【Webライトノベル】チャーリー・バロットと墓場の女王㊴

【Webライトノベル】チャーリー・バロットと墓場の女王㊴

「チャーリー。グッドアフタヌーン」

 一旦部屋に戻ろうと歩いていると、ふと後ろから声をかけられる。

 振り返ってみると、そこには手を後ろで組んだランシエが立っていた。

「完全に深夜になってるけどな。で? どうしたんだ? 僕に用事か?」

「会いにきました。今、暇ですか?」

「来てくれたのは嬉しいが、さっき、アメリアから難題を押し付けられてさ。部屋で作戦を練ろうかと思ってるんだ」

「良かった。それでは、遊びに行きましょう」

「聞けよ、人の話!」

「聞いています。チャーリーはぼくが会いに来て嬉しいって言いました」

「……都合の良いところだけ聞くなよ」

「大丈夫です。その難題、ぼくも一緒に悩んであげますから。まずは息抜きに街を散歩しましょう」

「まず息抜きって時点で、おかしいだろ」

「ぼくがエスコートしてあげます」

 ちょっとだけ恥ずかしそうに、はにかむランシエ。

 なんで、この世界の奴らは人の話を聞かない上に強引なのばっかなんだ?

 僕は大きくため息をついて、自分の部屋に戻るのを諦めたのだった。

「段差、気をつけてくださいね」

 先に段差を登ったランシエがすっと手を差し伸べてくる。

 普通、逆だろと思ったが言ったとろこで無駄に終わるので、素直にランシエの手を取って段差を跳ねるように登る。

 街外れの路地裏。

 辺りにはほとんどゾンビもいなく、遠くからゾンビ犬の遠吠えが聞こえるほど閑散としている。

 街灯もほとんどないが月が馬鹿みたいに明るいので、ランプまでは必要ない。

「クラム様の弱みを握って来いだなんて、凄いこと言いますね。さすがアメリア様です」

「貪欲で強欲なだけだ。さらにそれを人にやらせようってところが、もう救いようがない」

 アメリアから命令されたのは、単純明快だった。

「クラムの弱みを何か見つけてこい!」

 その一言を誇らしげに言う姿は暴君の化身そのものだ。

「でも、確かに変な噂が立っていますよ」

 横を歩くランシエが僕をつぶらな瞳で見上げながら言う。

「噂? クラムのか?」

「はい。最近は体を壊してばかりで、公務もままならないと。仕事は全部部下に押し付けてるそうです」

「まるで、アメリアみたいだな」

「アメリア様は人一倍仕事してますよ。……って、そんなことチャーリーが一番わかってますよね」

 ふふふっと笑わった顔が可愛かったので、反論はしないでおいた。まあ、確かにあいつは影で、人が見てないところですげー仕事してるからな。ホント、意地っ張りな奴だ。

「さらに、もう一つおかしな噂もありまして……。あ、こっちです」

 路地裏からさらに奥へと入っていくランシエ。

 そこは路地裏というか、獣道に近い雑草が生い茂った細い通路だった。

 既に周りに建物はなく、どちらかというと林の中という感じだ。

「おかしな噂って?」

「一ヶ月くらい前に出没した墓荒らし。あれって、クラム様の部下が犯人だという噂です」

 ランシエの言葉で、鮮明に墓荒らしのことが脳裏に蘇った。

 そう。確かにアメリアは墓荒らしの顔を見て、クラムの部下だと言っていた。

「なあ、仮に墓荒らしがクラムの部下だったとして、墓を荒らして何かクラムに得があったりするのか?」

「まさか。ありませんよ。墓を荒らせば街の住人が減ります。住人が減れば街の税収が減り、街の税収が減れば、国に……クラム様に入るお金も減るだけですから」

「うーん。そうだよなぁ……」

 あの後もアメリアは首をかしげていた。

 なぜ、クラムの部下が墓荒らしなんてやっていたのかを。

「着きましたよ」

 そう言われて顔を上げると、いつの間にか小高い丘に立っていた。

「あそこがクラム様の城です」

 指さした方向には、巨大な要塞のような城が佇んでいる。

 あそこまでデカイなら、逆に侵入しやすそうだ。

 距離的には街から出て、二時間くらい歩く程度か。

「よし、じゃあ、今日のところは敵情視察ってことで、帰るか」

「そ、それじゃ、この後……で、デート……しませんか?」

 湯気が出そうなほど顔を赤くして、俯きながらポツリとランシエが言った。

 こういうギャップは正直言ってズルいと思う。

 依然、僕はランシエのことを男だと思い込んでた時期があったこともあるくらい、いつもは男っぽいのに不意に女らしい可愛い部分を見せてくる。

 頬のところが熱くなっていることを悟られないように、ランシエから顔を逸らして頷いてみせた。

 クラムの城の場所を教えてくれたお礼ということにして、僕はランシエと一緒に街を回ることにした。

 その裏では、すでに事件は勃発していて取り返しのつかないところまで深く入り込んでいたことすら、気づくことなく、僕は気楽に遊んでいたのだ。

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