■概要
人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、コメディ
■キャスト
太郎
天使
その他
■台本
太郎がオンラインゲームをやっている。
カタカタとコントローラを操作する音。
太郎「よし! いけ! よし! 20キル達成!」
ゲーム内の爆発音。
太郎「あ、くそ! あーあ、ゲームオーバーか……。ゲームにも飽きたな。ラノベでも読むか……」
グーっと腹の音が鳴る。
太郎「腹減ったな……。出前でも取るか。……スマホ、スマホ……」
ガサガサと部屋を漁る。
太郎「くそ、見当たらねえ。てか、ゴミが多すぎる。そろそろ掃除しないとな……。けど、面倒くせえ。あー、どうすっかな。コンビニに何か買いにいくか? でも、着替えるのも面倒だしな。うーん……」
そのとき、外からゴーっという轟音が聞こえてくる。
太郎「なんだ?」
音が徐々に大きくなり、そして、巨大な爆発音が広がる。
太郎「うわああああああ!」
場面転換。
太郎「うお! なんだ? 何が起こった? ……って、あれ? ここどこだ?」
天使「天国ですよ」
太郎「うわ! あんた、誰だ?」
天使「私は天使でーす! ほら、翼ですよ」
バサバサと翼を動かす天使。
太郎「天使かぁ。確かに可愛いし、なんか神々しいし、本物か」
天使「はいー。本物です」
太郎「えっと、ここが天使ってことは……俺、死んだのか?」
天使「はい。あなたの部屋に隕石が落ちたんです」
太郎「……っ!」
天使「ショックですよね。わかりま……」
太郎「やっったーーー!」
天使「え?」
太郎「よし、よし、よし! 来た来た!」
天使「あの、死んだんですよ? ショックじゃないんですか?」
太郎「いやいや。死んだ後で、目の前に天使が現れたってことは、俺、異世界転生するってことでしょ?」
天使「いえ。これから地獄に行ってもらう手続きをしてもらおうかと」
太郎「なんでだよっ! ここは、チート能力を持って、異世界転生の流れだろ!」
天使「あー、それは徳を積んで、魂のポイントが高い人の話です」
太郎「魂のポイント?」
天使「はいー。生きてた時に何をしてたかの数値です。あなたは無職で親のスネをかじっていて、SNSでは誹謗中傷ばかりしてましたよね? 魂の数値はマイナスです」
太郎「そんなー! 何とかしてよ! 俺が死んだのはそっちのミスでしょ?」
天使「いえ。別にこっちのミスでは……」
太郎「やだー! やだー! 異世界行く!」
天使「困りましたねー」
太郎「お願い! ここは特例で、チート能力を持って異世界転生して、女子にモテモテにしてよ」
天使「……頼む側なのに、随分とわがままなことを言いますねー」
太郎「異世界に行けないなら、ずっとここに居座るからな!」
天使「うーん。では、負債するのはどうでしょう?」
太郎「負債?」
天使「はいー。魂のポイントを前借するんです。来世に払う必要があるんですが」
太郎「いいね。それそれ! それにする」
天使「それでは、どのプランにします?」
ペラっと紙を出す。
太郎「そうだなー。どうせだから、一番高いやつにしようかな。この、マシマシプラン」
天使「では、一億ポイントを来世に負債……と。次に、500ポイントをステータスに割り振ってください」
太郎「おお、来た来た。ステータス。えっと……やっぱり、魔法系が楽でいいよな。魔力に全振り、と」
天使「顔は、この3つから選んで下さい」
太郎「いや、この3つなら、3番でしょ。ダントツイケメンだし。……1番とか、ほとんど今のままじゃん」
天使「最後にスキルを設定してくださいー」
太郎「んー。じゃあ、一度見た魔法をラーニングできるってやつにしようかな」
天使「わかりましたー。じゃあ、下級の火の魔法はサービスでつけておきますね」
