■概要
人数:4人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、童話、コメディ
■キャスト
ジャック
イーサン
魔女
おっさん
■台本
ジャック「イーサン」
イーサン「なんでしょう、王子」
ジャック「世の中、不平等だと思わないか?」
イーサン「……王子という、身に余る身分のあんたが言う台詞じゃないと思いますが」
ジャック「世の中、女の方が得だと思う」
イーサン「何言ってるんですか、あんた?」
ジャック「ほら、よくあるじゃん。お姫様が眠ってたところを、王子がキスをして起こすってやつ」
イーサン「あー、ベタベタな展開のやつですね」
ジャック「あれ、羨ましいって思わね?」
イーサン「……またくだらないことを」
ジャック「俺もやってみたい」
イーサン「……あの、王子」
ジャック「ん?」
イーサン「世の中、そうそう眠ってるお姫様なんていないです」
ジャック「違う! そうじゃない!」
イーサン「というと?」
ジャック「お前さ、例えば、眠ってて俺のキスで起きたとなると、どう思う?」
イーサン「自害するか、あんたを始末しますね」
ジャック「だろ?」
イーサン「そこは、突っ込まないんだ」
ジャック「それはさ、お姫様も同じだと思うんだ。相手の嫌がることをするのはダメだろ?」
イーサン「その考え方は素晴らしいです」
ジャック「だから、俺が眠る方をやる」
イーサン「……何ってるんですか、あんた」
ジャック「だからさ、あっちにやってもらうってわけ」
イーサン「話が見えませんが?」
ジャック「いや、だからさ。俺がお姫様に起こしてもらうの」
イーサン「……」
ジャック「ほら、キスで起こす王子の方って、結構大変じゃん。そもそも、眠ってるお姫様を探さないといけないし」
イーサン「……それくらいは頑張れよ」
ジャック「だから、それをあっちにやってもらおうってわけ。眠ってる俺を、美女の王女がキスで起こしてくれるのを」
イーサン「なんで美女って限定してるのかがわからないのですが……。まあ、それを置いておくとして、やっぱり、こういうのは男の方が女性を迎える方がいいと思いますよ」
ジャック「古い!」
イーサン「は?」
ジャック「今の時代、男女平等だよ」
イーサン「……」
ジャック「ってわけで、俺は眠って待つ方になる」
イーサン「……一万歩譲って、眠る方をやるっていうのはいいですけど、どうやるんですか? 睡眠薬でも大量に飲みます? すぐに用意しますけど」
ジャック「それだと死ぬだろ!」
イーサン「いっそ、その方がいいと思いますが」
ジャック「ってわけで、魔女を呼んでおいた。入って来てくれ」
ガチャリとドアを開けて魔女が入ってくる。
魔女「はあ……。ワシは忙しいんじゃが、下らん理由で呼びつけないでくれんか」
イーサン「心中お察しします」
ジャック「てわけで、眠りにつく魔法をかけてくれ。もちろん、年を取らないやつな」
魔女「ったく。こんなのが王子だなんて、世も末だよ」
イーサン「まったくの同意です」
ジャック「じゃあな。数年後に会おう」
イーサン「……いえ、おそらく根性の別れだと思いますよ」
ジャック「はっはっはっは。んなわけねーって。すぐに美女の姫が俺を探し当ててくるよ」
魔女「はーーーーー!」
ジャック「うっ! ……がく」
イーサン「眠ったんですか?」
魔女「ああ。要望通り、キスされるまで起きない魔法じゃ」
ジャック「すーすー(寝息)」
イーサン「ありがとうございます。これで、王子の世話役を解放されました」
魔女「はははは。これで国もまともになるといいんじゃがのう」
場面転換。
ぶちゅうーっとキスする音が響く。
ジャック「はっ! ここは?」
おっさん「おお、ホントに起きた」
ジャック「ん? あれ? なんだ? 随分と部屋の中が荒れてるな」
おっさん「まあ、そりゃ、あんたが眠りについてから千年くらい経ってるって噂だからな」
ジャック「せ、千年……。その間、俺を起こしてくれる姫は現れなかったってことか?」
おっさん「眠ったままっていうなら、そうなんじゃないか?」
ジャック「それはそうと、俺を起こした姫はどこだ」
おっさん「ここ」
ジャック「どこ?」
おっさん「俺」
ジャック「は? いや、だって、お前、どう見たって、おっさんじゃん。姫じゃないじゃん」
おっさん「いや、キスすりゃ起きるって話だから、姫とか関係ないだろ」
ジャック「おい! なんで、おっさんが俺を起こすんだよ! 美人の姫だろ、ここは!?」
おっさん「知らないよ。んなこと言われても。俺は単に、今の国王がそろそろこの城が邪魔だから処分してほしいって頼まれただけだ。ってことで、ここ取り壊すから、あんたは出てってくれ」
ジャック「いや、俺、王子だけど……」
おっさん「はははは。いや、あんたが眠ってる間、千年経ってるんだぞ。王位継承の権利なんてあるわけねーだろ」
ジャック「……俺のファーストキッス奪われただけじゃなく、すべてを失ったってことか?」
おっさん「そうだな」
ジャック「こんなの不公平だ―! お姫様は幸せになれるのにー!」
おっさん「まさに自業自得だな」
ジャック「うわーん!」
終わり。