■概要
人数:3人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
和真(かずま)
武(たける)
信也(しんや)
■台本
教室内。
和真「……ついに来たな。この日が」
武「ああ。年一回の、俺たちが活躍できる日」
和真「……運動会」
武「明日はもう、女子の視線を独り占めしてやるぜ」
和真「菜々美ちゃん、しっかり俺を見ててね」
武「けどさ、一つ問題がある」
和真「なんだ?」
武「明日、雨かもしれねえ」
和真「うそ……だろ? おいおいおい。俺たち、明日がピークになるように体を作ってきたんだぞ。雨なんか降られたら……」
武「延期。最悪、中止だな」
和真「冗談じゃない! よし、今から俺んちで対策を立てるぞ!」
場面転換。
和真の部屋。
武「対策を立てるーなんて言ってたけど、天気なんかどうしようもなくね?」
和真「そんなにすぐ諦めるなよ。やれることやろうぜ」
武「やれることって?」
和真「えーっと、例えば……。あっ! 踊りを踊るとか?」
武「いや、それ、逆に雨降るように祈る儀式だから」
和真「そっか……。じゃあ、ブランコに乗って、靴を飛ばすとか?」
武「それ、天気予報」
和真「ううー。くそ。俺たちにできることはないのか……」
武「……あのさ、もっと有名で古典的な方法があるだろ。恥ずかしいけどさ」
和真「え? なに?」
武「……てるてる坊主」
和真「そ、その手があったか!」
武「……そこまで言うほどのことじゃないけどな」
和真「よし! じゃあ、さっそくてるてる坊主、作るぞ!」
場面転換。
てるてる坊主を作る二人。
武「……よし、こんなもんかな。そっちはどうだ?」
和真「え? 全然できてねー。てか、お前、早くね?」
武「いや、こんなの5分もあればできるだろ」
和真「いやいや、そんなんじゃできねーって」
武「……お前、どんなの作ってんだよ」
和真「まだ途中だけど、こんなの」
バッと自分のてるてる坊主を見せる和真。
武「リアル過ぎてキモイ!」
和真「ふっふっふ。どうよ。力作だろ?」
武「……まさか、お前にそんな才能があったなんてな。てか、マジで怖えよ、それ」
和真「朱莉ちゃん一号だ。これで、明日の天気はいただいたな」
武「名前付けないで。なんか、ホント、動き出しそう」
和真「よーし! 仕上げていくぜー!」
武「……俺的にはもう、それ以上作らないでほしいけどな」
場面転換。
武「よし、作ったてるてる坊主を紐でくくって……と。ん? どうした?」
和真「いやさー。紐でくくろうとしたんだけど」
武「おう」
和真「なんか、首吊ってるようにしか見えねんだよ」
武「……妙にリアルのを作るからだよ」
和真「これでも吊るした方がいいかな?」
武「……変な儀式に見えるから、やめた方がいいんじゃないか?」
和真「……だよな。どうしてこうなっちまったんだろ」
武「変に力作なんか作るからだって。しょうがねーから、俺のだけでも吊るすよ」
和真「すまんな」
場面転換。
武「これでよし、と。……って、おい、お前、なにやってんだよ」
和真「いや、どうせだから手足をつけてみたんだけど、どう?」
武「え? なんでそんなことしたの?」
和真「……なんとなく」
武「よけい怖くなったよ。てか、お前、これ、どうやって処分する気だ?」
和真「どうって……普通にごみ箱に捨てる気だけど」
武「やめろって。大騒ぎになるぞ」
和真「けどさ、一つだけって、あんま効果なさそうだよな」
武「ホントは2つになるはずだったんだけどな」
和真「明日は絶対、晴れて欲しいからな。数で勝負したいところだよな」
武「まあ、気持ちはわかるけど、また作るのか?」
和真「んー。けど、面倒くさいよなぁ」
武「……誠意が足りないな」
和真「あ、そうだ!」
ドタドタと部屋を出ていく和真。
武「……?」
場面転換。
和真「よし! できた!」
武「……」
和真「こんだけ吊るせば、効果あるだろ」
武「……なんだよ、これ」
和真「何って、フィギュアだよ。兄ちゃんの部屋にあったやつ」
武「そうじゃなくて……いや、それも問題だけど、よけいカオスな状態になっただろ、これ」
和真「そうか?」
武「……なんか、処刑場に見えるんだけど」
和真「気のせいだよ、気のせい」
武「……なんで、自分で作ったてるてる坊主は首吊りに見えて、フィギュアは見えないんだよ。フィギュアの方がよっぽどだろ」
和真「だから気にし過ぎだって」
そのとき、バンとドアが開く。
信也「なあ、俺のフィギュアどこに……」
和真「あ、兄ちゃん」
信也「俺のフィギュアになにやっとんじゃー!」
場面転換。
和真「くそー。本気で殴らなくてもいいのに」
武「……自業自得だと思うけど」
和真「ま、なんにしても、明日の天気はいただきだぜ!」
武「……そうか?」
場面転換。
目覚ましの音が響く。
和真「ふわー! どれどれ、今日の天気はどうかなー?」
シャーっとカーテンを開ける。
ザーッと土砂降りの雨と雷が鳴っている。
和真「なんでだーー!」
終わり。