憧れのお姫様になるために
- 2023.06.17
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、中世ファンタジー、コメディ
■キャスト
ローラ 5歳、17歳
母親
テオドール 65歳
王子 21歳
アレフ 19歳
■台本
ローラが5歳の頃。
町の中で結婚のパレードが行われている。
歓声と「おめでとう」という声がしている。
ローラ「……うう。見えないよー」
母親「ああ……。いいわね。私の時もあんな素敵な結婚式がしたかったわ」
ローラ「お母さんとお父さんの結婚式のときは違ったの?」
母親「あのときは、国の経済がガタガタでね。そんな中、王様の結婚式といっても、盛大にできなくて……」
ローラ「そうだったんだ……」
母親「ローラの時は、ちゃんと盛大にやろうね」
ローラ「うん!」
そのとき、町からワーッと歓声が上がる。
母親「わああ。やるわね」
ローラ「え? なになに? どうしたの?」
母親「お姫様抱っこしたのよ」
ローラ「お姫様抱っこ?」
母親「そう。いいわね。やっぱり、お姫様の憧れよね」
ローラ「……憧れ」
母親「ローラもお姫様抱っこが似合う、素敵なお姫様になってちょうだいね」
ローラ「うん!」
場面転換。
ローラが17歳の頃。
山の近くで特訓をしているローラ。
腕立て伏せをしている。
ローラ「198……199……200!」
バッと立ち上がるローラ。
少し歩いて、立ち止まる。
深呼吸をするローラ。
ローラ「はあああああああ!」
岩を砕く音。
ローラ「ふう。よし、次は……」
そのとき、馬が掛けてくる音。
テオドール「姫。ここにいましたか」
ローラ「あら、ジイ、どうしたの?」
テオドール「どうしたのではありません。あなたは一国の姫なのですぞ。一人でフラリと出ていかれても困ります」
ローラ「あははは。大丈夫だって」
テオドール「姫、そういう気の緩みが……」
ローラ「……私に勝てる人間なんて、いる?」
ローラの威圧感のある声。
テオドール「うっ……。確かにそうなのですが……」
ローラ「……ふふ。ごめんなさい。今度からはちゃんと言ってから城を出るようにするわ」
テオドール「……よろしくお願いいたします」
ローラ「で? 単に私を呼びに来ただけ?」
テオドール「あ、そうでした。王妃様が縁談を決めてきましたぞ」
ローラ「ホント!? すぐ行く。今度こそ、素敵な男性だったらいいなぁ」
場面転換。
城の中庭。
ローラと王子が歩いている。
王子「……というわけで、戦場では先頭に立って、突撃したんですよ」
ローラ「そうですか……」
王子「俺が王になれば、民のために必死に働きます。後の世で名君と呼ばれるように、ね」
ローラ「……あの、一つ聞いてもいいですか?」
王子「なんでしょう?」
ローラ「女性に力が劣る男性のことをどう思いますか?」
王子「あはははは。あり得ませんね。男は女を守るものです。女に力負けする男なんて、風上におけないですね」
ローラ「……そうですか」
場面転換。
城の中。
母親「……ローラ。どうして、断るの? とてもいい人だと思うのに」
ローラ「ごめんなさい、お母様。私の理想のためなんです。ここだけは絶対に譲れないわ」
母親「もう。理想が高すぎると行き遅れるわよ」
ローラ「……」
場面転換。
山の近くで特訓をしているローラ。
ローラ「298……299……300!」
立ち上がるローラ。
テオドール「お疲れ様です、姫。さ、タオルです」
ローラ「ありがとう」
テオドール「あの、姫。縁談を断られたと聞きましたが?」
ローラ「しょうがないじゃない。理想と程遠いんだからさ」
テオドール「……あの王子でもダメとなると、もう、姫のお眼鏡にかかる者はいないかと」
ローラ「そうかしら? 私はそんなに理想が高いとは思わないんだけなー」
テオドール「……」
そのとき、暴れ馬が掛けてくる。
それに乗っている、アレフ。
アレフ「うわああああ! だ、誰か、と、止めてください―!」
ローラ「ん?」
テオドール「暴れ馬でございます。姫、御下がりください」
ローラ「……」
テオドール「姫!」
馬が迫る。
ローラ「はっ!」
ローラの声でビビって、馬が止まる。
アレフ「ふー。ビックリした―。あ、馬を止めていただいて、ありがとうございます」
ローラ「どういたしまして」
テオドール「おや? あなたはアレフ様では?」
アレフ「は、はい。そうですけど」
テオドール「なぜ、隣国の王子であるあなたがここに?」
アレフ「それが……お母様に、あんたはへなちょこすぎる! 少しはローラ姫を見習いなさいって言われまして……」
テオドール「なるほど。それで、姫に会いに来たと?」
アレフ「は、はい……」
ローラ「へー。あなた、王子なの?」
テオドール「(小声で)姫。アレフ様は、大陸でも有名な気弱で情けない王子です。このような者に時間をかけること自体、無駄でございます」
ローラ「……ふーん。情けない、ね」
アレフ「え? あ、あの、なんでしょう?」
ローラ「あなた、女性に守られる男性ってどう思うかしら?」
アレフ「え? べ、別にどうも思いませんけど」
ローラ「……」
テオドール「なんと、嘆かわしい。王子ともあろうものが、そのような発言を……」
アレフ「でも、人には得手不得手があります。別に女の人の方が力が強くてもよくないですか?」
テオドール「……(絶句)」
ローラ「じゃあ、男性が女性に抱っこされるのに抵抗はない?」
アレフ「はい。ありませんよ。というより、それをしてくれる女性が理想です」
ローラ「っ!? ジイ! 決めたわ!」
テオドール「な、なにをですか?」
場面転換。
町で結婚式のパレードが行われている。
主賓はローラとアレフ。
オープンにされた馬車に乗っているローラとアレフが歓声に向けて手を振っている。
その横には母親もいる。
母親「まさか、あなたがアレフ王子と結婚するなんてね。ビックリだわ。一番ないかとおもっていたのに」
ローラ「え? そうかしら? アレフは私の理想の人よ」
アレフ「え? そ、その……恥ずかしいですが、嬉しいです」
母親「アレフ王子のどこが好きなの?」
ローラ「だって、私が憧れのお姫様になるための条件を満たしているから」
母親「……条件?」
ローラ「そ! これよ!」
アレフ「わわっ!」
ワッと歓声がする。
ローラ「お姫様抱っこ! どう? お母様、私、お姫様抱っこが似合うお姫様になれたかしら?」
母親「……ローラ」
ローラ「なに?」
母親「お姫様抱っこは、お姫様が抱っこされる側よ」
ローラ「……え?」
終わり。
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