■概要
人数:5人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス
■キャスト
彰吾(しょうご)
魁人(かいと)
その他
■台本
彰吾が10歳の頃。
彰吾・子供「見てくれよ、これ! すげーだろ!」
彰吾がバンと写真を机に置く。
クラスメイト1「わー、すごい! 心霊写真だ!」
クラスメイト2「ねえねえ、彰吾君、これ、どこで撮ったの?」
彰吾・子供「山の中の病院だよ。ほら、壊れたところの」
クラスメイト1「えーー! あんな怖いところに行ったの?」
彰吾・子供「じゃないと、心霊写真撮れないだろ」
クラスメイト2「彰吾君は、ホント凄いね」
場面転換。
10年後。彰吾が20歳。
車に乗っている、彰吾。
魁人が運転している。
魁人「……吾。彰吾! 起きろって」
彰吾「ん? ああ、魁人。おはよう」
魁人「いや、おはようじゃなくて。お前さ、人に運転させて、横でグーグー寝るなよ」
彰吾「ごめん。昨日、編集してて、寝るの遅かったんだよ」
魁人「だから、編集は外注しようって言ってるだろ。そこそこの収益上がってきてるんだし」
彰吾「……いや、編集は自分の手でやりたいんだ」
魁人「……まあ、彰吾がそういうなら、別にいいんだけどさ。けど、それで体壊したら意味ないだろ」
彰吾「別に、ちょっと寝不足なだけで、体調は崩してないって」
魁人「……けど、まあ、こんな状況で寝られるお前の神経も凄いけどな」
彰吾「なんだよ、魁人。ビビッてるのか?」
魁人「そ、そりゃそうだよ。地元の人に聞いた、穴場で最強の心霊スポットだからな」
彰吾「こりゃ、再生数、ガンガン伸びるな」
魁人「お前の肝っ玉を少し分けて欲しいぞ」
彰吾「あははは。俺は小学校の頃からこういうことやってたからな。慣れたよ」
魁人「小学の頃から? マジで?」
彰吾「ああ。俺らの小さい頃って、すげー、心霊系の番組やってたじゃん。その影響でさ、よく、夜に家を抜け出して心霊スポットとか行ってたよ」
魁人「筋金入りだな。……で? そのときは心霊写真とか撮れたの?」
彰吾「それがさ、撮れちゃったんだよ。すげーのが。それを学校に持っていったら、一躍ヒーロー扱いだよ。それが快感でさー。さらにエスカレートしていったよ」
魁人「……親には見つからなかったのか?」
彰吾「見つかって、めちゃくちゃ怒られたよ。一か月くらい、学校行く以外に外出禁止されたからな」
魁人「それでも、懲りずに夜に抜け出したりしてたんだろ?」
彰吾「もちろん」
魁人「だろうな。……で? その一枚の後からは、順調に撮れたのか? 心霊写真」
彰吾「……なあ、魁人は、昔の方がよかったって思うこと、あるか?」
魁人「なんだよ、急に?」
彰吾「いやさ、今ってさ、スマホにカメラ付いてるのって当たり前じゃん。しかも高性能なやつ」
魁人「ん? まあ、そうだな」
彰吾「今ってさ、あんまり心霊写真って無くなってる気しないか?」
魁人「……そういやあ、そうだな。けど、それってテレビとかでやらなくなったからじゃないか?」
彰吾「それもあると思うけどさ、動画でも、心霊写真系って少ないんだよ。あっても、古い写真のばっかりだし」
魁人「何が言いたいんだ?」
彰吾「スマホで写真が撮りやすくなっているはずなのに、心霊写真が少ないってこと。それこそ、写真なんて、昔と比べても、今の方が色々なSNSに大量にあがってるのにさ、心霊写真だ!っていうの、ないだろ? つまり、昔の方が心霊写真を撮りやすかった……作りやすかったんだよ」
魁人「偽物ってこと?」
彰吾「もちろん、本人だって偽物を作ろうってしてたわけじゃないだろうけど、カメラの性能が悪いせいで、変な風に写るなんてこと、結構、あったんだよな」
