あの空の向こうへ

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■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
漫画原作・実写ドラマ、ファンタジー、シリアス

■キャスト
マシュー 16歳
レイラ 16歳
ディラン 16歳
マテオ 16歳
ネイサン 16歳
イアン 42歳

■台本

〇ジャンク山
多くのジャンク(機械類。蒸気船や汽車、織物機など)が積み上げられている。
その中で、マシューが部品を抜いている。
マシューの額にはサングラスがかけられている。

マシュー「お! ラッキー。デルタ社のトランジェスタだ」

そこにディラン、マテオ、ネイサンが現れる。

ディラン「おい! マシュー!」
マシュー「げっ! 3馬鹿……」
マテオ「誰が3馬鹿だ!」
ネイサン「お前、誰に断って、ジャンク山に入ってんだよ?」
マシュー「別にお前らのものじゃないだろ」
ディラン「うるせー! 部品抜くなら、金払え」
マシュー「元々は不法投棄されたものだ。それを再利用したって、誰も困らないだろ」
ディラン「黙れ! 金寄越せ!」
マシュー「結局それか」

マシューがジャンク山を器用に走って、逃げていく。

ディラン「あ、てめえ! 待てー!」

マシューが逃げていると、太陽の光が目に入り、眩しそうにする。
マシューが額のサングラスをかける。
これで眩しくない。
ニヤッと笑い、走っていく。

〇マシューの個人工場
マシューが飛行機を弄っている。

マシュー「よし、これで取り付け終わり。あとはうまく動くかどうかだな……」
レイラ「マシュー! マシュー!」
マシュー「ん? ああ、レイラか。どうした?」

レイラの頬には小さな青痣がついている。
レイラがズンズンやってきて、マシューの頬を引っ張る。

マシュー「いてて! なにすんだよ!?」
レイラ「今日、映画見に行くって言ってたでしょ!」
マシュー「……あっ!」
レイラ「あ、じゃない!」

〇海沿いの道
自転車で走るマシューとその後ろにマシューに抱き着くようにして乗っているレイラ。

マシュー「どうだ? 風が気持ちいいだろ?」
レイラ「そんなんで、帳消しになると思ってないでしょうね?」
マシュー「わかってるって。今度、埋め合わせするから」
レイラ「その埋め合わせが映画だったんだけど」
マシュー「うっ!」

レイラが空をちらりと見る。
空には気球が浮いている。

レイラ「ねえ、マシュー」
マシュー「なんだ?」
レイラ「なんで、気球じゃダメなの?」
マシュー「あれは爽快さが足りない」
レイラ「そんな理由なの?」
マシュー「大体、気球なんて、俺たちが乗れるもんじゃないだろ?」
レイラ「そうだね」

マシューが遠くの空を見る。

マシュー「……行ってみたいんだよ」
レイラ「え?」

マシューがチラリと振り向き、レイラの頬の青痣を見る。

マシュー「あの空の向こうにはさ、きっと、俺たちを傷つける人間がいない世界があるんだ」
レイラ「……そうだね」

レイラがマシューの背中に額を当てる。
その目からは涙がこぼれ落ちる。

マシューとレイラが自転車を乗っているのを見かけるイアン。

イアン「……(レイラを睨んで)」

〇道(夕方)
マシューの自転車からレイラが降りる。

レイラ「じゃあね、マシュー」
マシュー「ああ。……映画の埋め合わせは絶対するから」
レイラ「……うん」
マシュー「じゃあな」
レイラ「うん」

マシューが自転車を漕いでいく。
その後ろ姿をジッと見るレイラ。

〇レイラの家
ドアを開けて家の中に入ってくるレイラ。
そこには酒を飲んでいるイアンがいる。

レイラ「……ただいま」
イアン「どこに行ってたんだ?」
レイラ「別に。仕事……探してたの」
イアン「……あんな、ガキをたらしこんでも、金にならんだろ」
レイラ「……」
イアン「お前も、もうすぐ16だろ?」

イアンがレイラの体を見る。

イアン「そろそろ、体を売る仕事ができるんじゃないか?」
レイラ「……」

顔を伏せて、部屋に入ろうとする。
しかし、イアンに腕をつかまれる。

レイラ「っ!?」
イアン「まず、俺が味見してやるよ」

イアンがレイラを押し倒す。

レイラ「やめて!」
イアン「うるせえぞ!」

レイラの頬を叩くイアン。
レイラの服を破るイアン。

レイラ「いやーーーー!」

必死に抵抗するレイラ。

〇マシューの個人工場
マシューが飛行機を弄っている。

マシュー「……よし」

そこに、レイラが駆け込んでくる。

レイラ「マシュー!」
マシュー「……レイラ」

レイラの服はボロボロで、ベットリと血が付いている。

レイラ「マシュー。私……」
マシュー「……何も言うな」

マシューがレイラを抱きしめる。

〇同 ※時間経過(早朝)
マシューとレイラが一緒に毛布に包まっている。
レイラはマシューの肩に寄りかかって寝ている。
太陽の光が工場内に入ってくる。
レイラが起きる。

マシュー「おはよう」
レイラ「……おはよう」

レイラが太陽を見る。

レイラ「きれいだね」
マシュー「そうだな」

レイラが立ち上がる。

レイラ「じゃあ、そろそろ行くね」

マシューも立ち上がり、レイラの腕を掴む。

マシュー「なあ、レイラ。一緒に行かないか?」
レイラ「え?」

マシューが飛行機を見る。
レイラがゆっくりと頷く。

〇飛行機内
マシューが運転席に、レイラが後部座席にいる。

マシュー「レイラ」

マシューがレイラにサングラスを渡す。

レイラ「?」

レイラがサングラスを受け取る。

マシューがエンジンをかける。
プロペラが回り始める。

マシュー「いくぞ」

飛行機が動き始める。
加速して、空を飛び始める。

〇空
飛行機が飛んでいる。

レイラ「すごーい! ホントに飛んでる」
マシュー「飛ばすぞ」
レイラ「うん」

太陽の光がレイラを照らす。
レイラが眩しそうな顔をして、ハッとする。
マシューから受け取ったサングラスをかける。
マシューがにやりと笑う。

飛行機が勢いを増して、飛んでいく。

終わり。

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