■キャスト
女性
■時間
3分
■台本
初めて胸がときめいた相手は、保育園のお兄さんだった。
お兄さんの笑顔を見るだけで嬉しくなり、お母さんが迎えに来ても、帰りたくないと駄々をこねたのを今でも覚えている。
そんなある日、よく当たるという噂の占い師に、偶然、占ってもらうことができた。
言われた言葉が――あなたは初恋の相手と結婚します、だった。
嬉しくて、本当に嬉しくて、――すごく、幸せだったんだ。
毎日、お兄さんに会うのが、お話するのが本当に楽しかったんだよ。
そして、それから長い長い時間が経った。
私の初恋は本当に実るのかと不安になった。
でも、そんなとき、あなたは告白してくれたんだよね。
凄く嬉しかったよ。
今まで生きてきた中で、一番嬉しくて――そして、幸せだったんだから。
私は今度こそ、初恋が実る、あの占い師の占いは本当だったんだって思った。
ずっとあなたと一緒にいたよね。
学校が終わっても、放課後もずっと。
帰って寝て起きれば、またあなたに会える。
そう思ったら、眠ることも幸せに思えたんだ。
私はこの幸せがずーっとずーっと続くと思った。
あなたの隣にはいつも私がいる。
そんな未来を疑いもしなかった。
でも、あなたは私の元を去ってしまった。
好きな人が出来たって。
泣いたよ。すごく泣いた。
だって、本当に本当に、あなたを愛してたから。
周りは高校生が愛を語るなんて、と笑うかもしれない。
でも、私は本気だったんだ。
世界で一番、あなたを愛していたの。
――もう、こうやって部屋に閉じこもって3日になる。
そろそろ立ち直らなくっちゃ。
――きっと、あなたに抱いていた感情は愛であって、恋じゃなかったんだ。
だから、恋を探そう。
私の運命の相手――初恋の人を探しに。
終わり。
■解説
占いを信じ続けている純粋な女の子。
よく当たると言われている占い師に言われた「初恋の人と結婚する」という言葉をずっと信じている。
初めて好きになった人は「幼稚園に通っていたときの保育士の男性」になる。
だが、その淡い恋は当然、叶わずに終わってしまう。
占いは外れたのかと不安になっていた頃、高校で男子生徒に告白される。
その男子生徒こそが自分の運命の人だと確信した彼女は、「保育士の男性」のことは「恋じゃなかったんだ」と思い込む。
しかし、その告白してきた男子生徒とも別れてしまう。
そこで彼女は、男子生徒のことは「恋ではなく愛」とすることで、「初恋の人じゃない」と思い込む。
そして、彼女は「初恋の人」を探すため、気持ちを奮い立たせる。
また、占い師の占いは、「彼女が結婚する時」に初めて、「この人が初恋の人だった」と認めるので、実質、占い師の占いは当たっていることになる。
解説終わり。