■概要
人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
佐藤 純一(さとう じゅんいち)
喜一(きいち)
その他
■台本
純一(N)「俺の名前は佐藤純一。いわゆる、高校生探偵だ。昔から名探偵ポワロに憧れ、推理力を鍛え続けて来た。それと、犯人を追い詰めても逃げられてしまっては意味がないから、格闘術もかじっている。この、稀代の名探偵、佐藤純一の名前は今や全国に知り渡って……いない。今はまだ無名だ。まあ、それは仕方ない。なぜなら、まだ一件も事件を解決していないからだ。だが、そんな苦汁を舐める日々ともお別れだ。なぜなら、今、俺は世間をにぎわせている、窃盗団を追っていて、犯人の目星もついているからだ」
場面転換。
喜一「……」
喜一が歩き出し、その後を尾行する純一。
純一「よし、予想通り、動き出したな」
純一(N)「今、世間の話題になっている神出鬼没の窃盗集団、ダンダカ団。警察は、犯人はおろか、次に狙われそうな場所さえも絞り切りていない。だが、俺は色々な観点で調べ、最近、妙に羽振りのいい人間を見つけた。そして、さらに犯行の法則を見つけ出すことに成功。次はミヨシ銀行が狙われるはずだ」
キャッチ「いやあ、喜一さん。どうだい、寄ってかない?」
喜一「ごめん、これから、ちょっと用事あるんだ。終わったら寄るよ」
キャッチ「へへへ。頼みますよ。サービス、いっぱいするんで」
喜一「ああ。期待してるよ」
キャッチ「それにしても、喜一さん。最近、随分と羽振りがいいけど、なにかあったのかい?」
喜一「……あー、えっと……実は宝くじに当たったんだよ。三等」
キャッチ「へえー。そいつはスゴイ。いっぱい、うちに落としてってくださいね」
喜一「ああ。だから、カミさんには内緒な」
キャッチ「あはは。わかってますって」
喜一が再び歩き出す。
純一「……宝くじが当たった? ふん、白々しい。羽振りがいいのは、人様のものを盗んでいるからだろ」
自動ドアが開く音。
純一「……やっぱり。ミヨシ銀行に入って行った。間違いない。よし、俺も……」
自動ドアが開く音。
場面転換。
純一(N)「やっぱり、いつもより、客が多い。……仲間が潜んでいるな」
喜一「よいしょっと」
椅子に座る音。
純一(N)「今、あいつは保険相談窓口の受付番号を取った。……保険の窓口は入り口から一番近いところ。客をけん制しつつ、銀行員たちを監視するには絶好の場所。間違いない。動くつもりだな。おそらく合図は、あいつの番号が呼び出された瞬間」
椅子に座る音。
純一(N)「ここからなら、客全員の動きがわかる。少しでも変な動きをしたら、こっとも行動開始だ」
ポーンという呼び出し音。
アナウンス「21番の方、保険窓口にお越しください」
純一(N)「あいつは26番だから、まだか……ん?」
男1「(小声で)おい、この紙に書いてある順序に沿って動け。おかしな行動したら撃つ」
銀行員「ひっ!」
純一(N)「ちっ! コソ泥が。タイミングが悪いな。やつが計画を中止したらどうするんだ」
立ち上がって歩き出す純一。
純一「やあ、兄さん。こんなところで会うなんて奇遇だね。ちょっと、あっちで話さない?」
男1「は? なんだ、てめえ?」
純一「まあまあ、すぐ終わるからさ」
男1「ちょ、てめえ、放せ……」
純一「あ、係員さん、その紙、捨ててもらっていいですから」
銀行員「は、はあ……」
男1「おまっ! ホントに、放……うっ!」
ドスっと殴る音。
ずるずると引きずっていく音。
場面転換。
純一「よし、ここに眠らせておけばいいだろ。念のため、手錠をしておいてっと。さてと戻るか」
場面転換。
廊下を歩く純一。
銀行員2「ひっ!」
純一「ん?」
男2「声を出すな。いいから早く、金庫のところへ連れて行け」
純一「あー、もう! 次から次へと!」
ツカツカと男2のところへ歩いて行く純一。
男2「あん? なんだ、お前! 近づくんじゃ……」
純一「邪魔してんじゃねえ!」
男2「がはっ!」
男2が純一に蹴られて吹っ飛ぶ。
銀行員2「あ、あの、ありがとうございます」
純一「この男は俺の方で処理しておくので、このことは黙っておいて下さい」
場面転換。
純一「よし、こいつにも手錠して、と。早く戻らないと、そろそろあいつの番になるな」
場面転換。
純一「えっと……ふう。まだ呼ばれてないみたいだな。……って、ん?」
男3「くそ、あいつら、なにやってんだ。こうなったら、俺一人で……うっ!」
純一が男3にヘッドロックをする。
男3「うう……な、なにを……」
純一「だーかーら、やめろっての!」
男3「あう……」
男3が気絶する。
純一「ったく」
場面転換。
アナウンス「26番の方、保険窓口にお越しください」
喜一「お、やっと順番が来た」
純一(N)「色々あったが、なんとか、無事にあいつの番が来た。さあ、こっちは準備万端だ。いつでも、いいぜ。タイミングは、奴がダンダカ団と名乗った瞬間だ」
しばしの沈黙。
純一(N)「おい。なにを談笑してる。早く動け! そら、今だ! ほら!」
喜一「ありがとうございました」
立ち上がって、喜一が歩き出す。
純一「え?」
喜一「次はあそこに寄って、と」
純一(N)「なんだと? ここじゃないのか? ……くそっ! だが、絶対に逃がさん」
場面転換。
純一「……」
キャッチ「いやあ、喜一さん、待ってたよ」
喜一「へへへ。今日は朝まで飲むぞ!」
純一(N)「くそ、なぜだ! なぜ奴は動かなかったんだ? まさか、尾行がバレていたのか? いや、そんなはずは……」
道行く人1「聞いた? ダンダカ団、捕まったんだって」
道行く人2「知ってる、知ってる。ニュースで出てたもんな」
純一「なんだと!?」
純一がスマホを取り出して操作する。
アナウンサー「本日、16時頃、警察はダンダカ団のメンバー3人を逮捕したとのことです」
純一「そんな! くそ! また、誰かに出し抜かれたー!」
アナウンサー「メンバーはミヨシ銀行の裏手で、手錠をされ、眠らされていた状態で見つかり……」
終わり。