【Webライトノベル】チャーリー・バロットと墓場の女王㊲

【Webライトノベル】チャーリー・バロットと墓場の女王㊲

 日が沈むか沈まないか、ギリギリの時間。

 僕が生きていた頃は夕方と言われ、一日の終わりを意味する時間だった。

 だけど、今は活動開始を告げる、憂鬱な時間になってしまっている。

 意識が虚ろい、微睡みの瞬間は結構至福の時間だ。一秒でも長く味わいたい。

 布団に丸まるようにベッドの上で寝返りを打つ。

 ――バン!

 勢い良く扉が開かれる音が、耳の奥に響いて意識を少しだけ覚醒へと近づける。

「なんやねん、チャーリー。まだ寝とったんか!」

 顔を見なくても分かる。ボブの声だ。

 この認識が出来ている時点でほとんど起きてしまったと言っても過言じゃない。

 だが、僕には最後の技が残されている。

 二度寝だ。

 目を開けることなく、意識を闇の中へと滑り込ませ……。

「早よ、起きや。仕事始まんで!」

 バッと布団を剥ぎ取られる。

 イラっとして目を開けると目の前にゾンビの顔が接近していた。

「うおっ!」

「お、やっと起きたか」

「……お前の顔はいい気付けになるよ」

「そ、そうか? なんや、照れるなぁ」

 ボリボリと後頭部を掻くボブ。同時に、ボタボタと床に後頭部の肉片が落ちる。

 褒めてないし、頭を掻くのを止めて欲しい。掃除するのが大変なんだぞ、血とか肉片ってなかなか落ないんだぞ。

「……で? こんな早夜からなんの用だ?」

「何の用って、仕事に決まってるやん。今日から仕事開始やろ?」

 オーイット事件での功績が認められ、僕には二週間の休みが与えられていたのだ。

 アメリアもなんだかんだ言って、そういうアメとムチが上手い。

 それで、僕はこの二週間遊び惚けていたのだ。昨日も朝更かしして、寝たのが三時間前くらいという、何とも乱れた生活になっている。

 僕は仕方なく上半身を起こし、ニヤリと勝ち誇ったようにボブに告げる。

「ふっふっふ。ボブ。悪いが、僕はもう副官代理補佐なんだ。防腐剤配りなんて、下っ端の仕事はしなくてもいいのだよ。これからは仕事が減るはずさ」

「あ、これ、アメリア様から。チャーリーに渡せって」

 そう言ってボブが一枚の羊皮紙を出してきた。

「アメリアから?」

 受け取って、中身を読んでみる。そこにはアメリアの字でこう書いてあった。

 『貴様の副官代理補佐としての主な仕事』

 ・ニナの墓守の補佐

 ・ゾンビどもの仕事の監視

 ・買い出し

 ・あたしのストレス解消

 ・防腐剤配りおよび勧誘(ノルマ一日五百体)

「増えてんじゃん!」

 バリっと紙を真っ二つに破る。

 あいつは僕を殺す気か?

 なんだよ、この仕事の量は!

 それに『あたしのストレス解消』ってなんだよ。何をさせる気なんだ! 

まったく……アメとムチの、ムチの部分が激しすぎる。これじゃ死ぬぞ!

「という訳やから、早よ、仕事行くで。ほら、着替えや」

「……はいはい」

 ため息をついて、ベッドから降り着替え始める。

 防腐剤配りが終わったら抗議に行こう。

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