シーソーの攻防戦

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■概要
人数:2人※4人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
修二(しゅうじ) 17歳、5歳
明日香(あすか) 17歳、5歳

■台本

修二(N)「今はめっきり見なくなったが、昔は公園にシーソーという遊具があったのは知ってるだろうか? 細長い板があって、その真ん中に支点となるものがあるという遊具。両端に子供が乗ると、重い方に傾くという、あれだ。そして、俺は……シーソーが大嫌いだった」

修二と明日香が5歳の頃。

明日香「修二―! シーソーやろー」
修二「うん、いいよ」

明日香「よいっしょっと」
修二「よっと」

ガタンというシーソーが傾く音。

修二「わわっ!」
明日香「……」

明日香が急に降りると、シーソーが修二の方に勢いよく傾く。

修二「いたい! もう、明日香ちゃん。急にシーソーから降りないでよー」
明日香「うるさいわね!」

※ここの修二の声は17歳の声。
修二(N)「そう。俺はいつも、公園で明日香にシーソーに乗ろうと誘われて、そのたびにキレられていた」

修二と明日香は変わらず5歳。

明日香「修二、シーソー乗るわよ」
修二「……う、うん」

2人がシーソーに乗り、明日香の方へ傾く。

明日香「……」
修二「……」
明日香「ふん!」

明日香がシーソーを降りると勢いよく修二の方へ傾く。

修二「うわ! もう! だから、急に降りないでよ!」

明日香が修二のところへやってくる。

明日香「馬鹿!」

バチンと修二の頬を叩く明日香。

修二「え? どうして?」

場面転換。
明日香と修二が公園のベンチに座っている。
明日香のお腹がグーっと鳴る。

明日香「……お腹減った」
修二「え? お昼ご飯は? 食べたんじゃないの?」
明日香「少ししか食べてない」
修二「ええ? どうして? 嫌いなものだったとか?」
明日香「あんたのせいよ!」
修二「……なんで?」
明日香「とにかく、シーソーに乗るわよ」
修二「いや、いいよ。シーソー飽きた……」
明日香「いいから、早く」
修二「う、うん……」

修二と明日香がシーソーのところへ行く。

明日香「じゃあ、いっせーの、で乗るわよ」
修二「う、うん」
明日香「いっせーの、せ!」

2人が同時にシーソーに乗り、明日香の方へ倒れる。

明日香「……」
修二「……」
明日香「……うえーーん」
修二「どうして泣くの?」

場面転換。※12年後。
真夏。セミの鳴く声が響く。
制服姿の修二と明日香が並んで歩く。
修二は公園の方をじっと見ている。

修二(N)「懐かしいな。……あれから、すぐにあの公園からシーソーが撤去されたんだっけ」

明日香「修二、どうしたの? ぼーっとして」
修二「あ、いや、公園でよく2人で遊んだよなーって」
明日香「そうね。……あ、あの公園、シーソーあるよ」
修二「え?」
明日香「……ちょっと、寄ってこうか?」
修二「いや、どうだろう?」
明日香「いいから、行くわよ」
修二「……はいはい」

場面転換。
シーソーの前。

明日香「シーソーね」
修二「シーソーだな……」
明日香「……乗ってみる?」
修二「いやあ、どうだろ?」
明日香「乗るわよ」
修二「けどよぉ……」
明日香「大丈夫よ。大丈夫。あの頃とは違うわ」
修二「……」
明日香「ほら、あっち乗る!」
修二「わ、わかったよ」

2人が互いにシーソーの端の方に立つ。

明日香「じゃあ、乗るわよ。せーの!」

2人がシーソーに乗る。

明日香「……やった! やったわ! 釣り合ってる! 私の方に倒れない!」
修二「お、おう……」
明日香「……」
修二「どうした? 急にテンション下げて」
明日香「考えてみたら、釣り合うって、それほど嬉しくないっていうか、悲しいことじゃない?」
修二「そ、そんなことないだろ……」
明日香「そんなことある! どうせなら、修二の方に傾かせたいわ!」
修二「……」

場面転換。
セミの鳴く声。
明日香がマラソンしている。

明日香「は、は、は、は……」
修二「おーい、明日香。そろそろ、水分補給しろよ」
明日香「うん。わかった」

明日香が修二のもとへやってくる。

修二「ほら、水」
明日香「ありがと(水を飲む)。ぷはー。美味しい」

そのとき、明日香の腹がぐうと鳴る。

修二「お前、まさか、飯抜いてるんじゃないだろうな?」
明日香「へ、減らしてるだけよ」
修二「……抜くのはやめろよ。無理したら体に良くないからな」
明日香「……そういう修二こそ、顔色悪いわよ」
修二「いや、俺のは夏バテだ」
明日香「ふーん。……よし、休憩終わり。また走ってくるわ」
修二「ほどほどにな」
明日香「うん」

明日香が走り出す。

場面転換。
公園。明日香が体幹トレーニングをしている。

明日香「ううー。無理無理無理!」

ずさーっと倒れこむ。

明日香「あー、もう限界」
修二「なにやってるんだ?」
明日香「体幹トレーニングよ。すっごい効くんだから」
修二「へー」
明日香「結果だって出てるんだから。ちょっと、こっち来なさいよ」
修二「なんだよ?」

明日香と修二が歩いて、シーソーの方へ行く。

修二「シーソー……」
明日香「ふふふ。今日こそ、あんたに勝ってみせるから!」
修二「いや、シーソーに勝ち負けないだろ」
明日香「じゃあ、いくわよ! えい!」

明日香と修二が同時にシーソーに乗る。
ガタンと傾く音。

修二「……」
明日香「……」
修二「……もしかして、お前。太った?」
明日香「あんたが痩せたのよ!」

修二(N)「そういえば、夏バテで、最近全然巣食欲がなかった……」

明日香「もう、馬鹿―! うわーん。なんなのよ、あんたー!」
修二「……」

修二(N)「これだから俺は、シーソーが大嫌いなんだよ」

終わり。

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