裏切りのご褒美

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■概要
人数:5人以上
時間:15分

■ジャンル
漫画原作、現代、コメディ

■キャスト
彰浩(あきひろ) 17歳
愛華(あいか)  17歳
太一(たいち) 17歳
礼司(れいじ) 17歳
恭介(きょうすけ) 19歳
不良1~2
男子生徒

■台本

〇路地裏

不良1と2が男子生徒に凄んでいる。

不良1「おう、こんなんで足りるわけねーだろ」

不良2「いいから、財布の中身全部出せよ」

男子生徒「う、うう……」

男子生徒がポケットから、財布を取り出す。

不良1「けっ! さっさと出せってんだ」

不良1が男子生徒から財布を奪い取る。

と同時に後ろから人影(愛華)が。

愛華「……おい、なにやってんだ?」

不良1「げっ! あ、愛華さん」

愛華の後ろには太一が付き添っている。

愛華が有無を言わさず、不良1の腹を殴り、不良2をハイキックで倒す。

不良1・2「うがっ!」

不良1と不良2が倒れる。

愛華「カツアゲはご法度だって言ったよな?」

不良1「う、うう……」

愛華が不良1の手から財布を奪う。

そして、男子生徒に返す。

愛華「すまんな。あとで、よく言っておくから、許してやってくれ」

男子生徒「は、はい……」

愛華から奪うようにして財布を受け取ると、走って逃げる男子生徒。

愛華「……」

それを遠くからじっと見ている彰浩。

〇学校内・廊下

不良1「くそ。カツアゲ禁止なんて舐めてんのか!」

不良2「そのせいで小遣い減ったよな。実際」

そこに、彰浩がやってくる。

彰浩「聞いたぜ。愛華にこっぴどくやられたんだってな」

不良1「あ、彰浩さん、ちっす」

彰浩「……なあ。ムカつかねーか?」

不良2「え? あ、いや、俺は……」

彰浩「女がトップなんて、周りから示しがつかねーと思わねーか?」

不良1「な、なに言ってんすか。彰浩さん、愛華さんの右腕じゃないっすか」

彰浩「……いつまでも使われっぱなしじゃやってらんねーんだよな」

不良2「……どうしたらいいんすか?」

彰浩「んー。そうだな。愛華のことを裏切ってくれそうなやつを集めてくれ。……こっちの動きがバレると怖いからな。確実に裏切るやつだけを集めろ」

不良1「うっす……」

彰浩「よし、頼んだぞ」

不良1と不良2が行ってしまう。

彰浩「……お前も乗るか?」

そういうと陰から礼司が出てくる。

礼司「はは。俺はナンバー2で愛華さんの頭脳って言われてるんですよ。乗ると思います?」

彰浩「別に乗らねーならいいよ。先に、俺がトップ取っちまうから」

礼司「……作戦は?」

彰浩「お前がどのくらい、兵士持ってるのかによる」

礼司「……俺をトップにしてくれるなら、情報は全部出す」

彰浩「いいぜ。俺は今の体制さえ変えられれば、それでいいんだ」

礼司「……うちから20。南から50。東から30出せる」

彰浩「それだけいれば十分だ」

礼司「あとは愛華をどう、他の奴らと分断するか、だな」

彰浩「そこは俺に任せろ」

礼司「……信用していいのか?」

彰浩「失敗したら、そのまま見捨てればいいさ」

礼司「わかった」

〇学校・中庭

愛華と彰浩と太一が立っている。

愛華「決起集会? なんだそりゃ」

彰浩「お前は、最近、引き締め過ぎだ。下から随分と文句が出てきてる」

愛華「……」

太一「最初にルールは伝えているはずだ。従えないなら、うちから出ていけばいい」

彰浩「そんなんじゃ、誰もついて来なくなるぞ」

太一「いらんだろ。ルールも守れんようなクズは」

彰浩「まあ、それでいいなら、いいけどよ。愛華が一言掛ければ、指揮が上がる。やるだけやっておいて損はないんじゃないか?」

愛華「……」

太一「愛華。乗る必要はない。気にするな」

愛華「いや、彰浩がそういうなら、やるさ」

太一「……随分とこいつを信用するんだな。また裏切られたらどうするんだ?」

愛華「そんときはぶっ飛ばす。いいよな?」

彰浩「ご自由に」

愛華「じゃあ、今日の8時に、そこに行けばいいんだな?」

