■概要
人数:4人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
レナード
アドルフ
ジェシカ
化け物
■台本
レナード(N)「俺には今、ものすごく嫌いな奴がいる。あいつさえいなければ、どんなに清々しいか。あいつを消せるのなら、俺は悪魔とだって取引してもいい。それくらい嫌いな奴だ。だからと言って、俺があいつに対して犯罪をするのも嫌だ。あいつのせいで俺の人生が台無しになるのは許せない。だから、毎日、悶々として過ごしてきた。だが、ようやく訪れたのだ。あいつを始末するチャンスが」
洋館の中。
外からは雨とピシャンと雷が落ちる音が聞こえる。
アドルフ「くそ。なんだって、こんな場所にあんな化け物が現れるんだよ」
レナード「さあな。お前の普段の行いが悪いんじゃないか?」
ジェシカ「止めなよ、レナード。あんたの行いが悪くからかもしれないでしょ。っていうか、絶対、そうだよ」
レナード「ぐっ! そんなこと言うならジェシカだって……」
アドルフ「止めろって、二人とも。今はそんなことを言い合ってる場合じゃないだろ。この危機をどうやって切り抜けるかだ」
ジェシカ「そ、そうだよね。ごめんね、アドルフくん」
レナード「ちっ! いい恰好しいが」
アドルフ「いくら化け物だからって、なにか弱点はあるはずだ。それを見つければなんとかなるかもしれない」
レナード「誰がそんな弱点を見つけるってんだよ!」
アドルフ「……俺がいくさ。俺が言い出したんだからな」
ジェシカ「……アドルフくん、格好いい」
レナード「ふん。勝手にしろ。言っとくけど、お前が化け物に襲われても、俺は助けねえからな」
ジェシカ「ホント、あんたってサイテーね」
レナード「うるせー」
アドルフ「いや、いいんだ。もし、俺が襲われたとしても、その隙をついて二人は逃げてくれ」
ジェシカ「……アドルフくん」
レナード「ちっ!」
アドルフ「じゃあ、行ってくる」
アドルフが歩き出す。
レナード(N)「このままあいつを行かせれば、十中八九、あいつは死ぬだろう。だが、万が一ということもある。念のために、俺の策でダメ押しをしておこう」
レナード「アドルフ、ちょっと待ってくれ」
レナードがアドルフのところに走っていく。
アドルフ「どうしたんだ、レナード?」
レナード「いや、お前と話したくなってな。もしかしたら、これで最後になるかもしれないだろ? お前か俺が死んだとしたら」
アドルフ「……確かにな」
レナード(N)「俺の策というのは、こいつに死亡フラグを立てることだ。そうすれば、こいつが死ぬ確率が跳ね上がる」
レナード「そういえばアドルフ。お前、クレアとはどうなんだ? そろそろ結婚とかしないのか?」
アドルフ「ああ。クレアとは別れたんだ」
レナード「え? そうなの?」
アドルフ「まあ、な。それより、お前はどうなんだよ。エミリアとは?」
レナード「べ、別にあいつとはなんでもねーよ」
アドルフ「そんなんじゃ、他の男に取られるぞ。せめて気持ちを伝えたらどうなんだ? ……好きなんだろ? エミリアのこと」
レナード「……そうだな。もし、生きて帰ったら告白してみるよ」
アドルフ「ああ。俺も応援する」
レナード「ありがとう」
アドルフ「じゃあ、俺、そろそろ行くよ」
レナード「気を付けろよ……って、ん?」
アドルフ「どうした?」
レナード「いや、さっき、そこの窓のところに……」
アドルフ「奴か?」
レナード「いや、気のせいだな。多分、見間違いだ」
アドルフ「そうか」
そのとき、ガシャンと窓が割れる音。
化け物「ぐおおおおお!」
レナード「うわああ! 見間違いじゃなった!」
化け物「うがああああ!」
レナード「うわあああ!」
化け物に吹っ飛ばされるレナード。
アドルフ「レナード! くそっ!」
アドルフが化け物に体当たりする。
化け物「があっ!」
化け物が倒れる。
アドルフ「これでもくらえ!」
アドルフがライターを取り出し、化け物に目掛けて投げる。
化け物に火が付く。
化け物「うがああああ!」
再び、窓を割って外へ出る化け物。
アドルフ「はあ、はあ、はあ……。なんとか助かった」
レナード「う、うう……」
アドルフ「レナード、大丈夫か?」
レナード「へ、平気だ……」
アドルフ「おい、血が出てるぞ!」
レナード「これくらい、かすり傷だって。それよりお前は早く、あいつを追え。火を放ったんだから弱ってるかもしれない。止めを刺すなら、今だ」
アドルフ「けど、お前を置いていけないだろ」
レナード「少し休めばどうってことないって。あとで追いつくから、お前は先に行ってろ」
アドルフ「……わかった。無理はするなよ」
レナード「ああ。わかってるって」
アドルフ「じゃあな」
アドルフが歩き出す。
レナード「ふう。あんな化け物と戦うなんてまっぴらごめんだ。俺はどこか、安全な場所に隠れさせてもらうぜ」
レナードが歩き出す。
レナード「それにしても、さっき、あいつに付けられた傷、妙に痒いな。なんだろ?」
ポリポリと搔きながら歩く。
レナード「あ、ジェシカのこと忘れてた。……まあいいや。囮は多い方がいいからな。あいつが出たってことも知らせないで、俺は安全な場所を探して隠れないと」
足取りが重いまま歩くレナード。
レナード「お? ここ、キッチンか? ラッキー。なんか食べ物ねーかな」
ドアを開けて中に入るレナード。
冷蔵庫を開けてみる。
レナード「ちっ! 冷蔵庫は空か。他には何かないかな」
戸棚を開けて中を探すレナード。
レナード「おっ! 酒だ! よっしゃ!」
さっそく蓋を開けて飲もうとする。
レナード「……なんだよ、空かよ。なんもねーなら、キッチンなんかに用はねーな」
ドアを開けてキッチンから出て歩き始めるレナード。
レナード「はあ、はあ、はあ……。体が熱い。なんだ……?」
歩いているレナードが立ち止まる。
レナード「なんだ、この部屋?」
ドアを開けるレナード。
レナード「……研究所? もしかして、化け物はここで作られたのか?」
中に入り、机をガサガサと調べるレナード。
レナード「あ、あの化け物の研究書だ。えーと、なになに? ……まさか、あの化け物に、こんな弱点が……」
そのとき、ギイとドアが開く。
レナード「え? 誰だ?」
化け物「グルルルル……」
レナード「な、なんで、こっちにやってくるんだよ! あっちに……アドルフの方に行けよ!」
化け物「ぐおおおおお!」
レナード「うわあああああ!」
レナード(N)「なぜだ! なぜ、俺が襲われるんだ!? 死亡フラグはあいつの方に立っていたはずなのに!」
終わり。