いてくる。

「あと、ぼくを出し抜いてあの貴族から情報を引き出そうとしても無駄ですよ。部下がもう、この街についた頃です。二十四時間、ずっと監視させてもらいますから」

「うぅ……」

 さらに痛いところサクっと刺してきた。
 だが、まだこっちの真の目的までは感づかれてはいないはずだ。

「なあ、そういえば、お前ってガンツって奴の側近って言ってたよな?」

「それがなにか?」

「えっと……その……。ハンコ持ってるのか?」

「ハンコ? 何のです?」

「あ、いや、ほら。えーと、偉い人が持ってるやつ」

「……刻印のことですか?」

「そ、そうそう。刻印。持ってるのか?」

 僕はなるべく怪しまれないように、自然を装ってランシエに問いかける。
 しかし、ランシエは眉根を寄せて身構え、警戒心バリバリでこう言った。

「渡しませんよ」

 な、なぜ狙ってるってバレた!

 クソぅ!

 僕の完璧の演技を看破したと言うのか。

 ……やるな、ランシエ・クイーン。

 ヤバイな。

 これでアメリアの命令の遂行が難しくなった。

 まあ、あんまり乗り気じゃなかったからいいけど。

 失敗したら土下座して許してもらおう。
 それにしても……アメリアのやつ、なんでこいつの刻印なんか欲しがるんだろうか?

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