彰浩「ああ」

愛華「わかった。必ず行くから、みんなを集めておけ」

太一「……」

愛華と太一が歩き去っていく。

彰浩「……」

陰から礼司が出てくる。

礼司「うまくいきそうだな」

彰浩「ああ。人を集めておいてくれ。俺の方の人間も、すでに手配しているから、現場で連携取れるようにしてくれ」

礼司「わかった」

彰浩がポケットから携帯を出して掛ける。

礼司「……どこにかけてるんだ?」

彰浩「念のために、な」

〇学校・体育館内

大勢の不良たちが集まっている。

教壇上に愛華と太一が歩いてくる。

愛華「あー、今日は集まってもらったのは、最近、たるんでるやつが多いから、気合を入れ直そうって会だ。だから……」

ガラガラと体育館のドアが閉まる。

愛華「あ? おい、ドア閉めんな。熱いだろ」

不良1「へへへ。そんなこと、考えてる場合か?」

愛華「あん?」

太一「……」

太一が不良たちを見る。

太一「……騙したな、彰浩」

舞台裏にいる彰浩。

彰浩「……さてね」

愛華「どういうことだ?」

太一「ここにいるやつら、うちの人間じゃないやつばかりだ」

愛華「ああ?」

彰浩とは逆の舞台袖から出てくる礼司。

礼司「悪いな。あんたのトップは今日までだ」

太一「……礼司」

愛華「なんでだよ?」

礼司「俺は何事もトップが好きでね。……さあ、じゃあ、始めようか」

パチンと指を鳴らすと、不良たちが声を上げて、教壇の上に登り、愛華と太一に襲い掛かる。

愛華「ちっ!」

太一「ふんっ!」

愛華と太一が不良たちと乱闘を始める。

〇同 ※時間経過

大勢の不良たちが倒れているが、まだまだ何十人もとりかこんでいる。

愛華「……」

太一「……」

愛華と太一はボロボロで、立っているのもやっと。

礼司「……さて、そろそろ終わりとするか」

愛華「くそ……」

そのとき、ドアがガラガラと開く。

彰浩がニヤリと笑う。

恭介「……おう。随分とはしゃいでるようだな」

恭介の後ろには100人単位の不良が集まっている。

礼司「なっ! なんで、成合の恭介がここに?」

恭介「そんなこと、気にしてる場合じゃないんじゃないのか?」

礼司「くそ!」

恭介「おら、いくぞ!」

恭介たちが体育館の中にいる不良たちにかかっていく。

〇同 ※時間経過

礼司と仲間の不良たちが倒れている。

愛華「……恭介、助かった」

恭介「いや。けど、危なかったな」

太一「……タイミング、良すぎないか?」

恭介「タレコミがあったんだよ。ここで愛華がピンチになるってな」

太一「……一体、誰が」

恭介「まあ、それはいいとして……。チーム内の清掃ができたみたいだな」

太一「まさか、礼司が反乱を企んでたなんてな」

礼司が気絶している。

恭介「あとは……」

恭介が彰浩を見る。

彰浩「すみませんでした!」

彰浩が土下座する。

愛華「……」

愛華が彰浩を見下ろし、頭を踏む。

彰浩「うがっ!」

愛華「……これで何回目だ、彰浩」

彰浩「もうしませんので、許してください」

愛華「……」

恭介「……どうするんだ? 俺が落とし前つけさせるか?」

愛華「いや、いいさ」

恭介「おいおい、いいのか?」

愛華が足を下ろす。

愛華「まあ、結果良ければすべて良しってな」

恭介「相変わらず、彰浩には甘いな、お前は」

愛華「んなことねーよ」

愛華と恭介が体育館から出ていく。

太一「……よかったな」

彰浩「ああ」

顔を上げる彰浩。その顔は満面の笑み。

太一「……なんで、喜んでるんだ?」

彰浩「……よ、喜んでねーよ」

太一「なあ、彰浩」

彰浩「ん?」

太一「……なんで、こんな遠回しなことするんだ?」

彰浩「なにがだ?」

太一「今回も、うちの膿を出せた。偶然か?」

彰浩「さあな」

太一「……損な役割だな」

彰浩「いいんだよ。ご褒美を貰ってるからな」

ニコリと笑みを浮かべて歩き去っていく彰浩。

終わり。

 

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