偶像への憧れ
- 2023.07.17
- 映像系(10分~30分)
■概要
人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
漫画原作・ドラマ、ファンタジー、シリアス
■キャスト
宗太(そうた) 34歳
弘毅(こうき) 34歳
母親 56歳
真由(まゆ) 37歳
ウメ子 75歳
真(まこと) 34歳
■台本
〇部屋の中
宗太がパソコンに向かっている。
マウスをカチカチと動かしいる。
〇パソコンの画面
警察官の画像が映っている。
警察官の体験談の記事に切り替わる。
遠くでチャイムの音が鳴る。
〇部屋の中
宗太「……」
一階から声がかかる。
母親「宗太! あんた宛になんか届いたわよ!」
宗太「っ!?」
立ち上がって、部屋を出て行く宗太。
〇リビング
ドアが開いて、宗太が入って来る。
宗太「届いたの、どれ?」
母親がため息をついて、段ボールを指差す。
宗太「きたきた!」
宗太が段ボールを持ち上げる。
母親「宗太。あんた、今日、ハローワーク行ったの?」
宗太「……ああ、いや、うん。行くって」
母親「あんた、いつ、就職するの? もういい年なんだから」
宗太「わかってるって!」
段ボールを持って、リビングを出て行く宗太。
〇宗太の部屋
着替えている宗太。
警察官のコスプレだが、かなりリアル。
1・5メートルほどある鏡を見て、満足そうに微笑む宗太。
〇コンビニの近くの道
歩いている宗太。
コンビニの前でたむろしている3人の若者。
宗太「……」
回想。
〇コンビニの入口(夜)
買い物が終わり、コンビニから出てくる宗太。
入口の近くで3人の若者がたむろっている。
宗太が邪魔そうだと顔をしかめる。
若者「あん? おっさん、何見てんだよ?」
宗太「……」
そそくさと逃げ出す宗太。
若者「だっせ」
若者たちが笑う。
※回想終わり
〇コンビニの近くの道
宗太が若者たちに近づいていく。
宗太「君たち、学生? 学生書見せてくれる?」
若者「は? なんでだよ?」
宗太「営業妨害だよ。ちょっと署まで来てくれる?」
若者「……おい、行くぞ」
ゾロソロと帰っていく若者たち。
宗太「(ニヤリと笑う)……」
〇住宅街
悠々と歩いている宗太。
そのとき、真由が走ってくる。
女性「すみません。助けてください!」
宗太「へ?」
〇家の中
弘毅が包丁を持って、ウメ子に突き付けている。
そんな弘毅を宗太が説得しようとしている。
弘毅「くそ! 警察を呼びやがって!」
ウメ子「ひいい!」
宗太「お、落ち着け。包丁を捨てろ」
弘毅「捨てるわけねーだろ」
宗太「……」
弘毅「ちくしょう! ちょっと、お金もらえればよかったんだ。それなのに……」
宗太「……」
弘毅「最初は留守だったんだ。けど、帰って来やがって……。二、三千円でよかったんだ。……くそ。あのババアが小遣いくれねーのが悪いんだ!」
宗太「……お前、ニートなんだよな?」
弘毅「それがどうしたんだよ?」
宗太「……辛いよな。家にも居場所なくってさ」
弘毅「お前に何がわかるんだよ!」
宗太「わかるよ」
弘毅「……」
宗太「そりゃさ、俺だって働けるなら働きてーよ。でもさ、いきなり働けって言われても、怖いんだよ!」
弘毅「……ババアは主婦のくせにな」
宗太「そうそう。自分は働いてないのに、俺には働け働けって煩くてさ」
弘毅「ハローワーク行ったか? とか、面接受けないのかとかな」
宗太「せめてバイトしろとかな」
弘毅「バイトって言われてもな……」
宗太「コンビニとかって簡単に言うけど、あれ、結構大変なんだよな」
弘毅「わかる。覚えることたくさんあるのに、時給低いよな」
宗太「そのくせ、おばちゃんは自分ばっかりに仕事させようとしてさ」
弘毅「あー、わかる。清掃とか良さそうなんだけど、あんまり募集してないよな」
宗太「そうそう。やりたいって思うバイトの募集ってないよな」
弘毅と宗太がぐちぐちと愚痴を話している。
ウメ子「……」
〇家の前
警察が数人と、パトカーが数台停まっている。
家のドアが開いて、宗太に連れられて弘毅が出てくる。
弘毅「ありがとな。俺、頑張って、やり直してみるよ」
宗太「ああ。お前ならきっとできるさ」
弘毅がニコリと笑ったところに、警察官が手錠をかける。
弘毅「じゃあな」
宗太「ああ」
弘毅がパトカーに乗せられ、連れて行かれる。
それを見送る宗太。
真由「あの、本当にありがとうございました!」
ウメ子「……あんたがいなかったら、私は殺されてたかもしれないよ」
宗太「いえ。いいんですよ。仕事ですから」
真由とウメ子がもう一度、深くお辞儀する。
真「おい、そろそろ行くぞ。乗れ」
宗太「……え?」
真「ほら、署に戻るぞ」
宗太「あ、はい……」
〇パトカーの前
真が後ろのドアを開けて促す。
宗太がパトカーに乗る。
その隣に真が乗る。
パトカーが発進する。
〇パトカーの中
パトカーが走っている。
真「お手柄だったな」
宗太「え? あ、まあ……はい」
真が宗太の手に手錠をかける。
宗太「え?」
真「お前、本物の警察官じゃねーだろ」
宗太「……やっぱり、わかります?」
真「当たり前だろ」
宗太「ですよー……」
手錠をかけられたまま、パトカーで連行される宗太。
終わり。
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