決めポーズの秘密

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■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
漫画原作・実写ドラマ、現代、コメディ

■キャスト
碧斗(あおと) 8歳、17歳
蒼芭(あおば) 20歳
怪人
母親 38歳
拓弥(たくや) 17歳

■台本

 

〇町中
怪人たちが暴れている。
周りの人たちは悲鳴を上げ、逃げ惑う。
碧斗(8)はその様子をボーっと見ている。

母親「碧斗、何やってるの! 早く逃げるわよ!」
碧斗「う、うん……」
レッド「とう!」

ガオレイン(戦隊ヒーロー)の5人が空から降りてきて、着地する。

怪人「ふん! ようやく来たか! 今日こそ、決着を着けてやる」
母親「よかった。ガオレインが来てくれたわ。碧斗、もう大丈夫よ」
碧斗「うん……」

碧斗がジッとガオレインと怪人たちを見ている。

レッド「俺たちがやってきたからには、もうお前たちを暴れさせないぞ!」
怪人「ふふふ。そうかな?」
レッド「機人戦隊ガオレインっ!」

5人が決めポーズを取る。

母親「ふふ。格好いいわね、碧斗」
碧斗「……(ジッと見て)」

レッド「いくぞ! とう!」

ガオレインと怪人たちが戦い始める。

〇通学路
10年後。
碧斗と拓弥が歩いている。
碧斗と拓弥の格好は制服。

拓弥「……ふーん。で、それの何がおかしいんだよ? ガオレインが来てくれたから、お前だって怪我をしないで済んだんだろ?」
碧斗「それはそうなんだけどさ。ずーっと気になってたんだよ」
拓弥「なにがだよ?」
碧斗「ガオレインって来てくれた時に決めポーズを取るだろ?」
拓弥「ん? ああー、まあ、そうだな」
碧斗「あのときさ、なんで怪人は攻撃しないんだろうな」
拓弥「……は?」
碧斗「いや、だってさ。戦ってるんだぞ? お互い命をかけて。それなのに、あんな隙だらけのポーズを決めるなんて自殺行為だろ。怪人はあのとき、攻撃すれば勝てるんじゃないのか?」
拓弥「……お前、どっちの味方なんだよ。怪人の肩を持つのか?」
碧斗「そうじゃないって。ただ、気になっただけだよ」
拓弥「ふーん。けど、ああいうときって、攻撃しないってのがお約束だろ」
碧斗「……お約束、ね」
拓弥「なんだよ、納得してなさそうだな。けど、いいじゃん。それでガオレインが負けたらヤバいだろ」
碧斗「……」

〇町中
店から、袋を持って出てくる碧斗。
碧斗の服装は私服。

碧斗「……なんだよ、消費税25パーセントって。ぼったくり過ぎだろ」

レシートをグシャッと握りつぶす碧斗。
そこを後ろから話しかけられる。

蒼芭「国が決めたことだから仕方ないんじゃない?」
碧斗「うわっ、ビックリした」
蒼芭「ごめんなさい。驚かせちゃった?」
碧斗「……急に、なに? 独り言に反応されても困るんだけど」
蒼芭「あはは。そうだよね。でも、こうやって不満を言う人って珍しいなって思って」
碧斗「……」
蒼芭「ほら、普通ってさ、国が決めたことだからって何も考えないで受け入れる人が多いでしょ?」
碧斗「まあ、な。文句を言う方がおかしいって風潮だ」
蒼芭「だよね。でも、君は言っちゃうんだ?」
碧斗「俺にしてみれば、なんでみんな受け入れてるのかがわかんないよ。こんなに税金を取る意味あるのか?」
蒼芭「ほら、あれじゃない? 怪人が町を壊したりするし、それの修復するのにもお金がかかるし」
碧斗「いや、みんなさ、怪人ってだけで悪、みたいな風潮だけど……。実際、怪人が壊す建物って不要としてるものが多いんだよな。国が無駄に建てた建物とか、利権がらみのビルとか」
蒼芭「……」
碧斗「それに、国は修繕業者に委託するときに、かなりの金額を中抜きしてる。それで、税金を上げるって、やっぱりおかしいって」
蒼芭「……」
碧斗「……って、あんまりこんなことを言うと炎上しちまうかな?」
蒼芭「ねえ、君、ちょっと一緒に来てくれないかな?」
碧斗「……?」

