誰か僕に構ってくれ
- 2023.05.07
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス
■キャスト
翼(つばさ)
和真(かずま)
教師
女子生徒1~2
男子生徒
■台本
翼(N)「僕は一人でいることが好きだ。人と合わせるのが嫌いだし、煩わしい。人と話さなくても生きていけるし、逆に人と話したりするといざこざになったりする。だから、僕は一人でいたいのだ」
教室内。
翼「……」
和真「なあ、翼。お前、もう部活とか決めた?」
翼「……うん」
和真「え? なになに? どこの部にしたんだ?」
翼「帰宅部」
和真「はあ? ……それって、どこにも入らないってことか?」
翼「まあ……そうだね」
和真「なんだよー。そんなのつまらないだろ。なんか部活は行った方が良いんじゃないのか?」
翼「……別に関係ないでしょ」
和真「……なんだよ、その態度。人がせっかく、話しかけてやったのに」
翼「……頼んでない」
和真「けっ! そうかい」
和真が立ち上がって行ってしまう。
翼(N)「いつもこうだ。僕は一人でいたいのに、勝手に話しかけてきたくせに、思った通りの反応をしないと怒る。本当に理不尽だ。しかも、なんで、話しかけてやってる、だよ。僕を下に見ている証拠だ。そんな人となんか、話すことなんて何もない」
場面転換。
廊下を歩く、翼。
そこに教師がやってくる。
教師「翼くん、ちょっといい?」
翼「……なんですか?」
教師「君、クラスでイジメられてたりしてない?」
翼「いえ、別に」
教師「そう……。あのね、先生思うんだけど、翼くん、もう少しみんなと仲良くしたらどうかな?」
翼「……」
教師「ほら、今日だって、まだみんな学校祭の準備やってるよ。手伝ってみたらどうかな?」
翼「強制じゃないですよね?」
教師「え? まあ、そうだけど……」
翼「失礼します……」
翼が歩き出す。
翼(N)「教師は僕を心配しているフリをして、いじめがあったら困るから、そうやって気を掛けているポーズを取ってるだけだ。そんなことはしなくていいから、話しかけないでほしい」
場面転換。
教室。
翼が教室から出ようとする。
和真「おい、翼。お前、ホームルームが終わったら、すぐ帰るけどさ。少しくらいは準備を手伝ったらどうなんだ?」
翼「……」
翼が教室のドアを開ける。
和真「なんだよ、無視しやがって!」
廊下を歩く翼。
女の子「ねえ、そんなに人と話すのが嫌い?」
翼「……なに、君?」
女の子「他人と関わらなくていい方法を教えてあげようか?」
翼「……何言ってるの?」
女の子「無理に話さなくていいわよ。私は勝手にその方法を言うだけ。それをやるかどうかは、あなたの自由」
翼「……なに?」
女の子「ふふ。聞く気になったのね。……それは……」
場面転換。
屋上。
ビュービューと風が吹いている。
翼「……人と関わらなくていい方法か。……馬鹿々々しい」
歩き出す翼。
だが、ピタリと足を止める。
翼「……」
場面転換。
休み時間。教室内は騒がしい。
翼「……」
和真「で、昨日さ、先生に……」
翼が立ち上がる。
翼「あ、あのさ……」
和真「あははは。そりゃ、お前、ダメだろ」
翼「……」
周りを見る翼。
女生徒1「どうせだったらさー、誰か誘わない?」
女生徒2「そうだね。男子とか誘ってみる?」
女生徒1「誰にする?」
翼「あ、あのさ。よかったら、僕……」
女生徒2「和真くんとかは?」
女生徒1「あ、いいかも」
翼「……」
場面転換。
教師が廊下を歩いている。
教師「……」
翼「あの、先生……。話があるんですけど」
教師「……」
スタスタと歩いていく教師。
翼「……」
場面転換。
ホームルーム。
教師「みんな、何かの係になってるわね? もし、まだ、なんの係にもなってない人がいたら、手を上げてよ」
翼「……はい」
教師「……うん。大丈夫みたいね。それじゃ、今日の放課後に……」
翼「……」
場面転換。
休み時間の教室。
周りは騒がしい。
翼「みんな! 聞いてよ! 僕が悪かった! だから、もう無視するのは止めてよ!」
騒がしさは変わらない。
だれも翼の話を聞いていない。
翼「……」
翼(N)「……一人でいることがこんなに辛いとは思わなかった。もう二度と、一人でいたいだなんて、思わない。だから……」
場面転換。
教師「みんな。明日から冬休みだけど、羽目を外し過ぎないようにね」
クラス「はーい」
場面転換。
静かな教室。
和真「……」
男子生徒「どうした? あいつの机なんて見て」
和真「いや、あいつも馬鹿なことしたなって思ってさ」
男子生徒「だよな。なんか悩みでもあったのかな?」
和真「もう少し、あいつと話してやればよかった」
男子生徒「お前のせいじゃないって。気にすんなよ」
和真「……ああ」
男子生徒「さ、行こうぜ」
和真「……じゃあな、翼」
場面転換。
翼(N)「……お願い。誰でもいい。誰か、僕に構ってくれ」
終わり。