■概要
人数:2人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
当麻(とうま)
吾郎(ごろう)
■台本
当麻と吾郎が並んで歩いている。
当麻(N)「4月と言えば春。そして、新学期だ。しかも新学期というだけじゃなく、学年も上がるというのが最大のポイントになる。それは、つまり、全てがリセットされるということだ。勉強も、人間関係も、全て。これはもう、生まれ変わると言っても過言ではない」
吾郎「いや、それは言い過ぎだよ。勉強はリセットされないんじゃないかな。だって、勉強って積み上げでしょ?」
当麻「人の心の声に、ガチな返答をするな!」
吾郎「いや、心の声って……。普通に口に出してたよ」
当麻「え? マジで? もしかして、俺、結構、思ってること口に出しちゃってる?」
吾郎「ああー。時々、誰に話してるんだろ、って思ってたのは、心の声だったんだ? 普通の人には見えないものが見えてるのかと思ってたよ」
当麻「なぜ、それを早く言わん! ……くそ、これじゃ、俺が変な奴だと勘違いされるじゃないか」
吾郎「大丈夫だよ。それは勘違いじゃないから」
当麻「なるほどなるほど。殴られたいと?」
吾郎「それより、また一緒にクラスになれるといいね」
当麻「へっ! 冗談じゃない。またお前と同じクラスで一年なんてごめんだね」
吾郎「え? なんで? 僕がいなかったら、ずっと一人になっちゃうよ? 一年間、孤独に過ごしたいの?」
当麻「……なんで、俺に、お前以外に友達がいないって決めつけてるんだよ」
吾郎「え? いないでしょ?」
当麻「……。いないなら、作ればいいだろ。新しく友達を作るためには、古い友達は邪魔になるんだよ」
吾郎「……毎年、そう言って、6月には孤独死しそうだって言って、僕に泣きついてくるじゃない」
当麻「……」
吾郎「でも……確かに、今日から進級になるんだから、心を改めた方がいいかもね。バカやるの止めないと、今年こそは留年しちゃうよ」
当麻「バカやるの止めないとって、別にバカやってるつもりはねーよ」
吾郎「……え?」
当麻「え?」
吾郎「あ、そうだ! 誰か一緒のクラスになりたいって人はいないの?」
当麻「誤魔化すな! なんだよ、さっきのえ? は?」
吾郎「あはは。それより、僕は涼子ちゃんと一緒のクラスになりたんだよね」
当麻「笑って誤魔化しやがった。……って、涼子ちゃん? 九条涼子?」
吾郎「そうそう。可愛いよね、涼子ちゃん」
当麻「九条ねぇ。ライバル多そうだぞ」
吾郎「別に付き合いとかじゃないよ。遠くから見るだけ満足だから」
当麻「おいおい。そんなの意味あるか? 見るだけしかできないなら、いっそ、近くにいない方がいいだろ」
吾郎「考え方がドライだなぁ」
当麻「俺なら、ガンガン、アタックする! ダメ元でもな」
吾郎「凄いなぁ。可能性が0なのに、突っ込んでいけるなんて」
当麻「可能性が0って決めつけるなよ!」
吾郎「知らないの? 女子の中で、付き合いたくない男子、ナンバーワンだったんだよ」
当麻「……知りたくなかった」
吾郎「理由はバカ過ぎるからだって。女子って残酷だよね。ホントのことをサラッと言うんだから」
当麻「お前の方が残酷だよ。……けどさ、そういうことも含めて、新学期はチャンスじゃないか」
吾郎「なんで?」
当麻「クラス替えだろ? つまり、周りは俺のことを知らない。ということは、チャンスがあるってことだ」
吾郎「……いや、クラス全員が知らない人ってことはないと思うよ。絶対、何人かは前のクラスの人は混じってると思う」
当麻「はっ! 確かに! しまった! 俺の計画がーーー!」
吾郎「……今年もバカは治らなさそうだね」
吾郎と当麻が立ち止まる。
吾郎「あ、見て! クラス表が張り出されてるよ。……あ、僕、B組だ! ……うわ、担任、竹野原先生だ。最悪だなー」
当麻「……ない」
吾郎「え?」
当麻「俺の名前がない!」
吾郎「うっそだぁ」
当麻「いや、マジで」
吾郎「……あ、ホントだ。どのクラス表にも名前がない」
当麻「なんでだ?」
吾郎「見て! あそこ! なんか、紙が貼ってるよ」
当麻「ホントだ。俺の名前が書いてある。……え?」
吾郎「……留年だって」
当麻「……」
吾郎「よ、よかったね。クラス全員、知らない人だよ」
当麻「いーーやーーーだーーー!」
終わり。