泣き上戸

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■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
理人(りと)
賢人(けんと)
子供
クラスメイト1~3

■台本

理人(N)「僕のクラスに不良の、賢人君という人がいる。凄く乱暴で、先生の言うことも全く聞かないから、問題児って言われいるのだ」

場面転換。
ザクザクと穴を掘る音。

子供「……」
賢人「おい、ガキ。こんなところで穴なんて掘ってなにするつもりだ?」
子供「……ピーちゃんが」
賢人「ピーちゃん? なんだ、そりゃ?」
子供「僕のお友達だったのに……死んじゃったんだ」
賢人「……そのインコか?」
子供「……」
賢人「おら、スコップ貸せ」
子供「え?」
賢人「チマチマ掘ってたら日が暮れるだろうが」
子供「あ、ありがとう……」

賢人がザクザクと穴を掘っていく。

賢人「……小動物なんてよ、すぐ死ぬもんだ。男なら、ぐじぐじ泣いてんじゃねーぞ」
子供「でもね。ピーちゃんは僕がイジメられて泣いてるときに、すり寄って慰めてくれたんだ」
賢人「……」
子供「外で一緒に遊んでても、逃げないで、ちゃんと戻って来てくれたの。ピーちゃんはね、家族だったんだ……」
賢人「う、うう……」
子供「お兄ちゃん?」
賢人「うおおおおお!」
子供「な、なんで、お兄ちゃんが泣くの?」
賢人「バカ野郎、泣いてねえよー!」
子供「……」
賢人「お前、イジメられてるのか?」
子供「え? あ、うん」
賢人「特訓するぞ」
子供「え?」
賢人「お前がイジメられてたら、ピーちゃんが安心してあの世に行けねーだろうが!」
子供「う、うん。そうだね」
賢人「ビシビシ行くからな。覚悟しろよ」

場面転換。
放課後の教室内。
ガラガラとドアが開く音。

賢人「……ん? なんだ、お前。一人でボーっとしやがって」
クラスメイト1「あ、いや、その……」
賢人「けっ! 辛気臭ぇ顔しやがって。お前みたいなやつを見てたら、こっちまで気分が重くなっちまうぜ」
クラスメイト1「ご、ごめん……」
賢人「ま、勝手にウジウジしてろ」
クラスメイト1「……彼女にフラれたんだ」
賢人「あん?」
クラスメイト1「ずっと好きで、頑張って告白して、それで付き合うことになったんだ」
賢人「……」
クラスメイト1「本当に好きだったんだ。彼女に嫌われないように頑張ったんだ。でも……好きな人ができたって……」
賢人「うう……」
クラスメイト1「え? 賢人くん?」
賢人「うおおおおおおおお!」
クラスメイト1「ど、どうして賢人くんが泣くの?」
賢人「バカ野郎! 泣いてねえよ!」
クラスメイト1「……そ、そうだよね」
賢人「……おい。ちょっと俺に付き合え」
クラスメイト1「え? どこに?」
賢人「バカ野郎! こういうときはパッと遊ぶんだよ! ウジウジ考える暇がないくらいにな」
クラスメイト1「……」
賢人「で、そのあとは自分磨きだ」
クラスメイト1「自分磨き?」
賢人「フラれっぱなしなんて、悔しいだろうがよ! いい男になって、見返すんだよ! いいな!?」
クラスメイト1「う、うん……」
賢人「よし、行くぞ」

場面転換。
放課後の教室。
ガラガラとドアが開く。

クラスメイト2「あ、賢人くん。いた」
賢人「あん?」
クラスメイト2「あ、あの……相談があるんだけど」
賢人「はあ? なんで、俺がお前の相談なんかうけねーとなんねーんだよ」

場面転換※時間経過。

賢人「うおおおおおおおお!」
クラスメイト2「賢人くん、何も泣かなくても……」
賢人「バカ野郎! 泣いてなんかねえよ!」
クラスメイト2「ご、ごめん……」
賢人「おら、行くぞ」
クラスメイト2「え? 仕返しだよ、仕返し。仕方ねえから一緒に行ってやるってんだよ!」
クラスメイト2「あ、ありがとう」

場面転換。
放課後の教室。
ガラガラとドアが開く。

クラスメイト3「あー! 賢人くんいたぁ!」
賢人「ああ? なんなんだよ、うるせーな」
クラスメイト3「ねえ、ちょっと聞いてよー!」
賢人「なんなんだよ!」

場面転換※時間経過。

クラスメイト3「ね? 酷いと思わない?」
賢人「……うおおおおおおおお!」
クラスメイト3「わわわ! そこまで泣かなくても!」
賢人「泣いてねえよ!」
クラスメイト3「そ、そうだよね……」
賢人「おらあ! 行くぞ! ついて来い!」
クラスメイト3「う、うん!」

理人(N)「こうして、賢人くんはいつの間にか、クラスの相談役になってしまった。連日、クラスのみんなが代わる代わる賢人くんのところにやってくる。……そして、僕も、賢人くんに相談することにした」

場面転換
ガラガラとドアを開く音。

理人「あ、賢人くん。いたいた」
賢人「あん?」
理人「あのさ、僕の悩みを聞いてくれないかな?」
賢人「は? 面倒くせーよ」
理人「あ、あのね。僕……ネットで好きな人が出来たんだ」
賢人「……」
理人「僕、その人が凄く好きで、配信の日は絶対に見るようにしてたんだよね」
賢人「……で?」
理人「投銭もたくさんしたんだ。振り向いてもらうために。お小遣いが足りない時は、お母さんのクレジットカードから出してたんだ」
賢人「……」
理人「そこまでしたのに……。好きだって態度で示してたのに……。その子、好きな人ができたって言って、配信を辞めちゃったんだ」
賢人「……」

理人(N)「……そろそろ泣く頃だ。賢人くんは泣いてから、動いてくれる。きっと、その子を探すぞって言ってくれるはずだ。賢人くんの人脈があれば、きっと探せるはずだ」

賢人「……で?」
理人「え?」
賢人「俺に何させたいんだ?」
理人「え、えっと、その子を一緒に探して欲しいんだけど……」
賢人「ヤダよ」
理人「……」

立ち上がって、教室を出て行く賢人。

理人「えええええー! なんでー! どうして、僕の悩みには泣いてくれないのー!?」

終わり。

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