魁人「今は、性能が良過ぎて、変な風に写らないってわけか」
彰吾「ああ。それに、今だと画像修正とかできるから、自然なものを作ろうと思えば作れちゃうんだよ」
魁人「ん? それなら、心霊写真増えるんじゃないの?」
彰吾「いや、作れちゃうから、本当に撮れたとしても、作ったんじゃないかって疑われるんだよ。だから、撮った本人も、昔と違ってホイホイと出しづらいってわけ」
魁人「なるほどなー」
彰吾「確かに、性能が良くなって便利になるのはいいと思うけど、カメラだけは昔のままが良かったなって、思うんだ」
魁人「……あれ? ってことは、彰吾も作ってたってことか、心霊写真」
彰吾「あはははは。まあ、な。そうそう撮れないよ、心霊写真なんて」
魁人「はあ……。さすがだな。今みたいなことを小学生の頃からやってたってことか」
彰吾「ま、俺は根っからのエンターテイナーだからさ」
魁人「人はそれをペテン師と呼ぶけどな」
彰吾「ペテン師の仲間もペテン師だけどな」
魁人「……で? 最初の写真はどうだったんだ? 実は作ったものだったのか?」
彰吾「いや、さすがに最初から作ろうとするほど悪童じゃないって」
魁人「どの口が言うんだよ」
彰吾「なまじ、最初に本物を撮れちゃったから、ハマっちまったんだよな。最初から偽物なら、罪悪感が強くて、すぐ辞めちゃっただろうな」
魁人「どうだかな」
彰吾「けどさ、小学校の時はすげー勉強したんだぜ。心霊写真の作り方の」
魁人「……嫌な子供だな」
彰吾「当時のテレビに出てたやつより、よっぽど、凝ったの作ってたぞ」
魁人「威張るなよ」
彰吾「魁人は幽霊っていると思う?」
魁人「このタイミングで、それ聞く? それに、俺たちのチャンネルの存続に関わる質問だぞ」
彰吾「そういうの、全く無視して、本音は?」
魁人「んー。まあ、少しは……信じてるかな。今だって、ちょっと怖いしさ。……彰吾は信じてるんだよな?」
彰吾「まあね。最初の……あの写真は本物だったしな」
魁人「……」
彰吾「その場所だけは、いつも撮れたんだよ、心霊写真」
魁人「……マジで? お前、呪われてたんじゃねーの?」
彰吾「ははは。そうかもな。けど、その当時の俺は嬉しかったんだよ。毎回、心霊写真が撮れるのが」
魁人「本当に変わった小学生だな」
彰吾「ある時さ、俺の写真を見て、他の奴がその場所に写真を撮りに行ったんだよ」
魁人「へー。で? やっぱり、そいつのも写れたのか?」
彰吾「……ああ。それで、やっぱり本物だって大騒ぎになってさ。……その場所、すぐに取り壊されたんだよね」
魁人「……まあ、変に噂になったら、色々なやつが行くかもしれないからな」
彰吾「それを見てさ、俺、思ったんだよ。俺のせいで、幽霊の住処を壊しちゃったって」
魁人「そう考える小学生は、なかなかいないと思うけどな」
彰吾「だからさ、それからは偽物の写真ばかり作ったってわけ」
魁人「なるほどな。……おっと、着いたぞ」
車を止め、二人が外に出る。
彰吾「さてと、お仕事行きますか」
魁人「うう……やっぱ、怖いな」
場面転換。
勢いよくドアが開き、魁人が入って来る。
魁人「彰吾! やった! やったぞ! ほら、これ! あそこで撮った動画!」
彰吾「おお! すげー! 完璧に本物じゃん、これ!」
魁人「だろ! これで、過去最高の再生数、いただきだな!」
彰吾「……なあ、魁人。これ、アップするの止めねえ?」
魁人「な、なんでだよ!」
彰吾「俺さ、また、幽霊から、住む場所を奪いたくないんだよ」
魁人「けど……」
彰吾「頼む」
魁人「くそ! めちゃくちゃ怖かったのに、無駄になるのかよ!」
彰吾「すまん。その代わり、新しい心霊スポット見つけてきたからさ。今夜、さっそく行こうぜ」
魁人「はあ……。ここは偽物だといいな」
彰吾「そうだな」
終わり。