ヤンデレの彼女

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■概要
人数:3人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
斗亜(とあ)
杏璃(あんり)
愛華(まなか)

■台本

斗亜(N)「俺には付き合っている彼女がいる。その彼女は結構美人で、明るくて、性格もいい。だけど、一つだけ、欠点があるのだ。……とても大きい、欠点が」

道を歩く、斗亜と杏璃。

杏璃「ねえ、斗亜! 今度の土曜日なんだけど、デートしない?」
斗亜「お、いいね! どこに行く?」
杏璃「そうだなぁ……。斗亜と、いーっぱい、イチャイチャできるところがいいかな」
斗亜「あははは。そういうことはあまり、外で言うなよ」
杏璃「えー! なんでなんで? 私はこーんなに斗亜のこと、好きなんだよ?」
斗亜「俺だって、杏璃のこと好きだよ。でもさ、あんまりそういうことしてると、周りからバカップルって思われるだろ?」
杏璃「いいじゃん、別に思われちゃっても」
斗亜「そうかぁ? 俺は恥ずかしいけどな」
杏璃「もう、恥ずかしいってなによー。私とイチャイチャするのが恥ずかしいの?」
斗亜「いや、そういうことじゃなくて……。それより、土曜はどこに行くか決めないと。あんまりお金がかからないところがいいな」
杏璃「……そうね(急に暗いトーンで)」
斗亜「……(何かを察して)」

杏璃の声のトーンがここから病んだ感じになる。

杏璃「……二人でイチャイチャできて……誰にも見られなくて……お金がかからないところ」
斗亜「(ごくりと唾を飲み込む)……」
杏璃「天国は、どう?」

シャキーンとナイフを出す音。

斗亜「うわあ! どこでスイッチ入ったんだよ!」

逃げ出す斗亜。

杏璃「ねえ、お願い! 一緒に行こ! 天国! 私、斗亜となら、喜んで行けるよ?」
斗亜「待て待て待て! 行ったら帰れなくなるだろうが」
杏璃「いいじゃない! ね? ね? ね?」

ヒュンヒュンとナイフを振り回す音。

斗亜「それに、デートは土曜のはずだろー」

全力で奪取する斗亜。

斗亜(N)「そう。俺の彼女は、少しだけヤンデレ気質があるのだ」

場面転換。
愛華と歩いている斗亜。

愛華「なるほどねー。まあ、確かに杏璃は昔から、そういうところあったかなぁ」
斗亜「幼馴染として、どうにかできんか?」
愛華「そう言われてもなー。ま、斗亜くんが浮気とかしなければいいんじゃないの?」
斗亜「もちろん、浮気とかする気はねーよ。でもさ、普通にデートの話をしてただけで殺されそうになるのは、どう考えてもヤバいだろ」
愛華「あははは。大げさだなー。それは杏璃の愛情表現だよ」
斗亜「愛情表現で殺されたらたまったもんじゃないって話だっての」
愛華「違う違う。一緒に死んでって言うのが、愛情表現で、殺そうとするのはポーズだよ、ポーズ」
斗亜「そうかぁ? 目が真剣そのものだぞ?」
愛華「まだまだ甘いなぁ、斗亜くんは」
斗亜「……」

そのとき、杏璃が現れる。

杏璃「あ、斗亜。今帰り? 一緒に帰ろうよ」
斗亜「うおっ! 杏璃! あー、いやこれは……」
愛華「あははは。じゃあ、私は邪魔みたいだね。それじゃ、また明日ね」
斗亜「え? あ……」
杏璃「うん。バイバイ、愛華」

愛華が行ってしまう。

斗亜「……」
杏璃「どうしたの? 行こ?」
斗亜「……あ、ああ」

2人が歩き出す。

斗亜「……」
杏璃「……ねえ、斗亜」
斗亜「え? あ、いや、別に愛華とは……」
杏璃「愛華? 愛華がどうかしたの?」
斗亜「いや、なんでもない!」
杏璃「ねえ、斗亜。今日、うちに寄っていかない?」
斗亜「え? あー、いや……」
杏璃「(少し威圧的に)なんか用事あるの?」
斗亜「な、ないよ」
杏璃「じゃあいこ?」
斗亜「あ、ああ……」

場面転換。
杏璃の部屋。

斗亜「……」
杏璃「……なんか、今日、おかしくない?」
斗亜「そ、そんなことないよ」
杏璃「……そう? 元気ないよ」
斗亜「あー、いや、実は昨日、寝てなくて、寝不足なんだよ。ははは……」

杏璃の声のトーンがここから病んだ感じになる。

杏璃「ふーん……」
斗亜「……」
杏璃「ねえ、斗亜」
斗亜「な、なんだ?」
杏璃「……一緒に、寝よっか」
斗亜「へ?」

ガサガサとポケットを漁る杏璃。

杏璃「これ、飲んで、一緒に寝よ?」
斗亜「ま、まさか、それって……」
杏璃「これを飲んだら、ぐっすり寝れるよ?」
斗亜「……永久に寝ることにならないか?」
杏璃「何言ってるのよ。ほら!」

ガバっと斗亜を押し倒す、杏璃。

斗亜「ひい!」
杏璃「一緒に眠りましょ……」
斗亜「うわーーー!」

場面転換。

杏璃「すーすー……(寝息)」
斗亜「……あれ? 普通に寝てる? じゃあ、これって……」

斗亜が杏璃の出したものを拾い上げる。

斗亜「……睡眠導入剤か」

回想。
愛華「あははは。大げさだなー。それは杏璃の愛情表現だよ」
愛華「違う違う。一緒に死んでって言うのが、愛情表現で、殺そうとするのはポーズだよ、ポーズ」
愛華「まだまだ甘いなぁ、斗亜くんは」

回想終わり。

斗亜「……なるほどな」

斗亜(N)「俺の彼女は結構美人で、明るくて、性格もいい。だけど、一つだけ、欠点がある。それは少し、病んでるところだ。だが、そこを含めて、俺は彼女である杏璃のことが好きなのだ」

終わり。

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