■概要
主要人数:3人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、ラブコメ
■キャスト
加奈(かな)
和也(かずや)
雫(しずく)
■台本
加奈(N)「どんな人にも表と裏がある。表面的には友達を装っていても、陰では悪口を言う。こんなことはごくごく普通のことで、なにも、特別なことじゃない。だから、相手の気持ちを知りたい。そう思うのは仕方ないことだと思う」
場面転換。
スズメの鳴く声。
和也「ぐーぐー(いびき)」
バンとドアが開き、加奈が入って来る。
加奈「……やっぱり。ちょっと! 和也! 起きなさい! 遅刻するわよ!」
和也「ほえ?」
場面転換。
加奈と和也が走っている。
加奈「ホント、あんたは毎日毎日……。いい加減、スマホでアラームかけなさいよ!」
和也「いやあ、かけてはいるんだけどな。消しちまうんだよ」
加奈「なんでよ!?」
和也「ほら、加奈が来てくれるって思うと、ギリギリまで寝たいってもってさ」
加奈「……」
和也「いつも、悪いな」
加奈「べ、別にいいわよ」
和也「けどさ……」
加奈「なに?」
和也「なんで、俺に構ってくれるんだ?」
加奈「そ、それは……。まあ、一度、関わっちゃったからね。習慣みたいなもんよ」
和也「……そっか」
加奈「……和也は迷惑? 私に色々、構われるの」
和也「いや、そんなことはないよ。助かってるって」
加奈「そっか……」
場面転換。
教室内。
加奈「あーあ」
机に突っ伏す加奈。
雫「何落ち込んでんの?」
加奈「……雫。なんで、人って嘘を付いちゃうのかな?」
雫「なんのこと?」
加奈「……和也」
雫「あー。あんた達、まだ付き合ってないんだっけ?」
加奈「友達止まりだよ」
雫「はたから見たら、どう見ても付き合ってるようにしか見えないけどね。和也くんから告白されないなら、あんたから告っちゃえばいいのに」
加奈「できるわけないでしょ! 断られたら立ち直れないわ」
雫「いやあ。それはないと思うけど」
加奈「そんなの、わかんないじゃん。あーあ。相手の気持ちを知る方法ってないかな」
雫「んー。他人が聞けば、ホントのことを言ってくれるんじゃない?」
加奈「どういうこと?」
雫「ほら、本人がいないところなら、ついポロっと本音を言うんじゃない?」
加奈「私がいないところで、私のことを聞くの? えっと、誰かに聞いてもらうってこと?」
雫「ふふふ。いい作戦を思いついたわ」
場面転換。
和也が歩いているところに、加奈が話しかける。
加奈「和也さん、ですよね?」
和也「ん? あれ? 加奈……? なんか、雰囲気が違う感じがするな」
加奈「あ、私、双子の妹の真奈です」
和也「え? 妹? 加奈に妹なんか、いたの?」
加奈「え、ええ……」
加奈(N)「いくら、ボーっとしてる和也でも、こんな嘘はさすがに見破られるかな」
和也「へー。そうなんだ。にしても、ホントそっくりだな」
加奈「えっと、ホクロが逆なんです。泣きボクロの位置が、姉は右で私は左です……」
和也「……おお! ホントだ!」
加奈(N)「本当はファンデで隠して、逆側にペンで塗っただけだけどね」
和也「真奈さんだっけ? ねーちゃんの加奈には世話になってるよ。ホント、助かってる」
加奈「そうですか。よかったです」
和也「あ、あのさ。加奈は家でなんか言ってないかな? 毎朝、俺を起こしにくることを、さ。嫌がってたりしてない?」
加奈「いえ。そんな素振りはありませんよ。いつも嬉しそうにしてますから」
和也「そ、そうか。よかった」
場面転換。
教室内。
雫「で? どうだった?」
加奈「だい! せい! こう! なんだろ。驚くほど、色々、本音が聞けたわ」
雫「それで? あんたをどう思ってるかは、ちゃんと聞けたの?」
加奈「いや、まだ……」
雫「なにしてるのよ。それじゃ意味ないじゃない」
加奈「いや、ほら、もう少し信用してもらってから聞こうと思ってさ」
雫「ま、あんたがそれでいいっていうなら、別に口は出さないけど」
加奈「……少しずつでも聞いてみるわ」
場面転換。
和也「でさ、加奈なんだけど、普段、家だと、どんなことして過ごしてるんだ?」
加奈「そうですね……。漫画とか、読んでますよ。あとは結構、ネットとかしてます」
和也「へー。どんな漫画読んでるんだ?」
加奈「えっと、実はバトルものとか、好きだったりしますね」
和也「マジで? 言えよ!」
加奈「あ、ごめん……」
和也「あ、いや。真奈さんが謝ることじゃないよな」
加奈「え? あ、そうですね」
和也「そっか、そっか。今度、話を振ってみるか」
加奈「あ、あの……和也さん。その……」
和也「ん?」
加奈「加奈……。お姉ちゃんのこと、どう思ってるんですか?」
和也「……」
加奈「あ、いや、言いたくないなら言わなくていいですよ」
和也「……卑怯……だよな」
加奈「え?」
和也「いや、何でもない」
加奈「……」
和也「……俺はさ、加奈のこと……好きだよ」
加奈「ホント?」
和也「……あ、あのさ……。あいつは……加奈は……俺のこと、どう思ってるのかな?」
加奈「それは、もちろん!」
和也「え?」
加奈「あ、いや、なんでもないです。……あの、今度、姉に、それとなく聞いてみますね」
和也「あ、ああ。うん。頼む」
加奈(N)「やったー! 和也も私のこと……。うん。よし、あとは、真奈を通して、私の思いを伝えるだけだ」
場面転換。
加奈が走って来る。
加奈「和也さん!」
和也「あ……」
加奈「姉に聞いてきました! 姉も、和也さんのことが好きだって!」
和也「……」
加奈「どうしました?」
和也「加奈……。えっと……ホクロ、変えてない」
加奈「……え? あっ!」
和也「……えっと……その……付き合うか」
加奈「う、うん……」
終わり。