低血圧
- 2023.06.28
- 映像系(10分~30分)
■概要
人数:4人
時間:10分
■ジャンル
ドラマ・舞台、現代、コメディ
■キャスト
右京(うきょう) 35歳
三咲(みさき) 24歳
男 25歳
女 24歳
■台本
〇街中
カップルが歩いている。
男「あ、ここだ」
男の視線の先には喫茶店マルの看板。
女「なんか、古そうなお店だよ?」
男「こういうところが美味しかったりするんだよ。二つ星で、いつも満席なんだってさ」
女「それじゃ空いてないんじゃないの?」
男「とりあえず、入ってみようぜ」
〇喫茶店『マル』
ドアが開いて、カップルが入ってくる。
三咲「いらっしゃいませー」
男「二人なんですけど、空いてますか?」
三咲「え、ええ。空いてる席、どうぞ」
男が店内を見渡すとガラガラ。
というより、他に客がいない。
男と女が適当なボックス席に座る。
女「ねえ、ホントにお店合ってる? ガラガラなんだけど」
男「(スマホを見ながら)いや、合ってるはずなんだけど」
三咲が水を持ってやってくる。
三咲「ご注文が決まりましたらお呼びください」
三咲が二人の前に水を置いて、下がっていく。
男「……あ」
女「どうしたの?」
男「レビューに昼には絶対に行くな、だってさ」
女「え? なんで?」
男「さあ。でも、入っちゃったんだし、何か食べようぜ」
女「うん……」
〇同
注文を取る三咲。
そのままカウンターへ向かう。
三咲「マスター。ハンバーグ定食とナポリタンで」
右京「……え?(虚ろな目で)」
三咲「だーかーら。ハンバーグとナポリタン!」
右京「あ、ああ……」
フラフラしながら、冷蔵庫を開け、食材を取り出す。
そしてコンロに火をつけ、フライパンを置く。
その上にコロッケをのせる。
三咲「それ、コロッケ―!」
右京「あ、ああ……」
右京がフライ返しでコロッケをひっくり返す。
三咲「違う違う! 焦げてるじゃなくて、コロッケ! こ、しか合ってないじゃない!」
右京「あ、ああ……」
右京がフライパンにフランベ用の酒をドバドバいれる。
三咲「ちょっと! マスター!」
炎の柱が立つ。
三咲「きゃあああああああああ!」
〇喫茶店マルの前
カップルが怒って、店から出て行く。
〇店内
テーブルの上に置かれている真っ黒なコロッケとケチャップで和えたソバを見下ろしている三咲。
三咲「そりゃ、怒って帰るわよね……」
〇店内(夜)
店の中は混雑している。
三咲がテーブルに料理を置く。
三咲「お待たせしました。コロッケ定食とカルボナーラです」
料理はどちらもすごく美味しそう。
〇同
時計は10時(22時)を指している。
店の中は客がいない。
後片付けをしている三咲と右京。
するとドアが開く。
客「あの……まだやってます?」
三咲「あ、すみません。もう閉店でして」
客「ああー。そうですか。わかりました」
客が帰っていく。
三咲「……これで4人目ですね。やっぱりもう少し閉店時間延ばしたらどうですか?」
右京「これ以上、三咲ちゃんの仕事時間を長くするわけにはいかないよ。姉さんに殺される」
三咲「私は別にいいのにぁ」
右京「それよりも、なんとか昼を何とかしないと」
三咲「……あの作戦はやっぱり、ダメなんですか?」
右京「いやさ、布団には12時に入ったんだよ。だけど、寝よう寝ようって思えば思うほど寝付けなくてさ」
三咲「ああー。それはなんとなく、わかります」
右京「羊も2万の大台に乗っちゃったよ」
三咲「そこまで数えるのもすごいですね。あ、でもあれはどうしたんですか? 薬を使ってみるってやつ」
右京「ああ、睡眠薬ね。俺、全然効かなくてさ。イライラして、用量の3倍飲んだら、死にそうなったんだよね」
三咲「ああ……。3日前、真っ青な顔してたのはそれだったんですね」
右京「ツボ押してもダメだし、アロマもダメ。ヒーリングの音楽もダメだったんだよ」
三咲「寝る前にスマホを見ないとか、物を食べないとかは、やってみました?」
右京「もちろん、試してみたよ。スマホだけじゃなく、家じゅうの光をシャットアウトしたり、半日食べなかったりね」
三咲「それでもダメですか……」
右京「うう……。自分の低血圧が本当に恨めしい! そのせいで、昼の部はまったく売り上げ立たないから、経営も圧迫するし……」
三咲「夜が入れないくらいお客さんが来るくらいなのに、もったいないですよね」
右京「そうなんだよ。せっかく来てくれたのに、食べてもらえないなんて悔しいよ」
三咲「……困りましたね」
右京「もういっそ、夜にバットで頭殴って気絶させてくれないかな?」
三咲「嫌ですよ。下手したら死んじゃうじゃないですか」
右京「じゃあ、スタンガンはどうかな?」
三咲「……どうかな、じゃないですよ」
右京「ううー……。昼が16時からだったらいいのに!」
三咲「……それじゃ昼にならな……あれ?」
右京「どうかした?」
三咲「……昼、開けなきゃいいんじゃないんですか?」
右京「あはははは。何言ってるんだよ……」
三咲「……」
右京「……」
〇喫茶店『マル』の外観・昼
扉にはクローズの札がかかっている。
〇同・夜
店内に多くの客が入っていく。
〇店内
時計は11時(23時)を指している。
店内の7割くらいには客が座っている。
三咲が料理を運んでいる。
テーブルに料理を置く三咲。
三咲「お待たせしました。ハンバーグ定食とナポリタンです」
〇同
店内には客がいなくなっていて、後片付けをしている三咲と右京。
右京「……別に無理しなくてよかったんだなぁ」
三咲「そうですねぇ……」
二人が渇いた笑いをする。
終わり。
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