鍵谷シナリオブログ

【フリー台本】心霊写真

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■概要
人数:2人
時間:5分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
瑞穂(みずほ)
荒川(あらかわ)

■台本

瑞穂「先生。今まで数多くの心霊写真を鑑定してきたと思うのですが、今まででどのくらいの数になるんですか?」

荒川「そうですね……。そもそもが、本物の心霊写真が持ち込まれることは本当に少ないんですよ」

瑞穂「そうなんですか?」

荒川「ええ。大抵は、ピントのズレや、他の写真のネガ同士が影響して、あたかも心霊写真に見えるというものがほとんどです」

瑞穂「では、実際には本物の心霊写真が少ないと?」

荒川「はい。しかも今では、カメラも高性能になってますからね。そうそう、変なものが写り込むなんてことはないんですよ」

瑞穂「では、心霊写真の鑑定の依頼自体がなくなってきているということですか?」

荒川「そうですね。月に2、3枚と言ったところでしょうか」

瑞穂「なるほど。ですが、その中に本物が入っていることもあるんですよね?」

荒川「もちろんです。いくらカメラが高性能になっても、霊が消えるわけではありませんからね」

瑞穂「その中で、一番印象に残ってる写真はどんな写真ですか?」

荒川「そうですね……。色々ありますが、一番となると、これですかね」

ぺらりと写真を出す荒川。

瑞穂「……これが、ですか?」

荒川「これはご依頼人の方の、七五三の時の写真だそうです」

瑞穂「……特に変わったところはないように見えるのですが」

荒川「本当に何も、気になりませんか?」

瑞穂「え? ……強いて言えば、お姉さんが目立っているくらいですかね」

荒川「なるほど。では、次は、小学校入学の時の写真です」

ぺらりと写真を出す。

瑞穂「……ぷっ! いや、お姉さん、前に出過ぎですよ。本人よりも目立ってるじゃないですか」

荒川「……次は、高校の時の修学旅行の時の写真です」

ぺらりと写真を出す。

瑞穂「本当に、姉妹で仲がいいんですね。二人で、笑顔でピースしてるなんて。本当に楽しそうです」

荒川「……」

瑞穂「……あれ? ちょっと待ってください。今、修学旅行って……」

荒川「次は結婚式のときの写真です」

ぺらりと写真を出す。

瑞穂「……いや、ちょっと待ってください。このお姉さん、……全然歳を取ってないですよね?」

荒川「……」

瑞穂「まさか……」

荒川「ええ。その通りです」

瑞穂「こんなに、ハッキリ映るものなんですか?」

荒川「長年、心霊写真の鑑定をしてきましたが、ここまでのものは初めて見ましたよ」

瑞穂「でも……悪霊ではないんですよね? どの写真も楽しそうな笑顔をしてますし」

荒川「恐らく、守護霊でしょう。悪意や恨みなどは一切感じません。……まあ、目立ちたがり屋ではありますが」

瑞穂「目立ちたがりが過ぎますよ。本人より目立ってます」

荒川「依頼者の方も、恐怖をあまり感じなかったそうで、長年、放置していたそうです」

瑞穂「見てるこっちまで、思わず笑ってしまいそうなくらい、いい笑顔ですからね」

荒川「この写真は家族以外には見せないようにしていたようですね。守護霊が写り込むのは、記念写真で、依頼者の方が一人で写っているときだけでしたから」

瑞穂「なるほど。それなら、他の人にはバレにくいというわけですね」

荒川「ですが、出産のときに撮った写真がこれです」

ぺらりと写真を出す。

瑞穂「えっと、今までと変わったところは……あっ! 赤ちゃんも写っているのに、いる!」

荒川「ええ。今までは一人で写したときにのみ、写っていたのですが、娘さんと一緒のときにも映るようになったようです」

瑞穂「……」

荒川「これが、娘さんの七五三のときの写真です」

ぺらりと写真を出す。

瑞穂「娘さんの方に、守護霊が移ったということですか?」

荒川「おそらく、そうでしょう。つまり、この守護霊は代々伝わっていく守護霊なのでしょうね」

瑞穂「ずっと継承されてたということですか。凄いですね……」

荒川「依頼者さんは、自分のことだけであれば気にしなかったのですが、さすがに娘の方に移ったとなったら気になったらしく、念のために、私の所へ持ってきたのです」

瑞穂「……いいこと、なんですよね?」

荒川「ええ。もちろんです。だから、依頼者の方にはこう言っておきました。帰ったら、娘さんに憑いている守護霊に、今までのお礼とこれからは娘をよろしくお願いしますと言ってみてください、と」

瑞穂「……それで、どうなったんですか?」

荒川「そのときに撮った写真が、これだそうです」

ぺらりと写真を出す。

瑞穂「ふふっ! 親指をグッと立ててる。任せて、って言ってるみたいですね」

荒川「ということで、これが一番印象に残った写真ですね」

瑞穂「はい。私も、この写真のことは、きっと忘れないと思います」

終わり。

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