みにくいアヒルの子?
- 2023.07.26
- 映像系(10分~30分)
■概要
人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
漫画原作、童話、コメディ
■キャスト
ハク
アヒル1~4
■台本
〇池
多くのアヒルとハクがスイスイと優雅に泳いでいる。
他のアヒルとは違い、ハクの体は若干大きく、首も長く、クチバシも黒色が混じっている。
ハク「いやあ、今日もぽかぽか陽気が気持ちいいね、兄さん」
アヒル1「ああ、そうだな」
そこにアヒルの1羽がスイスイとやってきて、ハクに並んで泳ぐ。
アヒル2「ねえねえ、ハクちゃん」
ハク「ん? なに?」
アヒル2「ハクちゃんって、どういう毛づくろいしてるの?」
ハク「え? 特に変わったことしてないと思うけど」
アヒル2「そうなんだ? ハクちゃん、綺麗だから、何か特別なことしてるのかと思っちゃった」
ハク「あははは。何言ってるのさ。僕なんかよりも、君の方がよっぽど綺麗だよ」
アヒル2「そうかな?」
ハク「そうだよ」
アヒル2「でも、ハクちゃんは首も長いし、羽も艶があって綺麗だし、本当に羨ましいよ」
ハク「ふふ。それはきっと隣の芝生は青いっていうやつだよ。僕からしたら、君の方が羨ましいんだから」
アヒル2「そうかなぁ……」
ハク「そうだよ」
アヒル2「ありがと。それじゃね」
ハク「ばいばい」
アヒル2がスイスイと泳いでいく。
ハク「……」
アヒル1「おい、ハク。気にするなよ」
ハク「兄さん……」
アヒル1「いいか? お前が他のアヒルとちょっと違うからって、気にすることないからな。お前は俺たちの兄弟だってことは変わらないぞ」
ハク「うん。ありがとう」
スイスイと泳いでいくハク。
〇道端
アヒル3が座り込んでいる。
そこにハクがやってくる。
アヒル3「……」
ハク「あれ? 君、どうしたの? こんなところで蹲って」
アヒル3「いやあ。実はお腹がペコペコで動けないんだ」
ハク「そっか。それは大変だね。ちょっと待ってて」
ハクがいきなり翼を広げて、飛び始める。
アヒル3「(ビックリした顔をして)……」
〇同 時間経過
ハクが飛んで戻って来る。
そのクチバシにはたくさんの球根が咥えられている。
ハク「お待たせ。どうぞ」
アヒル3「あ、ありがとう! 助かったよ」
アヒル3が球根をガツガツと食べる。
ハク「どう? 足りないならまた取って来るけど」
アヒル3「いやいや。大丈夫。本当にありがとう」
ハク「どういたしまして」
アヒル3「それにしても、君は凄いな」
ハク「え?」
アヒル3「飛べるなんて、すごいよ。しかもあんな長い時間」
ハク「そ、そうかな……」
アヒル3「うんうん。すごいすごい。君はきっと、スーパーアヒルなんだよ」
ハク「あはは……。僕は普通がいいんだけどね」
アヒル3「そうかい? 俺からしたら、特別なのは羨ましいけどな」
ハク「……それじゃ、僕、もう行くね」
アヒル3「あ、ああ。ホントにありがと」
ハク「どういたしまして」
ハクが歩き去っていく。
〇湖のほとり
ハクがジッと湖を眺めている。
そこにアヒル1がやってくる。
アヒル1「どうした? また、他のアヒルになんか言われたのか?」
ハク「……飛べるのが羨ましいって」
アヒル1「そうか……」
ハク「ねえ、兄さん」
アヒル1「ん?」
ハク「僕、普通がいいなぁ」
アヒル1「ハクはハクだ。普通でも特別でもないよ」
ハク「……うん。ありがと」
〇池
多くのアヒルとハクがスイスイと優雅に泳いでいる。
そこに体が大きいアヒル4がやってくる。
アヒル4「がははは! どけどけどけ! 俺様が通るぞー!」
アヒル4の横暴に顔をしかめるアヒルたち。
ハク「……うわあ。僕と同じくらい体が大きい」
ハクがスイスイと泳ぎ、アヒル4のところに行く。
ハク「ねえねえ、君、大きいね」
アヒル4「ん? がははは。まあな。すげーだろ?」
ハク「うん!」
アヒル4「しかもな、俺、飛べるんだぜ」
ハク「ええええー! ホント?」
アヒル4「ああ、見とけよ!」
アヒル4が必死に羽ばたいて、他のアヒルよりは若干、長く飛ぶ。
アヒル4「はあ、はあ、はあ……どうだ?」
ハク「凄い、凄いよ!」
その様子を複雑な顔で見ているアヒル1。
〇田んぼ
スイスイと泳ぐアヒル4とハク。
まるで兄弟のように寄り添って泳いでいる。
アヒル4「なあ、ハクよ」
ハク「なに?」
アヒル4「俺は他のアヒルと違うだろ?」
ハク「うん。すごいアヒルだよ」
アヒル4「うむ。そこで俺は思ったんだが……」
ハク「なに?」
アヒル4「俺、アヒルじゃねーんじゃねーかなって思うんだよ」
ハク「ええっ!?」
アヒル4「だってよぉ。俺くらいすげーアヒルいねーじゃん?」
ハク「うん。そうだね」
アヒル4「やっぱ、俺、アヒルなんかじゃないんだよ、きっと」
ハク「えー? じゃあ、なになの?」
アヒル4「ふっふっふ。それはな。白鳥だ!」
ハク「えええー! 白鳥!?」
アヒル4「そうだ! あの美しい姿。体の大きさ。そして何より飛べる!」
ハク「ああー。確かに」
アヒル4「俺、絶対、白鳥だよ。そうに決まってる」
ハク「うん。そうだね。……でも」
アヒル4「ん? なんだ?」
ハク「君が白鳥だったら、なんか寂しいなって思って」
アヒル4「なんでだ?」
ハク「だって、アヒルと白鳥は仲間じゃないもん。きっと仲良く出来なくなるよ」
アヒル4「がはははははは!」
ハク「……?」
アヒル4「何言ってんだ、お前は。仲良く出来ないもなにも、今、仲良くしてるじゃねーか」
ハク「……あ、そっか」
アヒル4「心配すんな。俺が白鳥でも、俺は俺で変わらない。今までと同じ、お前とは仲間だ!」
ハク「うん!」
アヒル4「いやー、それにしても、俺が白鳥だって決まったら、きっとモテモテだろうなー」
ハク「うん、きっとモテモテだね」
アヒル4「だろ? がはははは。まいっちゃうなー」
アヒル4とハクが笑い合っている。
それを少し離れたところで見ているアヒル1。
アヒル1「……白鳥はお前なんだけどな、ハク」
複雑そうな顔をしながらも、楽しそうにしているハクを見て、笑みを浮かべるアヒル1。
終わり。