太郎「ん? ああ。まあ、すぐに上位の魔法を覚えていくから使わんと思うけどな」
天使「では、これから転生させますー」
太郎「おう!」
天使「行ってらっしゃいー」
場面転換。
ガバッと起き上がる太郎。
太郎「うお!」
周りがザワザワする。
太郎「えーっと……うん。明らかに異世界だな。ホントに転生したのか」
女の子「あのー、大丈夫ですか?」
太郎「うわ、可愛い人だな。ヒロインかな?」
女の子「……ヒロイン?」
太郎「あの、鏡とかってあります?」
女の子「え? あ、はい。どうぞ」
太郎「ありがとう。……おおお! 選んだ通り、俺、イケメンだ! すげー」
女の子「……イケメン?」
太郎「となれば、さっそく……。う、ううん(咳払い)。あのお嬢さん。俺、この世界にきたの初めてなんだ。町を案内してくれないか?」
女の子「え、えっと……。いいですけど」
太郎「(小声で)ふふ。顔を伏せて、恥ずかしがってる。まあ、こんなイケメンなら仕方ないよな。もう、俺に惚れたか?」
場面転換。
太郎と女の子が並んで歩いている。
遠くでザワザワと騒がしい。
太郎「えっと……。なんか、注目されている気がするんだけど。主に、女の子に」
女の子「え、ええ……まあ……」
太郎「やっぱり、俺がイケメン……。格好いいからかな?」
女の子「え? 格好いい……ですか?」
太郎「うん。俺の顔、カッコいいでしょ?」
女の子「……それが、その……この国では、正直、あなたの顔は……不細工に分類されます」
太郎「え? え? 嘘!?」
女子「格好いい顔は……ああいう顔と体型ですね」
太郎「……前の俺みたいじゃん」
女の子「あの方、凄くモテるですよ」
太郎「へ、へー……。そ、そうなんだ」
そのとき、女の子が男とドンとぶつかる。
女の子「きゃっ!」
男「いってぇ! おい! どこ見て歩いてんだ!」
女の子「ご、ごめんなさい」
男「へえー。可愛い顔してるじゃねーか。よし、これから俺に付き合えよ」
女の子「ちょ、ちょっと離してください」
太郎「(小声で)おお、来た来た。テンプレート。これで俺が助けて、ハーレムの一歩ってわけだ。まあ、顔はしくじったけど、チートで、スゲーでモテモテの流れだな」
男「ほら、来いよ!」
太郎「おい! その子から手を放せ」
男「なんだ、この不細工。ひっこでろ!」
太郎「……口に気を付けろよ。雑魚が」
男「ああ!? 痛い目にあいたいようだな」
太郎「やれやれ……。少しビビらせてやるか。ホントはもう少し上位の魔法を覚えてからにしたかったけど、覚えている炎に全魔力を乗せて……っと。はああああ!」
ゴオオオという業火を出し、空へと打ち上げる。
男「あ……ああ……。魔法を使いやがった」
女の子「なんてことを……」
太郎「(小声で)ふふふ。ビビってるビビってる。けどここは、謙虚にいくか。ううん(咳払い)。……えっと、俺、なんかやっちゃいました?」
女の子「街中で魔法を使うなんて、何考えてるんですか!?」
太郎「いやあ。あんな下級の、ちょっぴりの魔力を込めた魔法を撃っただけじゃないか」
女の子「そんなことは関係ありません! 魔法を使ったことが問題なんです!」
太郎「え? 魔法使ったらダメなの?」
女の子「ダメです!」
太郎「なんで?」
女の子「この世界は平和だからです」
太郎「平和? この世界に魔王は?」
女の子「いないです」
太郎「モンスターは?」
女の子「いないです」
太郎「なんか、脅威になる存在は?」
女の子「いないです」
そのとき、兵士が大勢やってくる。
兵士「貴様! 街中で魔法を使ったそうだな! 牢屋にぶち込んでやる!」
太郎「……イケメンじゃなくて、魔法も使っちゃダメって……俺、この世界じゃ意味ないじゃん……」
兵士「おい! ぶつぶつ何言ってんだ! 大人しく、お縄につけ!」
太郎「……魔王になろうかな。俺……」
終わり。