【Webライトノベル】チャーリー・バロットと墓場の女王㉘

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 お祭り。

 最初に想像したのは、それだった。

 地下に隠れた、活気に溢れた街。

 中央に大きな広場があり、音楽隊が楽しげに演奏する。

 高そうな貴族のような服を着たゾンビたちが、演奏に合わせて踊っている。

 広場を取り囲むように屋台が立ち並び、良い匂いを放っていた。

 よく見ると、広場にいる奴らや屋台から出てくる奴らは、食べ物の味を楽しむ程度の肉体のパーツはあるような感じだ。

 呆然と辺りを見回している僕の服の袖を、クイクイとランシエに引かれる。

「ボーッとしてないで、行きますよ」

 ランシエを見失わないように、人混みの中を必死にかき分けて進む。

 それにしても、なんでわざわざこんな地下に街を作ったんだ?

 まるで、コソコソと隠れるように……。

「おい! 早く開けろ!」

 いきなり、横から怒号のような声が響いた。

 声がした方向を見ると、屋敷の玄関の前に迷彩服を着た軍隊のようなゾンビが二体立っている。

「上納金の滞納が三ヶ月以上になった。貴様は地上行きに決まったのだ!」

 軍人ゾンビの一人がドアをガンガン叩きながら叫ぶ。

「素直に出てきた方が身の為だぞ! ドアを壊して入るからな!」

 もう一体の方の軍人ゾンビが叫ぶ。と、同時にバンとドアが開く。

 出てきたのは貴族の服に身を包んだ細いゾンビだった。手には短剣を握っている。

「い、嫌だ! 地上には行きたくねえ! ここで暮らせねえなら、死んだ方がマシだ!」

 短剣をブンブンと振り回しながら、貴族ゾンビが叫んだ。

 だが、短剣はまったく軍人ゾンビには当たらない。

 逆に武器を奪い取られ、組み敷かれる。

「安心しろ。ここでの記憶は消してやる。これからは地上で存分に働くのだな」

「嫌だーーー!」

 まるで断末魔のように大声を放つ貴族ゾンビ。

 おいおい。なんだかよくわからんが、無理矢理っていうのがムカつく。

 自然と軍人ゾンビたちがいる方向に歩き出す。が、すぐにランシエが僕の腕を掴んだ。

「離せ」

「何をする気ですか?」

「黙ってられんだろ」

「あれは仕方ないんです」

「仕方ない?」

「税金を納めないゾンビはここに住めないんです」

「なんだ、そりゃ? 金を払わないと街に住めないってのか?」

「それがここの決まりです」

「お前はどうなんだ?」

「え?」

「あれを見て、何とも思わないのか?」

 僕の問いに、ランシエは小さく唇を噛み、拳をグッと握る。

「……何も知らないくせに」

 そう呟くと、僕の腕から手を離して背を向けて歩き出す。

「好きにしてください。ただし、どうなってもぼくは知りませんから」

 ズキンと胸が痛んだ。あいつも……苦しんでるのか?

 一気に怒りが萎えてしまった。

 もう一度振り返って騒動があった方を見る。

 既に軍人ゾンビも貴族ゾンビもいなくなっていた。

 街は再び、陽気に活気に満ち、ゾンビたちは踊り続ける。

 僕は大きくため息をついた後、ランシエの背中を追ったのだった。

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