お似合いの眼鏡
- 2023.08.01
- 映像系(10分~30分)
■概要
人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
漫画原作、ファンタジー、コメディ
■キャスト
クラウド 23歳
レナ 19歳
子供1~4
ミロ ※年齢自由
■台本
〇路地裏(夜)
食材が入った紙袋を持ち、早足で歩くレナ。
レナ「みんな、お腹空かせてるよね……」
そんなレナの様子を物陰から見ているクラウス。
クラウス「……」
クラウスが辺りをチラリと見回す。
全く人通りがない。
クラウスが物陰から出て、レナの後ろを歩く。
そして、コートの内側に手を入れる。
クラウス「っ!?」
歩くレナの頭上から物が落ちてくる。
クラウス「危ないっ!」
クラウスがレナを突き飛ばす。
レナ「きゃあっ!」
レナが倒れる。そして、レナを庇ったおかげで、物がクラウスの頭に当たる。
※クラウスの眼鏡が落ちて割れる。
倒れるクラウス。
レナ「大丈夫ですか!?」
レナがクラウスに駆け寄る。
だが、クラウスは気絶している。
頭から血を流しているクラウス。
〇孤児院
ソファーの上で寝ているクラウス。
クラウス「っ!?」
目を覚ますと、子供1がクラウスのことを覗き込んでいる。
子供1「レナ姉ちゃん、起きたよー」
クラウス「(ガバっと起きて)……ここは?」
レナがやってくる。
レナ「すみません。本当ならお医者様に見せるべきなのですが……」
クラウス「(頭の包帯を触り)あ、いや、それよりここは?」
レナ「リレイント孤児院です」
クラウス「孤児院……?」
レナ「あの、助けていただいてありがとうございました」
クラウス「……助けた?」
レナ「上から物が落ちてきたのを庇っていただきましたよね? それで私の代わりにあなたが……」
クラウス「……」
レナ「どうかしましたか?」
クラウス「……俺は、誰だ?」
レナ「え?」
〇孤児院
子供たちと遊んでいるクラウス。
子供2がやって来て、絵本を出す。
子供2「ねえ、次、これ読んで」
クラウス「え?」
顔をしかめて子供2の持っている本に顔を近づける(眼鏡がないので見えない)。
クラウス「ああ。絵本だね。いいよ。ソファーに行こうか」
子供2「うん!」
子供3「ええー! まだ遊びたいのにー」
クラウス「はは。これ、読み終わったら続きするから、ね?」
子供3「約束だよ」
クラウス「(笑みを浮かべて)ああ」
ソファーにクラウスと子供2が座る。
クラウスが本を開いたと同時に、レナとおじいさんがやってくる。
おじいさん「……この青年かね?」
レナ「はい」
クラウス「……?」
〇同
おじいさんがクラウスの頭の傷を見ている。
おじいさん「ふーむ。外傷のショックによる記憶喪失だろうな」
レナ「記憶喪失……ですか?」
おじいさん「うむ。まあ、一時的なものだと思うぞ。すぐに思い出すだろう」
レナ「ありがとうございました。でも、おじいさんが昔医者だったなんて知りませんでした」
おじいさん「いやいや。昔、ちょこっと、な」
クラウス「……」
レナ「あの、記憶が戻るまで、気にせずここにいてくれていいですからね」
クラウス「ああ。ありがとう」
レナ「それでは、ご飯の用意をしてきますね」
レナが行ってしまう。
おじいさん「なあ、若いの」
クラウス「なんでしょう?」
おじいさん「近いうちにここを出て行け」
クラウス「え?」
おじいさん「あの子の悲しむ顔は見たくない。頼む」
クラウス「……」
〇孤児院・庭
洗濯ものを干しているクラウス。
その周りにたくさんの子供たちがいる。
子供3「ねえ、あそぼ―」
クラウス「ははは。これが終わったらね」
そこにレナがやってくる。
そして、小さな箱をクラウスに渡す。
レナ「あの、これ……」
クラウス「……?」
クラウスが受け取り、開ける。
中には眼鏡が入っている。
クラウス「眼鏡……」
レナ「割れちゃったんですよね? 代わりになるかわかりませんが……」
クラウス「ありがとう」
ほほ笑んで眼鏡をかける。
クラウス「どう、かな?」
子供2「似合ってるよ」
子供1「似合う似合う」
レナ「とっても似合いますよ」
クラウス「……本当にありがとう」
レナが顔を赤くする。
〇孤児院
レナと子供たちとクラウスが楽しそうに食事している。
〇同
子供たちに囲まれて寝ているクラウス。
それを扉の隙間から見ているレナ。
〇同・キッチン
レナとクラウスが並んで、楽しそうに料理している。
〇路地裏(夜)
食べ物が入った紙袋を持って歩くクラウス。
クラウス「みんな、お腹空かせてるだろうな……」
すると目の前に人影が現れる。
クラウス「……誰だ?」
ミロ「クラウス……。こんな簡単な依頼に、何日かけるつもりだ?」
クラウス「……依頼?」
ミロ「……お前、眼鏡、どうしたんだ?」
クラウス「……」
ミロ「似合わんな、その眼鏡は」
クラウスが顔をしかめる。
ミロ「……もしかして、お前」
ミロが懐に手を突っ込み、箱を渡す。
ミロ「お前と言えば、こっちだろ」
クラウスが箱を開けると、最初にかけていた眼鏡と同じものが入っている。
クラウス「……」
クラウスが眼鏡をかけ替える。
クラウス「……っ!?」
クラウスの目つきが暗く、悪そうな感じになる。
ミロ「ふっ、似合うじゃないか」
クラウス「……ああ」
〇孤児院・玄関
レナが一人、待っている。
そこにクラウスがやってくる。
レナ「遅かったですね、何かあったんですか?」
クラウス「ああ……」
レナ「あれ? 眼鏡……っ!」
クラウスがナイフでレナの腹を突き刺す。
レナ「……どうして?」
クラウス「クライアントの希望なんだ。お前の綺麗な顔を永久のものにしたいらしい」
レナ「……あのとき、私を庇ったのは」
クラウス「その顔を傷付けないためだ」
レナ「……」
絶命するレナ。
死体を抱えるクラウス。
そこにミロがやってくる。
ミロ「なんなら、俺が首を刎ねてやろうか?」
クラウス「いや、自分でやる」
ミロ「そうか」
クラウスのポケットから、レナに貰った眼鏡が落ちる。
クラウス「……」
クラウスが眼鏡を踏み割る。
レナの死体を抱えて、歩き出すクラウス。
クラウス「……」
無表情で歩いていく。
終わり。
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