【Webライトノベル】チャーリー・バロットと墓場の女王㊸

【Webライトノベル】チャーリー・バロットと墓場の女王㊸

 城の入り口付近まで行くと、ちょうどアメリアと遭遇する。

 手を縄で縛られ、二人の兵士にはさまれるようにして歩いていた。

 真っ直ぐ前を見て、胸を張っているアメリア。

 ……お前、どうしてそんな顔ができるんだよ。怖くないのか?

 取り敢えずアメリアと兵士二人が僕の前を横切り通り過ぎるのを待つ。

 ――そして。

「ぐおっ!」

「ぐあっ!」

 後ろから剣の鞘で殴り、兵士を気絶させる。

「アメリア、無事か!」

 兜を脱いでアメリアに駆け寄ると、アメリアは「くっくっく」肩を小さく震わせて笑った。

「似合わんな。そのヨロイ姿。まだ、ガンツのフリフリの服の方が見れる」

 自分ではちょっと格好いいと思っていたから、その言葉には随分と凹まされたが今はそんなことを言ってる場合じゃない。

「来い! 逃げるぞ!」

 アメリアの腕を掴むがすぐに振りほどかれる。

「助けなどいらん。というより、邪魔をするな。あたしはこれからクラムのところに行かねばならん」

「……住人の無罪を条件にか? でも、お前は騙されてる。クラムは僕たち住人も殺すつもりだ」

「……やはりか」

「気づいてたのか?」

「まあ、そうだろうなとは思っていた。ただ、貴様がここにいるのを見て確信したのだがな」

「だったら逃げるぞ!」

「何度も言わせるな。あたしは邪魔するなと言ったのだ」

「お前……死にに行くつもりか?」

「阿呆。クラムと交渉に行くのだ。これでも勝算はある。街の奴らくらいは余裕で解放させるさ」

「嘘だ。そんなことできるわけない」

「ふん。貴様のスカスカで腐りかけの脳みそでは無理だが、あたしならできる」

「……アメリア。ここには僕たち二人しかない」

「だから何だ?」

「弱音、吐いてもいいんだぞ」

「黙れ! 貴様などに吐くものなどないわっ!」

「言ったよな? 僕はお前の下僕だって。命令してくれれば何だってやる。何をしたらいい?」

「いらん! これはあたしだけの問題だ!」

「アメリア!」

 もう一度叫ぶように言って、アメリアの両肩をガッシリと掴み、真っ直ぐ目を見る。

「僕はお前の下僕だ。絶対にお前を見捨てたりしない」

「……」

「何があったんだ?」

「……っ!」

 くしゃりとアメリアの顔が崩れる。

 うっすらと目に涙を浮かべたが、下唇をグッと噛むことでなんとか堪えていた。

「……住人を……全て殺すと言われたんだぞ……」

 涙こそ流さなかったが、声を詰まらせながらアメリアが言葉を紡ぐ。

「どうしようもないじゃないか! 部下の命はあたしのものだ、だったら、あたしの命は部下のものだ。だからあたしは命を捧げるんだ……。例え、それが……偽りの約束だったとしても……」

 やはりアメリアは分かっている。自分が処刑されたところで住人が解放されないだろうことを。

 それでもただ黙っていることはできなかった。万に一つの可能性に賭けたのだろう。

「わかったよ。ホント頑固だよ、お前は。じゃあ、僕も最後までお供するぜ」

「なっ! それはダメだ! 貴様は逃げろ」

「嫌だね」

「命令だ!」

「それだけは聞けない」

 僕の言葉を聞いて、アメリア再び笑う。少し寂しそうに。

「本当に貴様は腹が立つ奴だ。だが、そういうところが貴様らしい」

 不意に真面目な顔をして、僕の目を見返してくる。

「貴様だけは死んで欲しくない。頼む。逃げてくれ。……これはお願いだ」

 あーあ。ホント、ここの奴らって人を説得するのが下手だな。そんな顔でそんなこと言われたら、逃げることなんてできねーよ。

「お前さ、僕に言ったよな? この世界に残ってくれないかって」

「……あ、あれは……」

「残るだけじゃなくって……いさせてくれねーか? お前の隣に。この先もずーっと」

「……貴様」

「これは僕の意思だ。お前の命令でもなく、願いでもなく、僕の本音だ」

「……」

「もし、ここでお前が死んじまったら僕の居場所がなくなっちまう。だから、お前に死んでもらっちゃ困るんだ。僕のためにな」

「……ふん、身勝手な話だな。だが、この状況では……」

「僕は生者だぞ。この世界の法に縛られない唯一の人間だ。……だったら、例え『国王』が相手でもなんとかなるんじゃねーか?」

 ハッと目を見開くアメリア。

「止めろ! 無理だ! 殺される!」

「僕が聞きたいのは、お前がどうしたいかだ。言ってくれ、アメリア。お前はどうしたい?」

 アメリアは僕から視線をそらして俯く。

「この……馬鹿者が」

 必死に止めていた涙が一筋だけ頬を伝ってポタリと床に落ちたのが見える。

 そして、顔を上げたアメリアの表情はいつも通りの不敵な笑みを浮かべた生意気なものに戻っていた。

「あたしを助けろ。チャーリー・バロット。これは命令だ」

 その言い方に思わず笑ってしまう。うん。やっぱ、こいつはこうじゃなくっちゃな。

「おう! 任せろ!」

 心臓がドクンと大きく高鳴る。

 なんだろうな? 不思議な感じがする。

 今なら、どんな奴にも負ける気がしねえ!

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