■概要
人数：５人以上
時間：10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、ホラー
■キャスト
政義（まさよし）
隆史（たかし）
男子生徒１～２
男性
女性
■台本
教室内。
男子生徒１「なあ、知ってるか？ 潰れたショッピングモールの話」
男子生徒２「あれだろ？ 幽霊が出るって話だろ？ あそこ、心霊スポットになってるって有名だぞ」
それを近くで聞いている政義。
政義「……へー」
隆史「政義。また変なこと考えてるでしょ？」
政義「変なことってなんだよ！ 隆史、俺は正しいことをしてるんだぞ」
隆史「いやいや。全然、正しくないでしょ。てか、政義も、迷惑な人の一人だよ、確実に」
政義「バカ言うな。俺は肝試しなんていうくだらない理由で、近所の人たちに迷惑をかけているやつをビビらせて、追い返してるだけだ」
隆史「いやいやいや。その発言の中でも、突っ込みどころが多くて、ため息しかでないよ」
政義「なんでだよ？」
隆史「１つ目。政義も廃墟に無許可で入ってるから、肝試しに来る人と一緒」
政義「うっ！」
隆史「２つ目。政義が脅かすから、来た人がもっと騒ぐ。これはさらに近所迷惑」
政義「うっ！」
隆史「３つ目。脅かすと、本当に出るって噂が立って、さらに人が来るようになる」
政義「ううっ！」
隆史「最後に。廃墟になってるところなんだから、政義にとっても危険だよ」
政義「なんだよ？ 心配してるのか？」
隆史「一応ね」
政義「一応ってなんだよ、一応って。……それより、隆史も行くか？ 面白いぞ」
隆史「行くわけないでしょ」
政義「なんだよ、つまんねーな」
隆史「ホントに止めなよ。やってることは肝試しより悪質なんだから。いつか痛い目見ても、知らないからね」
政義「はいはい。わかってますよー」
場面転換。
潰れたショッピングモール内。
政義「……なんて、ウソー！ こんな楽しいこと止められるかよ」
歩くと、床がミシミシと音を立てる。
政義「にしても、ホント古いな。確かに幽霊が出そうな雰囲気だ。で……問題は、どこで待ってるか、なんだよなぁ。入り口近くだと、さっさと逃げられるし、かといって、奥に行きすぎると、そこまで来ないかもしれないし……」
床のミシミシ音が大きくなっていく。
政義「逃げるときに引っかかるようなトラップも仕掛けたいな。落とし穴とか」
ミシミシ音がまた大きくなる。
政義「確か、ここって地下２階まであったんだよな。古いし、天井、ぶち破れば、すげー落とし穴作れるんじゃないか？ ま、何かあったら、それはそれでしゃーないってことで」
ミシミシ音が大きく、長くなる。
政義「どっかにハンマーとか落ちてねーかな……」
その時、バキバキバキと床が割れ始める。
政義「うわわっ！ ゆ、床が……崩れる！」
物凄い音が響く。
政義「うわああああ！」
場面展開。
政義「……はっ！」
起き上がる政義。
政義「ふう。危なかったな。危うく落ちるところだった。……って、もうこんな時間か。早く脅かす準備しねーと」
場面転換。
一組の男女がショッピングモール内を歩いている。
女性「ねえ、やっぱ、やめようよ。肝試しなんて」
男性「なんだよ。心霊写真撮りたいって言ったの、お前だろ。バズりたいとか言ってよぉ」
女性「そ、そうだけど……。なんか、ホントに出そうで……」
男性「ホントに出ないと、心霊写真撮れねーじゃねーかよ」
女性「そ、それはそうなんだけど……」
政義「ふ、ふふふふ……」
政義の声がショッピングモール内に響く。
女性「ひっ！」
男性「な、なんだ！？」
政義「いいよ。一緒に、撮ろ？」
女性「きゃああああああ！」
女性が走り出す。
男性「お、おい！ 置いてくなよー！」
男性も慌てて走り出す。
政義「アハハハハハ。すごい必死な形相。これだから、驚かすのは止められないな」
辺りが静まり返る。
政義「……うーん。今日はあの２人だけかな？ まあ、もう夏も終わりだからな―。肝試しする人が少なくなるのもしゃーないか」
そのとき、遠くから一人の足音が聞こえてくる。
政義「お！ 誰か来たな。……一人、か。いいね。凄い、度胸の奴だ」
足音が近づいてくる。
政義「くくく。度胸のあるやつに限って、ホントに怖い思いをしたときは、惨めな顔をするんだよな」
足音が近づいて来る。
政義「よし、ビビらせてやる。……恨めしい。……生きてる人間が、恨めしい……」
隆史「政義―、いるんでしょ？」
政義「あ、なんだよ、隆史か。……お前、来ないって言って、結局来てんじゃねーか」
隆史「……」
政義「なんだよ、怒るなよ。冗談だって。よし、一緒に驚かせてやろうぜ。一回、やると癖になるんだ」
隆史が歩き続ける。
政義「おい、隆史、奥に行くとあぶねーぞ」
隆史「政義、いるんでしょ？ 出て来なよ」
政義「いやいやいや。いるだろ、ここに！」
隆史「政義―。返事くらいしなよ」
政義「だーかーら！ ここだっての！ おーい！ 聞いてるか！？ ここだよ、ここ。……おーい！」
終わり。