【Webライトノベル】チャーリー・バロットと墓場の女王㉙

【Webライトノベル】チャーリー・バロットと墓場の女王㉙

「まあぁ! 随分と可愛いお供を連れてきたわねぇ」

「申し訳ございません、ガンツ様。来るなとは言ったのですが……」

「いいのよ、いいのよ。可愛い子、大歓迎!」

 な、な、なんだ、こいつは? ガンツ?

 こいつがオーイット墓地の王なのか?

 ガンツって名前からして、てっきりゴツイ奴だと思っていたのに……。

 あ、いや、ゴツイにはゴツイけど……。

 ガンツと呼ばれた巨漢の男は、鋼の筋肉に覆われている。

 スキンヘッドに鋭い目。ニヤっと笑ったときに垣間見える犬歯は長く鋭い。

 一見すると山賊、盗賊、海賊、凶悪犯。

 とにかく、まっとうな人間に見えない。

 王というイメージから対極にいるような……戦では先頭切って切り込んでいきそうな、無骨な男だった。

 だけど……なんで、そんな格好をしてるんだ?

 ガンツはフリフリの結婚式に着るような白いドレスを身にまとっている。

 分厚い唇には毒々しいほど赤い口紅。

 長い爪には宝石がついているかのようなキラキラした物体とこれまた赤いマニュキュアがほどこされている。

 全てのぶっとい指には所狭しとダイヤの指輪がはめられているが全然似合っていない。

 とにかく、アメリアですら裸足で逃げ出しそうな豪華な装飾がそこにはあった。

「チャーリーちゃんって言うの? 可愛いわね。ガンツよ。よ、ろ、し、く、ね」

 玉座から降り立ったガンツは僕の前に立ち、僕の手をとって頬ずりする。

 全身が一気に鳥肌立つ。

「あ、ああ……。よ、よろしく……」

「ガンツ様、この者がしばらく街を見て回りたいそうです。観光の許可をお願いします」

 ランシエがかしこまりつつ、ガンツに言う。

「いいわよぉー。何日でもいて。なんなら、こっちに引っ越して来ちゃいなさいよ。今なら、私のペットにしてあげるわよぉ」

「え、遠慮しとくよ……」

「なによぉ。つれないわねぇ」

 身をクネクネさせながら、口を尖らせる。

 ま、まさかこの世でゾンビよりもおぞましい者が存在するとは……。

 あ、いや、こいつもゾンビなんだろうけども。

 ガンツが胸元に手を突っ込んで、一枚の羊皮紙を取り出す。

「はい。これ、観光の許可書よ。これがあれば、街の食べ物とかホテル代はタダになるわ。な、ん、な、ら、今夜は私と寝る?」

「断固拒否で!」

「あらん。ウブねぇ。そういうところも、気に入ったわ」

 や、ヤバイ! は、吐きそうだ。

 アメリア、初めてお前と意見が合ったぞ。こいつとは仲良くできねえ。

「どこに入ってもいいけど、地上には出ない方がいいわよ。私、責任取れないから」

「地上? そうだ、地上は何であんなに荒廃してるんだ? それに、地上送りってどういう……」

「チャーリーちゃん。一つだけ教えてあげる。一流の身分というのは権力だけじゃなくって、住む場所、食べるもの、着るもの全てが一流じゃないといけないの。逆にね、奴隷には奴隷にふさわしい住む場所があるのよ」

 にこやかな笑顔だったが、その瞳は心底冷たい目をしていた。

 亡命してきた貴族ゾンビが「ガンツ様にはもうついていけない」と言ったのもなんとなく分かる。

 確かに、この街には何か大きな秘密がありそうだ。

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