■概要
人数:3人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス
■キャスト
竜也(たつや)
真人(まさと)
美郷(みさと)
■台本
竜也(N)「……今日もまた、この時期がやってきた。俺と真人の勝負の日。今年こそは……今日こそは決着をつけないといけない。……いつまでも、引きずるわけにはいかないのだから」
美郷の足音が近づき、止まる。
美郷「……お兄ちゃん。来たよ」
竜也「美郷……か」
美郷「……今日も勝負するの?」
竜也「当たり前だ。今日こそ、勝ってみせる」
美郷「……勝負なんて、誰も望んでないよ」
竜也「……誰かのため、なんかじゃないんだ。俺は真人に勝たないと、前に進めない。これは俺のケジメなんだ」
美郷「もう、止めてよ……。お願い……。こんなの苦しいだけだよ」
竜也「……美郷」
美郷「私ね。ずっと後悔してるんだ。あのとき、私が止めてたら……。身を挺してでも、止めてたら……あんなことにならなかったんじゃないかって」
竜也「それは違う。例え、お前が止めたとしても、俺達は勝負していたさ」
美郷「私が……殺したようなものだよ」
竜也「違う! あいつが死んだのは、あいつの腕が未熟だったからだ! ……いや、違うな。勝つためなら、命なんていらない。そう思って臨んだ勝負だったんだ。あいつも、俺も……」
美郷「お願い……お願い……。もう……やめてよ」
竜也「あんな形で勝負がついたなんて、俺は思ってない。だから、ハッキリ白黒つけないと、あいつだって、成仏できないんだ」
バイクのエンジン音が響く。
真人「よお、今年も逃げなかったみたいだな」
竜也「……真人」
真人「さあ、早く乗れよ。始めるぜ」
竜也「お前はホントに、バイク命なんだな。死んでまでバイクを乗り回すのなんか、お前くらいだぞ」
真人「お前に言われたくないな。それに、好き嫌いなんて、どうでもいい。どっちが早いか、だ」
竜也「ああ、そうだな。そんなお前だからこそ、俺は今でも走れるんだ。お前に勝つためにな」
真人「へっ! 言ってろ。今日こそ、完全に叩きのめしてやるぜ」
竜也「そりゃ、こっちの台詞だ。お前に引導を渡して、あの世に送り返してやるよ」
真人「ルールはいつも通り。どっちが早くこの峠を越えられるか、だ」
竜也「ああ。わかってる」
真人「じゃあ、いくぜ」
竜也「スリー」
真人「ツー」
竜也「ワン……」
真人・竜也「ゼロ!」
勢いよく、バイクが走り出す音。
美郷「……っ! バイクの音……」
立ち上がる美郷。
美郷「……お兄ちゃんと真人くんのバイクの音……。やっぱり、今年も始めたんだね。もう走らなくてもいいのに。どっちが早いかなんて、決めなくてもいいじゃない……。今日は二人の命日なんだよ……。もう、ゆっくり休んでよ……。お願い。お兄ちゃん、真人くん……」
バイクの走行音が遠くで響いている。
終わり。