【Webライトノベル】チャーリー・バロットと墓場の女王㊹

【Webライトノベル】チャーリー・バロットと墓場の女王㊹

 バンと大広間のドアを勢い良く開ける。

 僕の視線の先にはクラムがいて、玉座に座っていた。その周りには百体以上のゾンビ兵がいる。

「なんだ、貴様は?」

 クラムが僕を見下して、不機嫌そうに鼻を鳴らす。

「チャーリー・バロット。アメリアの下僕さ」

「……雑魚には興味ない。おい、お前ら、こいつをつまみ出せ」

 クラムの命令で、百体程いるゾンビ兵がこっちに向かってやってくる。が、

「どけ」

 僕の怒りを込めた言葉を聞いて、怯えたようにゾンビ兵が下がった。

 クラムまでの一直線の道ができる。

「ほう。なかなかの魔力を持っているようだな、小僧」

「あんたさぁ。刻印持ってるだろ? 『国王』の刻印。それ、くれねえかな?」

「……肝が座っている上に、道化も演じれるのか。部下に欲しいくらいだ」

「あんたが持ってる刻印を奪い取って、最初に出す命令はこうだ。『皆を解放しろ』。どうだ? これなら合法的に全てが丸く収まる」

 恐らく、この方法はガンツには思いついていただろう。

 だけど、あの時、何も言わなかったのは僕の身を案じてだ。

 戦えば負ける。殺される。

 言ってみれば奪う方法がないのだから、その方法が愚策となる。

「中途半端に力を持つと早死するというのは本当らしいな。私は笑えない冗談が嫌いだ」

 クラムは座ったままで、右手の人差し指を掲げる。その上に、光の玉が出現した。

 クイっと指を振り下ろすと、光の玉が僕に向かって飛んでくる。

 一瞬、弾き返そうと手が反応するが、無理矢理押さえて左側に大きく跳ぶ。

 僕の頬をかすめて光の玉が床に当たり、轟音を立てて大理石の床をえぐった。

「……スピード系か。面倒だな」

 ため息をつきつつ、二つ、三つと連続で玉を飛ばしてくる。

 よし、完全に油断している状態だ。

 正直、最初や今の攻撃は弾き飛ばすことはできる。でも、それは奥の手だ。

 短期決戦。これが、僕に残された戦法だ。

 奴の懐に入り、一撃で決める。

 そのためには攻撃を弾けるということを悟らせてはならない。

 なんとか、近づくまでは……。

 だが、そう都合良くはいかず、よりにもよって左足に被弾した。

「痛え!」

 左足を抱えて床を転がり、這いずり回る。

 やべえ。足をやられた。これじゃ、近づくどころか立てもしない。

 それでも、ゴロゴロと転がることはできる。

 必死に転がって奴の玉を多少被弾しながらも直撃はさけることに成功した。

「虫けらが。これ以上、時間を取らせるな!」

 クラムがフラフラと揺れるように立ち上がり、僕の方向に近づいてくる。

 よし、あっちから来た。いいぞ。僕が立てないってところを除けば、作戦通りだ。

「せめて苦しまんように、一瞬で消してやる」

 手を伸ばせば届くほどの距離までクラムが歩いてくる。

 今だ! 油断したなっ! 馬鹿め!

 僕は立ち上がって、クラムの顔面を殴った――イメージをした。

 立てない。痛い。もう、ホント泣きそう。

 チラリと左足を見てみる。

 真っ黒に焦げていた。

 そりゃ、立てないよねって感じにこんがりと焼けている。

「はああああ!」

 クラムが力を込めて魔力の玉を作り出す。

 今まで僕が見てきた中でも群を抜いてデカイ玉だった。

 確かに、一瞬で消されそうだし、転がって逃げれるような大きさじゃない。

 あーあ。詰んだな。やっぱそんなには上手くいかねーな。

 ふと、頭の中でアメリアの顔が浮かぶ。

 ……最後に見たかったな、あいつの顔。

 その時、バンと大きな音を立てて扉が開いた。

「どうした、チャーリー・バロット。あんな啖呵を切ってそんな有様か?」

「アメリア・ブライトマン。どうしてここに……?」

 クラムの視線がアメリアの方へと移る。

 だが、アメリアはジッと僕の方を見ていた。

 その表情はいつも通りの勝ち誇ったような小生意気なものだった。

 そして、いつも通りの口調で告げる。

「勝て、チャーリー。これは命令だ」

「うおおおおおお!」

 なんだろうな。あいつの顔を見てると力が湧いてくる。

 いつも無理して、意地張って、無茶なことばっかり言うアメリア。

 そんなあいつを……アメリアをこれからも見ていたい。守ってやりたい。

 僕の思いに反応したのか、左足が動き、立ち上がることに成功する。

「おらあああああ!」

 右こぶしを振り上げ、クラムの顔面へと振り下ろす。

「ちっ! くそがっ!」

 クラムの方は右手を下ろし、魔力の玉を僕に向かって放った。

 咄嗟に左手で魔力の玉を弾く。

 飲み込まれるように左腕が弾けとんだ。

 そのおかげで、若干玉のスピードが落ちる。

 これなら、届く!

 僕は思い切りクラムの顔をぶん殴った。

 殴った顔が弾けるのを確認すると同時に、視界が真っ白になる。

 どうやら、魔力の玉に包まれたようだ。

 僕の体が、バラバラに崩壊していく。

 体が光に溶け込んでいく間、様々な記憶が頭の中を過ぎ去っていった。

 ……なるほど、これが走馬灯というやつか。

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