【Webライトノベル】チャーリー・バロットと墓場の女王㉛

【Webライトノベル】チャーリー・バロットと墓場の女王㉛

「奴隷?」

「はい。僕は騙されたんです。あのシルクハットの人に」

 木陰で地面に並んで座ると、ゾンビはポロポロと泣きながら語り始めた。

「朝も夜もなく、僕ら奴隷は働かせされているんです。そうして、得たお金で地下の貴族たちは贅沢三昧をしているって聞きました」

 脳裏に昨日の賑わっている地下の街の風景が蘇る。

「七日間の間なら他の街に移れるはずなのに、ずっと監禁されてたんです」

「……なあ、どうして、お前ら朝なのに活動できるんだ?」

 ゾンビは本人の意思とは関係なく、朝は眠りについて活動できないはずだ。

 ゾンビはボロボロの服を捲って、首にかけられたペンダントのような物を見せてきた。

 ペンダントの部分には透明の石のような物が埋め込まれている。

「これのおかげだと思います。特殊な魔力が込められていて、朝でも長時間活動できるんです。直接太陽の光を浴びれば、十分ももたないんですけど」

「へー。便利なものがあるんだな」

「これのせいで、僕たちには朝がないんです! もうここは地獄です。いっそ死んでしまいたい」

「もう、死んでんだけどな。……なあ、そんなに嫌なら仲間と一緒に反乱でも起こせばいいんじゃねーか? 朝に攻め込めば簡単に全滅させられるぞ」

「無理ですよ。地下の入口がわからないですから」

 ……なるほど。

 ランシエが昨日言った「対策を練らないといけない」というのは、地上の奴らに対してだったのか。

 反乱を起こさせないために、入口をわからなくさせるという戦法なんだ。

 じゃあ、僕がその入口を教えれば……。

 などと考えているとゾンビが次の一言を呟く。

「それに、人数が足りません。数で圧倒的に不利です」

「は? そりゃ、おかしいだろ。こういうのって、下の階級の方が多いに決まってるはずだ。そうじゃないと上級層の生活を維持できない」

「一ヶ月くらいまでは、それも可能だったんですけど……随分と仲間が減る事件があって……」

「あ、墓荒らしか!」

 そういえば、周辺の街もやられたって噂だったな。うちも結構やられたんだった。

 ゾンビはコクンと頷き、ぐいっと涙を拭いた。

「新しく入った人たちだけがドンドン減っていって……。恐怖でした。僕もいつ、消されるんだろうって。僕以外の新人が全員消えてしまったときは、もう終わりだと思いました」

「え? 新人だけ?」

「はい。ここ四ヶ月ほど前に入ってきた新人だけが狙われたようです」

 あれ? うちもそうだったのかな?

 そういうところ、ニナならあんまり気づかなさそうだ。

 まあ、人のこと言えねーけど。

「そうなのか……。でも、なんでお前は無事だったんだ? お前、こっちに来たの、一ヶ月くらい前だろ」

「調べてみたんですけど、どうやら、僕と一字違いの名前の人がいて間違えられたんだと思います」

 間違われて消されるなんて、不憫すぎる。それにしても名前を知ってて、わざわざ探して墓を荒らしていたってことか。一体なんのためだ?

「その新人の一覧って誰でも手に入れられるのか?」

「まさか。見られるのは王ぐらいですよ」

「王が犯人ってことはないよな?」

「有り得ませんよ。なんの得もないどころか、新人が減って一気に働き手がいなくなったんですよ。そのせいで、労働時間も伸びましたし、税金を払えない貴族が奴隷に落とされているくらいですから」

 昨日の貴族ゾンビが暴れていた様子がフラッシュバックのように再生される。

「最近じゃ、勧誘係も無理矢理拉致するように新人を連れてくるようですから、かなりひっ迫してるんだと思います」

「無理矢理拉致か……」

 そういえば、ボブが最近新人の数が激減したって言ってたな。オーイットが究極の青田刈りをしていたってことだ。許せん!

「お願いします! 亡命させてください。この不当な労働を国王に知らせれば、なんとかしてくれるはずです」

「国王って……クラムだよな? ……あんまり期待できないと思うぞ」

「とにかく、ここから出たいんですっ!」

 しがみついてくるゾンビ。かなり必死だ。その必死さで今までどれくらい過酷な労働を強いられていたのかが垣間見える。

「偵察ですか?」

「うわわっ!」

 いきなり後ろから声がして、心臓が飛び出るほどビックリした。  振り向くとそこにはランシエが腕を組んで仁王立ちをしていたのだった。

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