〇ビル内
階段を降りていく碧斗と蒼芭。

碧斗「……こんな古いビルに何があるんだ?」
蒼芭「まあまあ」

階段を降りきると、そこには何もないただの壁がある。

碧斗「……行き止まり?」

蒼芭が壁に手をかざすと壁が光り始め、扉が出現する。

碧斗「え? これって……?」
蒼芭「ふふ。ビックリした?」

蒼芭がドアを開けて中に入る。
碧斗も後に続く。

〇扉の中。
広い倉庫のような空間。
そこには様々な怪人が立っている。

碧斗「うわあああ! 怪人っ!?」
怪人「おや? 蒼芭、新人かい?」
蒼芭「うん。なかなか有望そうな人よ」
碧斗「……」
怪人「悲鳴を上げないんだね」
碧斗「見た目に反して、あんたたちは無暗に人を傷つけないって知ってるから」
怪人「ふふっ。見た目に反して、か」
碧斗「あっ、その……すみません」
怪人「いやあ、いいんだよ。私たちは最初のイメージ戦略に失敗したんだよ。力でゴリ押しなんて、テロと何も変わらない。先代たちはそれを考えずにただただ、暴れまわった。主張もしないでね」
碧斗「そのせいで、怪人はただの無法者というイメージがついたんだよな」
怪人「この国の政治は腐っている。それを正したいだけだ」
碧斗「それなら、暴れずに選挙に出て、政治家になればいい」
怪人「本当に、それで変えれると思うかい?」
碧斗「……」
怪人「土台が腐ってしまった建物はいくら外観を取り繕っても修繕はできない」
碧斗「……」
怪人「人は有史以来、改革には武力を用いた。幕府、王朝、国。それらを倒すとき、話し合いで上手くいったときはあったかい?」
碧斗「でも……」
怪人「わかっている。その方法は市民にも被害が出る。武力に頼らない方法があれば、もちろん、それに飛びつくさ」
碧斗「……」
怪人「おっと。すまない。このような問答をするために君をここに連れてきたわけじゃない。そうだよな、蒼芭」
蒼芭「うん。……君は若いのに視野が広い。私たちの活動に参加してみない?」
碧斗「……参加?」
蒼芭「無理強いはしないよ。戦いだって、強制はしない。ただ、正しい視点で見てくれる人が、私たちには必要だと思う」
碧斗「……わかった。入ろう」

時間経過。

碧斗の手首にはブレスレットが巻かれている。
突然、碧斗の身体が光り、戦闘員の格好になる。

碧斗「おお! 変身した!?」
蒼芭「ガオレインが変身できる技術を持ってるんだもん。私たちだって、当然、それくらいの技術はあるよ。変身してるときは、君の力は10倍以上になってるからね。気を付けて」
碧斗「……」

〇町中
怪人たちが現れ、人々が逃げ惑っている。
碧斗は戦闘員の格好のまま。

怪人「いきなり、参加してくれるとは思わなかったよ」
碧斗「実は試したいことがあって……」
怪人「試したいこと?」

そのとき、上空から、レッドたちが降りたつ。

レッド「俺たちがやってきたからには、もうお前たちを暴れさせないぞ!」
碧斗「……あっ」
レッド「機人戦隊ガオレインっ!」

ガオレインたちが決めポーズを決める。

碧斗「隙ありー!」
怪人「むっ!? い、いかん! 待つんだ!」
碧斗「はああああああ!」

碧斗がポーズを決めているガオレインに向って行く。
碧斗が隙だらけのレッドに殴りかかる。

レッド「はっ!」
碧斗「ぐがっ!!」

カウンターを腹に食らい、吹っ飛ぶ碧斗。

碧斗「あ、う……」

倒れている碧斗のところに蒼芭がやってくる。

蒼芭「……もしかして、君。決めポーズのときになんで怪人たちは攻撃しないんだろうとか思った?」
碧斗「……」
蒼芭「あれね。わざと隙を見せて、カウンターを狙ってるんだよ。隙を狙って、焦って攻撃するから単調で雑な動きになるからね。あっちからしたら絶好のカウンターチャンスってわけ」
碧斗「……ま、まさか」
蒼芭「昔は結構、それに引っかかってやられる怪人が多かったんだけどね。今は警戒して、ポーズを取り終わるまで待ってるんだよ。……ごめん、言っておけばよかったね」
碧斗「……そ、そんな秘密が。……ガクッ」

碧斗が気絶する。
向こうではガオレインと怪人たちの戦いが始まっている。

終わり。

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