■男性用
■時間:3分
■台本
ただいま。
……そう言ったところで、返事が返ってくることはない。
そんなことはわかっている。理解している。
だけど、つい、言ってしまうのは、無意識に君の、お帰りなさい、という言葉が返ってくるんじゃないかって思うからだろう。
滑稽だ。
こんな俺を見れば、誰だってそう思うだろう。
俺だってそう思っている。
孤独ほど辛い拷問は無い。
……誰の言葉だっただろうか?
……確か、小学校の頃の先生の言葉だ。
あの時は意味がわからなかったけれど、今は痛いほどわかる。
立つことさえも辛くなり、思わずベッドに身を投げ出す。
そこにはまだ、君の匂いが残っている。
この匂いが消えれば、君への想いも消えるのだろうか?
いや、きっと消えることは無い。
これからも、ずっと、君の影を追い続けるんだろう。
君の隣にいる未来、という幻想を抱いて。
……いつからだろう。
君の心とすれ違い始めたのは。
君を幸せにしたい。
そう思って頑張ってきた。
頑張ることが君を幸せにできると信じていた。
でも、それは俺の勝手な妄想だったんだ。
君は寂しそうに笑って、別れの言葉を口にした。
さよなら。
君は悪くない。
きっと、俺が悪かったんだ。
……いや、悪かった原因さえも見つけられない俺にとって、当然の結果だったんだろう。
やり直したいなんて言えないし、言わない。
だけど、これだけは伝えたかった。
聞いて欲しかった。
俺は君を世界で一番愛している。
今までも……。
そして、これからも。
終わり。