車内のバカップル

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■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ドラマ・漫画原作、現代、コメディ

■キャスト
拓真(たくま) 25歳
幹人(みきと) 26歳
ミサ 19歳

■台本

〇電車内

電車が止まり、ドアが開く。

スーツ姿の拓真が車内に入って来る。

拓真が電車内を見渡す。

電車内は、椅子は全部埋まっているが、そこまで混雑していない。

ため息をついて、仕方なく吊革につかまる。

拓真(N)「あー、会社戻るのだるいなー」

ミサ「ちょっとやだぁ」

拓真と周りの人たちが声がした方を見る。

椅子に派手めなギャルっぽい格好をしたミサとギャル男っぽい幹人が並んで座っている。

ミサと幹人はイチャイチャとしている。

幹人「いいじゃねーか。ちょっとくらいよぉ」

ミサ「だーめ」

幹人「キスだけ」

ミサ「だめだってばー」

周りから舌打ちが複数聞こえてくる。

拓真(N)「真っ昼間からイチャイチャしやがって、クソが! リア充が。死ねよ」

周りの人間も明らかに不機嫌そうな顔をしている。

幹人「あん? んだよ! 見てんじゃねえっ!」

幹人が周りに向かって怒鳴る。

周りの人間(拓真も含む)が顔を逸らす。

幹人「けっ!」

ミサ「こらこらー。ダメだよ、ミッキー。おっかない声だしたら」

幹人「だってよぉ。こいつら、ミサをエロい目で見てたんだぞ」

拓真(N)「見てねーよ! 単にてめえらのバカップル具合にイラついてるだけだっての!」

ミサ「しゃーないじゃーん。ミサ、エロい体してるんだからさー」

ミサが周りに見せつけるように、胸元の開いた服で、胸を寄せる。

周りの人間(拓真を含む)が、ちょっとエロい顔をしてミサの胸元に視線を送る。

幹人「ちょ、やめろって! ミサの体は俺のものなんだから」

幹人がミサの谷間を隠そうしながらも、触る。

ミサ「あー、触ったー」

幹人「悪い悪い、手が滑った」

ミサ「もー、ダメだよー。そういうことしちゃ」

幹人「ごめんごめん。ミサの体があまりにもエロかったからさー」

ミサ「えー? そう? なら仕方ないねー」

幹人「そうそう。仕方ねーの」

周りの人間が不機嫌そうに舌打ちする。

拓真(N)「くそー! くそー! ……う、羨ましくなんかねーからな!」

幹人「なあ、ミサ、キスしていいか?」

ミサ「えー? んー。どうしようかなー」

幹人「いいだろ?」

ミサ「でも、恥ずかしいな―」

幹人「何言ってんだよ。見られるの好きだろ?」

ミサ「んー。じゃあ、ちょっとだけねー」

幹人とミサが軽いキスをする。

ミサ「あははは。ちょっとハズいねー」

周りの人間が不機嫌そうに舌打ちする。

拓真(N)「マジで、不幸になりやがれ!」

幹人「(周りを見ながら)にしてもよー。よく、こんな昼間っから、仕事なんてできるよなー」

ミサ「あははは。お昼だから仕事してんだよー」

幹人「そっか。それもそうだな。ぎゃはははは」

周りの人間が不機嫌そうに舌打ちする。

拓真(N)「ふざけんなよ。こっちも好きで仕事してんじゃねーんだからな」

幹人「俺はこうして、お昼からミサと良いことできてるんだから、勝ち組だよな。勝ち組」

ミサ「あははははー。そんなこと言ったら、周りの人たちに悪いよー」

幹人「いいんだよ! 負け組のやつらのことなんか」

周りの人間が不機嫌そうに舌打ちする。

幹人「なあ、ミサ。この後どうする? ホテルでも行くか?」

ミサ「んー。どうしようっかなー。ミサ、スイーツ食べたい」

幹人「そかそか。じゃあ、それ食ったら行くか。ほ、て、る」

周りの人間が不機嫌そうに舌打ちする。

だが、そのとき、ピピピピとアラーム音が鳴る。

周りの人たちが自分のスマホから鳴ったのかと思い、自分たちのスマホを見る。

だが、アラームが鳴ったのはミサのスマホ。

ミサが、スマホのアラームを消す。

ミサ「ありがとうございました。終了時間です」

幹人「え? あー、えっと……」

気まずそうに周りを見る幹人。

ミサ「次の予約が入っているので、延長はできません。会計は3時間コースで、2万5千円です」

幹人「え? あ、はい」

幹人が財布を取り出して、2万5千円を渡す。

ミサ「ありがとうございました」

電車が止まる。

同時にミサが立ち上がる。

ミサ「では、レンタル彼女の、またのご利用をお待ちしておりますね」

ミサが幹人に頭をぺこりと下げる。

ミサ「あ、あと、幹人さんは少し働いた方がいいと思います。ニートよりもお仕事頑張ってる人の方が格好いいと思いますよ」

ニコリと笑って、手を振りながら電車を降りていく。

幹人を含めて、周りの人間が呆然としている。

プシューと音を立てて、電車のドアが閉まる。

ゆっくりと電車が走り出す。

周りの人間がジッと幹人を見る。

幹人「(視線を感じて)うっ!」

周りの人間(拓真も含めて)バカにしたような目で幹人を見る。

幹人「う、うう……。こっち、見るな―!」

幹人が立ち上がって、泣きながら隣の車両へと走っていく。

それを見届ける周りの人たち。

拓真(N)「ふっ。勝ったな」

周りの人間も勝ち誇ったような、満足そうな顔をしている。

電車がゆっくりと進んでいく。

終わり。

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