【Webライトノベル】チャーリー・バロットと墓場の女王㉝

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あっという間に三日が過ぎ、オーイットから出国する日がやってきた。

 僕はあれからどうランシエを説得していいか分からず、結局、あの日から顔を合わせなかった。

「もう帰っちゃうの? 寂しいわぁ……」

 ガンツが僕の手をぎゅっと掴んで胸元に持っていく。固い筋肉の感触。

 実に不愉快な感触だ。

「それではガンツ様、行ってきます」

「はいはい」

 ランシエには興味なさそうにシッシと追い出すように手を振る。

 ガンツの方はあまりランシエをよく思っていないような節があった。

「ねえ、このままオーイットにいなさいよぉ」

 体をクネらせ、一向に僕の手を離してくれない。なんだ、この拷問は?

「もう二度と来ないから安心してくれ」

 強引に手を引き抜くと、ガンツがクスクスと笑う。

「意地張っちゃって。まあ、いいわ。すぐに私のモノになるんだから」

 このおっさんは完璧に脳みそが腐っているようにしか思えない。僕がこいつの下につくなど、死んでも有り得ない。……この死後の世界でも有り得ない!

「あ、ランシエ、待ちなさい。肝心の物を忘れてるわ」

 部屋から出ていこうとするランシエを引き止める。

 懐から銀色の丸いメダル……恐らく刻印だろう物をランシエに渡していた。

 あれ? デカイな。ランシエの刻印ってあんな大きさだっけ?

「ガンツ様、こやつの記憶を消さねば……」 

 ガンツの横にかしずいていた護衛兵ゾンビが僕の方を見て言う。

 記憶を消す? そんなことができるのか?

「あら、危ないわね。あーあ、残念だわぁ。私とのひと時も忘れさせちゃうなんて」

 ランシエから再度、刻印を奪い取り、それを掲げるガンツ。

「えっと、一人だけの記憶を消すのってどうだったかしら? あー、もう面倒ねぇ。この部屋にいる全員の記憶を五日前まで消しちゃいましょうか」

「え? ガンツ様、それは……」

 止めようとする護衛兵ゾンビの話を聞くことなく、ガンツは高らかに言い放つ。

「命令です! 今日から五日前までの記憶を消しなさい!」

 あまりにも、無茶苦茶な命令だった。アメリアだって、そんな馬鹿な命令はしない。

 ……だが、ガンツが持っている刻印が光ると――。

「うう……」

「ああ……」

 部屋にいる、僕とガンツ以外のゾンビがパタリと倒れる。

 マジか! なんだ、その胡散臭い感じ! 劇か、何かか?

 とにかく、こういうときは周りに合わせるのが一番。

「うおっ……」

 僕もフラフラと体を揺らがせ、倒れてみせる。

「あれ? 我々は一体……」

 立ち上がったゾンビたちは不思議そうに辺りを見渡している。

 君たち、大変だね。いつも、こんな茶番に付き合ってあげてるんだ? ホント、偉い奴って脳みそイってるのが多いよな。

 ゾンビたちが頑張ってるのに台無しにしても忍びないから、僕も記憶が消えたフリをした。

「それじゃあ、またね」

 部屋を出る際にガンツから投げキッスをされた。

 うぇ……。気持ち悪い。こいつとは二度と会いませんように。

 そう心の中で、誰かにお願いをした。

 だが、皮肉にもガンツの言うとおり、すぐに顔を合わせることになったのだ。

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