ひまわりの迷路でつかまえて

〈前の10枚シナリオへ〉  〈次の10枚シナリオへ〉

〈声劇用の台本一覧へ〉

■概要
人数:4人
時間:10分

■ジャンル
漫画原作・ドラマ、現代、シリアス

■キャスト
圭吾(けいご)
千景(ちかげ)
伸二(しんじ)
女性

■台本

〇ひまわり畑の迷路
圭吾と千景が5歳の頃。
圭吾が走っている。
周りは、圭吾の背丈よりも高いひまわりが咲いている。
遠くから千景の声が聞こえてくる。

千景の声「圭吾! こっちこっち!」
圭吾「どこだよ、千景!」
千景の声「あははははは!」
圭吾「くそー! 絶対にみつけてやるかな!」
千景の声「私を捕まえることができたら、圭吾のお嫁さんになってあげる」
圭吾「っ!? ほ、ホントだな!? 絶対だぞ!」
千景の声「うん! つかまえられたらね!」
圭吾「よーし!」

圭吾が勢いよく、迷路を走っていく。

〇土手
16年後。
寝転がって昼寝をしている圭吾。
そこに伸二がやってくる。

伸二「圭吾。……圭吾!」

圭吾が目を覚ます。

圭吾「お? 伸二か……」
伸二「ったく、人が追試でヒイヒイいってる間に昼寝かよ」
圭吾「赤点取る方が悪い」
伸二「うっせーな」
圭吾「で? 単位は貰えそうか?」

伸二がピースサインをする。

圭吾「ん。じゃあ、夏休みは遊び回れるってわけだな」
伸二「ああ。来年から就活だからな。遊び回れるのは今年で最後だな」
圭吾「大学生活もあっという間だな……」
伸二「まあ、最後にパーッと遊ぼうぜ。そのためにバイト付けの日々だったんだからな」
圭吾「……それで赤点とってたら、世話ねーけーどな」
伸二「うっさいな。追試通ったんだからいいだろ」
圭吾「まあな。で、何する? 計画立てておかんと夏休みもあっという間だぞ」
伸二「だな。……んー。やっぱさ、最後の夏くらいは女っ気がほしいよな」
圭吾「……それはわかるけどよ。20年以上、彼女できなかったのに、急にできないだろ」
伸二「う、うっせーな。今までは、本気出してなかっただけだよ!」
圭吾「はいはい」
伸二「とにかく、泊まりでどっか行こうぜ」
圭吾「おう。じゃあ、良さそうなところ、探しておくわ」
伸二「おう、頼んだぞ」

〇圭吾の家の前
ポストの中を取る圭吾。
その中に一枚のハガキがある。
ハガキには『同窓会のお知らせ』と書いてある。

圭吾「……同窓会、か」

〇家の中
ソファーに座り、同窓会のお知らせを手に持ちながら電話をしている圭吾。

圭吾「あ、母さん? お盆前なんだけどさ、2、3日、そっちに帰るよ。……ああ、いや、ちょっと用事があってさ」

ハガキには、小学校の頃の集合写真が載っている。
そこには5歳の頃の圭吾と千景が映っている。
圭吾がじっと千景の顔を見ている。

〇同窓会会場
周りでは抱き合って喜んでいる人や、高そうな服を着ている人に群がっている人たちがいる。
会場は大いに盛り上がっている。
その中で、圭吾がチビチビとジュースを飲みながら歩き回っている。

圭吾「……」

後ろからポンと肩を叩かれる。

女性「おっす、圭吾!」
圭吾「っ!?」

勢いよく振り返る圭吾。
相手の顔を見て、あきらかにガッカリした顔をする圭吾。

圭吾「お、おう。久しぶり……」
女性「あははは。わかりやすいなぁ。千景と思った?」
圭吾「……別に」
女性「はいはい。もう大人なんだから、変な意地張らないの!」
圭吾「……」
女性「今日だって、千景に会いに来たんでしょ?」
圭吾「んなことねーよ」
女性「はあ……。ホント、小学生の頃から何も変わってないわね」
圭吾「何がだよ」
女性「その変な意地っ張りなところ。そんなんだから、なにもなく終わるのよ」
圭吾「だから、何の話だよ?」
女性「ねえ、今でも千景のこと、好き?」
圭吾「はあ!? あいつとはたんに家が近かっただけだっつーの。高校は違う学校だったし」
女性「そういうことを聞いてるんじゃないの。今も好きなの? イエス? ノー?」
圭吾「……」
女性「はあ……。千景から、あんたが来たら渡して欲しいって、これを預かってるんだけど」

そう言って、女性が手紙を出す。

圭吾「っ!?」

パッと女性から手紙を奪う圭吾。

女性「ちょ、ちょっと!」

手紙を見て、目を見開く圭吾。
そして、同窓会会場を後にする。

女性「(後姿を見て)……ったく、世話がやける」

〇土手(夜)
手紙を持って走る圭吾。
その手紙には『ひまわりの迷路でつかまえて』と書いてある。

〇ひまわりの迷路・中
ひまわりが生い茂っている。

〇ひまわりの迷路・入口
走って来る圭吾。
看板に『ひまわりのめいろ』と書いてある。
そして、『いりぐち』と書いてある看板の前に立つ圭吾。
迷路の方を見る。

圭吾「……ぷっ! あはははははははは」

〇ひまわりの迷路・中
千景が膝を抱えて、小さくなっている。
後ろから、圭吾の声がする。

圭吾「見―つけた」

千景が物凄く不満そうな顔をして、振り向く。
そこには笑いをこらえている圭吾の姿。

千景「もう!」

立ち上がり、圭吾の前に立つ千景。

千景「……ムードぶち壊し」
圭吾「いやいや。ここでムードを出すのは無理だろ」

圭吾と千景が周りを見る。
咲いているひまわりは圭吾たちの腰の位のものばかり。

千景「ここの迷路って、ミニひまわりだったのね」
圭吾「……そうみたいだな」
千景「(唇を尖らせる)……」
圭吾「あのときは、大きく見えたんだけどな」
千景「……そうだね。あの頃は、圭吾に見つからない自信があったんだけどね」
圭吾「今は隠れるのが難しいくらいだ。ちょっと高い所に行けば、全体が見渡せる」
千景「……はあ。なんか、バカみたい」
圭吾「あの頃はさ、必死だったんだ」
千景「……」
圭吾「なんとか見つけようって必死だった。……見つけられると思ってた」
千景「……変な意地なんて、張らなきゃよかった。……あのときは、わざと見つけられたら、告白されないんじゃないかって思い込んでたんだ……」
圭吾「……あのさ。あのころの約束、まだ間に合うかな?」
千景「……」

圭吾が千景を抱きしめる。

圭吾「好きだ。俺の嫁さんになってくれ」
千景「もう、いつまで待たせるのよ!」
圭吾「……ごめん」

千景が応えるように圭吾の背中に手を伸ばし、二人が抱き合う。

終わり。

〈前の10枚シナリオへ〉  〈次の10枚シナリオへ〉