読めない空気

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■概要
人数:3人
時間:5分

■ジャンル
ドラマ・アニメ原作、現実、コメディ

■キャスト
風花(ふうか) 24歳
真奈美(まなみ) 25歳
部長  56歳

■台本

〇社内
風花が部長に怒られている。
怒りながらも、部長がズレたカツラを微調整する。

部長「ったく! なんで、そういつもいつも、失敗できるんだ!」
風花「あー……。才能……ですかね?(にこり)」

部長が怒りでプルプルする。

部長「馬鹿もん! 少しは反省しろ!」

〇同
自席に戻って、がっくりとした様子で座る風花。

風花「はあ……」
真奈美「風花。あんた、やっぱ凄いわ」
風花「へ? なにが?」
真奈美「普通、あの場面で冗談とか言えないでしょ」
風花「えー……。だって、空気が悪いときは冗談を言って、場を和ませるのがいいって、この前見た動画で言ってたもん」
真奈美「……いや、空気が悪いっていうか、あんた、怒られてたんだから、和ませちゃダメでしょ」
風花「えー? どういうこと?」
真奈美「怒られた時は、シュンってしてろってこと」
風花「でも、真奈美ちゃん、この前、『女の子が失敗したときは、可愛く笑えばいい』って言ってたじゃない」
真奈美「あー、いや、それは、そうじゃなくて」
風花「ん?(首を傾げる)」
真奈美「……もういいや。何でもない」

がっくりと肩を落とす真奈美。

〇同※数日後
風花が部長と話している。
風花は終始、うつむいてシュンとしている状態。

部長「で、ここは、いつになったらできそうだ?」
風花「……」
部長「聞いているのか?」
風花「……」
部長「えっと、寝てないよな? 質問してるんだが……」
風花「……」
部長「あのな……うっ!」

急に部長が腹を抑えて苦しそうにしている。

風花「部長?」
部長「あー、いや、最近、胃がキリキリしてな」
風花「大丈夫ですか? 無理しない方がいいですよ」
部長「……誰のせいだと思っとるんだ」

〇同
自席に座っている部長の顔はゲッソリとして、青ざめている。
それを自席(遠目)から見ている風花。

風花「うーん。部長、最近、元気ないけど、大丈夫なのかな?」
真奈美「……あんたが言うか、それ」
風花「なんか、元気付ける方法とかないかな?」
真奈美「え? なに? あんた、部長に元気出して欲しいの?」
風花「ううん。元気付けて、恩を売っとけば、怒られることもなくなるかなって」
真奈美「……あんた、ホント、良い性格してるよ」
風花「えへへ。ありがと」
真奈美「ほめてないけどね」
風花「それで、どうしたらいいかな?」
真奈美「私に聞かれても」
風花「えー。だって、私、こういうとき、どうしたらいいかわかんないんだもん。教えてよ」
真奈美「はー……。なら、自分がしてもらって嬉しいことをすればいいんじゃない? それなら、いくらあんたでも、わかるでしょ?」
風花「自分が嬉しいこと……。うん! わかった!」

風花が、バンと机を叩きながら勢いよく立ち上がり、部長の元へ歩いていく。

真奈美「え? 風花? 何する気……」

座っている部長を見下ろす風花。

部長「ん? どうした?」
風花「部長。頑張って、偉いね。良い子良い子」

風花が部長の頭を撫でる。
すると、部長のカツラが取れて、地面に落ちる。

風花「ありゃ?」
部長「っ!?」

その場の空気が凍る。

〇同※次の日
部長の席には誰も座っていない。
それを不思議そうに見ている風花。

真奈美「部長、胃に穴空いて、入院だって」
風花「あれー? 元気出なかったかな?」
真奈美「……」

終わり。

 

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