僕の生きる道
- 2023.08.29
- 映像系(10分~30分)
■概要
人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
ドラマ・舞台、現代、シリアス
■キャスト
浩太(こうた)
男の子1~5
女の子
教師
浩太の父
上級生1~3
上級生1の父
寛二(かんじ)
高校生1~3
■台本
〇通学路
浩太(8)が友達数人と歩いている。
浩太の前には3人が横並びで楽しそうに歩いている。
浩太だけは数歩後ろを一人で歩いている。
浩太は他の友達よりも頭2つ分ほど大きい。
浩太(N)「僕は小さい頃から背が高かった」
〇体育館
バスケの授業中。
男の子1がシュートを放つが浩太がブロックする。
周りから歓声が上がる。
男の子2「おおー、すげーな、浩太」
浩太「ははは……」
男の子1「いや、浩太は背が高いだけだろ! そんなのズルいって」
浩太「……」
浩太(N)「だけど、それはいいことばかりじゃない」
〇教室内
席替えをしている生徒たち。
浩太が真ん中あたりの席に移る。
その後ろの席には、男の子3がいる。
男の子3が顔をしかめる。
浩太のせいで全然、前が見えない。
男の子3「せんせー」
教師「どしたー?」
男の子3「浩太のせいで、前が全然見えませーん」
女の子1「私も見えません―」
教師「あー、まあ、そりゃそうか」
クラス中で笑いが起こる。
浩太「……」
教師「浩太、悪いけど、一番後ろの席でいいか?」
浩太「はい……」
浩太が立ち上がる。
男の子3「いいよなー、浩太は。自動的に一番後ろになれんだから」
浩太「……」
浩太が一番後ろの席に移る。
〇同
授業中。
浩太が目を細めている(浩太は少し目が悪い)。
浩太(N)「いや、悪いことの方が多いのだ」
〇体育館
体育の授業。
チーム分けをしている生徒たち。
男の子4「せんせー」
教師「ん?」
男の子4「浩太と同じチームは嫌です」
教師「は? そんな意地悪言うなよ」
男の子4「だって、浩太と一緒だと、すぐ勝てるから、楽しくないんだもん」
男の子5「あー、言えてる」
男の子6「あの背の高さは反則だよな」
ほとんどの生徒たちが頷く。
浩太「……」
教師「いいから、どこかに入れてやれ」
浩太「先生。僕、足が痛いので見学してます」
教師「あー……。そっか。それならしかたないな」
〇同
バレーの試合をしている生徒たち。
端で、浩太が体育座りで見学している。
浩太(N)「悪いことが多いどころか、良いことなんてあったことがない。……背なんて、高くなくてもいいのに。……背が低くなりたい」
〇廊下
浩太が歩いている。
そこに上級生たちが走って来る。
上級生1「おい、待て」
浩太「え?」
浩太が立ち止まると上級生たちが浩太を取り囲む。
上級生2「おおー。すげーでけー!」
上級生3「な? 言っただろ? モンスターがいるって」
上級生1「よーし! 俺がモンスター退治してやる」
上級生1が浩太の腹を殴る。
浩太「ちょ、ちょっと止めてよ!」
上級生2「おい、全然効いてねーぞ。お前のパンチ雑魚っ!」
上級生1「んなことねーよ!」
上級生1が思い切り、浩太を殴る。
浩太がカッとなる。
浩太「うああああああああああ!」
浩太が上級生1に襲い掛かる。
上級生1「うわああああ!」
浩太が上級生1を殴ると、上級生1が吹っ飛ぶ。
それを見て、浩太が無意識に笑みを浮かべる。
〇上級生1の家・玄関先
浩太の父親が頭を下げている。
それを見ている、上級生1と上級生の父親。
浩太の父「申し訳ありませんでした」
上級生1の父「あのですね。小学生は体格がものを言うんですよ。いくら、うちの子が年上だからって、そんな大きな子から殴られたら、危ないですよ」
浩太の父「本当に申し訳ありませんでした。ほら、浩太も謝れ」
浩太「……すみませんでした」
浩太も頭を下げる。
〇道路
浩太と浩太の父親が歩いている。
浩太の父「いいか、浩太。お前のその、大きな体は人を傷付けるためにあるんじゃない。守るためにあるんだぞ」
浩太「……」
浩太(N)「その日、僕は見つけた。僕の、この大きな体での、生きる道を……」
ナレーション「10年後」
〇外・物陰
寛二(16)が数人の高校生に囲まれている。
高校生1「あのさ、寛二くん。別に、全部出せなんて言ってないんだよ。少しでいいんだよ、少しで」
寛二「……」
寛二がポケットから財布を出すと、高校生1が奪い取る。
そして、中からお札を取って、財布を返す。
高校生1「ほれ」
高校生2「ぎゃははは。全然、少しじゃねー」
高校生3「少し、返したんじゃねーかよ」
高校生たちが笑いながら立ち去っていく。
寛二「……」
そこに18歳になった浩太が現れる。
寛二「(浩太に気づいて)うわああああ!」
浩太「ああー、大丈夫大丈夫。なんもしないから」
〇河原
寛二と浩太が並んで座っている。
浩太「なるほど。去年からか」
寛二「はい……。僕、身体が小さいんで、昔からよく、虐めのターゲットにされるんです」
浩太「なるほど。小さいのは小さいで、苦労があるんだな」
寛二「え?」
浩太「あー、なんでもない。それよりさ、作戦があるんだ」
寛二「作戦……ですか?」
〇外・物陰
寛二を虐めていた高校生3人が笑いながら歩いている。
高校生1「また、金無くなったから、寛二にカンパしてもらおうぜ。カンパ」
高校生2「カツアゲの間違いだろ」
3人が笑う。
そのとき、浩太の声が聞こえてくる。
浩太「おらあああ!」
浩太が寛二の顔を叩くと、寛二が思い切り吹っ飛ぶ。
高校生1「お、おい……。寛二のやつ、でけーやつと喧嘩してるぞ」
高校生2「喧嘩っつーか、一方的にやられてるだけじゃねーか」
浩太が思い切り寛二の腹を殴ると、寛二がまた後ろに吹っ飛ぶ。
高校生3「あれ……やべーんじゃね?」
高校生2「止めた方がいいかな?」
高校生1「バカ。止められるわけねーじゃん」
また浩太が寛二を吹き飛ばす。
高校生1「終わったな……」
倒れた寛二が起き上がる。
そこ顔が怒りの表情になっている。
寛二「うわああああああああ!」
寛二が拳を振り上げ、思い切り浩太を殴る。
浩太「うがっ!」
浩太が思い切り後ろに吹っ飛び、倒れて動かなくなる。
寛二「はあ……はあ……はあ……」
高校生1「おいおい、寛二のやつ勝っちまったぞ」
高校生2「あいつ、本当はつえーんだな……」
高校生3「怒らせない方がいいかもな……」
〇河原
顔がボコボコの寛二が座っている。
そこに浩太がやってきて、隣に座る。
浩太「あれから、どう?」
寛二「浩太さんの言った通り、虐められナックなりました」
浩太「そっか。よかった」
寛二「ありがとうございました!」
浩太「はは。いいんだよ」
浩太(N)「だって、これが体の大きな僕の、生きる道なのだから」
終わり。