■概要
人数:3人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、ホラー?
■キャスト
明(あきら)
匠(たくみ)
一華(いちか)
■台本
明「……なぜだ? なぜ、お前がここにいる? どうして戻ってくるんだーー!」
明(N)「俺は今、人生で最大のピンチを迎えている。このままでは俺の命が危ない。だが、どうする? どうしたらいい? いやいや待て待て。一旦落ち着こう。問題というのは、理由を突き止めれば、大体は解決するものだ。この事件の発端……。それは昨日に遡る……」
場面転換。
犬のタローの吠える声。
公園内で、周りからは親子や子供たちの声がする。
明「ほら、タロー、取ってこいー!」
フリスビーを投げる明。
応えるように吠えるタロー。
そして、タローが戻って来る。
明「おおー。偉いぞ。よく取ってきたな。じゃあ、もう一回だ、それー!」
再び明がフリスビーを投げ、タローが吠えてそれを追う。
明「あ、飛び過ぎたな。……大丈夫かな。あ、戻ってきた」
タローが戻って来る。
明「……おい、タロー。取って来るのはフリスビーだぞ? だいたい、こんなぬいぐるみ、どっから持ってきたんだよ? もしかして、これ、俺へのプレゼントか?」
タローが元気よく吠える。
明「いや、いつも言ってるけど、プレゼントとかいらないから。そのぬいぐるみ、持ち主に返して来い」
また、元気よく吠えるタロー。
明「なんて言ってもわかるわけねーか。仕方ない。聞いて回るか……」
明(N)「そのとき、公園内にいた人たちに聞いてみたが、ぬいぐるみの持ち主は見つからなかった。……それにしても、これ、なんのぬいぐるみだ? クマ? イヌ? もしかして、ネズミか? まあ、いいや。せっかくだから持って帰って、妹にでもやるか」
場面転換。
一華「なに、そのぬいぐるみ? キモイんだけど……」
明「……だよな。……いる?」
一華「いると思う?」
明「ですよね……。じゃあ、捨てるぞ」
一華「お好きにどうぞ」
明「ん」
ポンとゴミ箱にぬいぐるみを捨てる明。
一華「あ、そうだ。タローにご飯あげた?」
明「あ、まだだな」
一華「お兄ちゃんが担当なんだから、あげてよ」
明「はいはい」
場面転換。
ドアを開けて、庭に出る明。
明「おーい、タロー。飯だぞー」
沈黙。
明「あれ? どこにいった? ……まさか、家の中か? まあいい、置いておけば勝手に食べるだろ」
場面転換。
部屋に入って来て、ベッドに寝転がる明。
明「あーあ。日曜はあっという間に終わるよなー」
寝返りを打つ明。
明「……ん? あれ?」
起き上がる明。
明「なんで、ぬいぐるみがここにあるんだ? 俺、リビングのゴミ箱に捨てなかったっけ? ……まあ、いいか」
ポンとゴミ箱に捨てる明。
場面転換。
携帯のアラーム音が鳴り、それを消す明。
明「うーん……。朝か。あーあ。また一週間の始まりか。嫌だな―」
クーンというタローの鳴き声。
明「タローはいいよな。毎日が日曜日でさ。……ん? あれ? なんで、ぬいぐるみがベッドの上にあるんだ? 俺、昨日、ゴミ箱に捨てたよな……? ……はは。まさかな」
再び、ゴミ箱にぬいぐるみを捨てる明。
場面転換。
明「なあ、匠。世の中に呪いって、ホントにあると思うか?」
匠「なんだ、急に?」
明「いやさ、昨日、変なぬいぐるみを拾ったんだけど、捨てたと思ったのに、気付いたら戻ってくるんだよ」
匠「……それ、完璧呪いのぬいぐるみだな」
明「な、なんだよ、呪いのぬいぐるみって」
匠「聞いたことないか? 呪いのぬいぐるみを拾ってから、24時間以内に捨てないと、死ぬって話」
明「な、なんだよ、そのありきたりな設定は」
匠「本物はありきたりなものなんだよ。お前、昨日拾ったなら、今日までに捨てないとヤバいぞ」
明「いや、だから、捨てても戻って来るんだって」
匠「あーあ。ご愁傷さま。今のうちに貸した500円返してくれよな」
明「お前、他人事だと思って……」
匠「はははは。ビビんなよ。どうせ、お前の勘違いかなんかだろ」
明「そ、そうだよな……」
場面転換。
学校のチャイム。
明と匠が廊下を歩いている。
匠「帰りに、ゲーセンよってこーぜ」
明「いいけど、お前、少しは手加減しろよ」
ガチャリと下駄箱を開く。
明「……え? う、嘘だろ……」
匠「どうした?」
明「うわああああああああ!」
匠「お、おい! どうしたんだよ?」
明「ぬいぐるみ、ぬいぐるみがーー!」
場面転換。
公園でブランコに座る明。
そこに匠がやってくる。
匠「ほら、ジュース」
明「さんきゅー……」
匠「それが、呪いのぬいぐるみか……」
明「俺、どうしたらいいんだ?」
匠「学校にまで来たってことは本物だな。……よし、お祓いに行くぞ」
明「お祓い?」
匠「知り合いのおじさんが神主さんなんだよ。相談すれば、お祓いしてくれるはずだ」
明「……匠。心の友よ!」
匠「べ、別にお前のためじゃねえ。500円のためだからな」
明「あ、そういうツンデレはキモイから止めて」
匠「ハッ倒すぞ」
場面転換。
明と匠が並んで歩く。
匠「よかったな。これで心配ないってよ」
明「サンキューな。じゃあ、言われた通り、塩ふってから、外の共用ゴミ捨て場に置いておくよ」
匠「ああ。じゃあ、また明日な」
明「今日は、ホント、ありがとな」
場面転換。
パッパッパと塩をぬいぐるみかける明。
明「よし、これでよし! もう戻ってくんなよ」
ぬいぐるみを置く明。
場面転換。
ドアを開けて家に入って来る明。
そこに一華が来る。
一華「ねえ、お兄ちゃん。今日、学校で……」
明「ごめん。今日は疲れた。もう寝るから、晩飯はいらないって、母さんに言っておいて」
一華「え? あ、うん。わかった。それより、タローが」
明「ごめん。明日にして……」
場面転換。
部屋に入り、ベッドに寝転がる。
明「なんか、ドッと疲れるな……」
場面転換。
時計の秒針が動く音。
明「ん……。あ、いつの間にか寝てたな」
起き上がる明。
ボス、と音がする。
明「……なぜだ? なぜ、お前がここにいる? どうして戻ってくるんだーー!」
ドアがギイと開く。
明「ひぃ!」
一華「うるさい。夜中に何騒いでんの?」
明「いや、あの……ぬ、ぬいぐるみ……」
一華「え? ぬいぐるみ? ……ああ、そのぬいぐるみ。タローのお気に入りでしょ」
明「へ? タローの?」
一華「ほら、タローって、お気に入りの物、お兄ちゃんにプレゼントしようとするでしょ」
明「あ、ああ……」
一華「昨日も、家を抜け出して、お兄ちゃんの学校にぬいぐるみを届けてたみたい。学校から、苦情の電話来てたよ」
明「タロー! お前かー!」
明(N)「捨てても戻って来るぬいぐるみの原因はタローだった。何回捨てても、タローが拾ってくるので、今では部屋に飾ってある。……なんか、不気味で嫌だけど」
終わり。