医師の仕事
- 2023.09.27
- 映像系(10分~30分)
■概要
人数:5人
時間:10分
■ジャンル
ドラマ・アニメ原作、現実、コメディ
■キャスト
橘 小太郎(たちばな こたろう)
美紀(みき)
誠(まこと)
誠の母親
院長
■台本
〇病院外観
病院の外観と、『坂下総合病院』の看板
〇院長室の前
ドアには『院長室』と書かれたプレートが貼ってある。
院長の声「……いい加減にしてくれませんかね」
〇院長室
豪華な室内。机を挟んで、院長と小太郎が向かい合って立っている。
小太郎の隣には看護師の美紀が立っている。
院長「橘先生への苦情が今月で、もう3件目だ」
小太郎「いえ、4件目です(指を4本立てて)」
院長「……」
美紀が横ではあー、とため息を付く。
院長「とにかく、君への苦情が多過ぎる! 気を付けてくれたまえ」
小太郎「いや、俺はいつも気を付け……」
美紀が小太郎の足を踏む。
小太郎「うげっ!」
美紀「私からも、気を付けさせますので……」
院長「……頼んだよ」
〇病院の廊下
小太郎と美紀が並んで歩く。
小太郎「おかしいなぁ。俺はただ、真面目に仕事してるだけなのに。何が問題なのかわからん」
美紀「その感覚が問題なんじゃないんですか?」
小太郎「ん? 美紀くん。それって、遠回しに俺の感覚が人と違うって言ってないか?」
美紀「わっ! よくわかりましたね。橘先生にしては鋭いじゃないですか」
小太郎「あははは。照れるなぁ」
美紀「そろそろ、診察の時間ですよ。急ぎましょう」
美紀が小走りになるので、小太郎も慌てて、小走りで追う。
〇診察室
誠の診察をしている小太郎。
聴診器を誠の胸に当てている。
誠の後ろには母親が心配そうに立っている。
誠はゴホゴホと咳をする。
聴診器を外す小太郎。
小太郎「うーん。ただ風邪ですね」
母親「そうですか……(ホッとして)」
小太郎「ただ、食欲もないみたいですし、抵抗力も下がってそうです。注射をお勧めしますが、どうしますか?」
母親「それじゃ、お願い……」
誠「いやだ! 注射はぜーったい、いやだ!」
母親「誠。我がまま言わないの。注射すれば、風邪なんかすぐに治るんだから」
誠「やだ! 注射するくらいなら、具合悪いままでいい!」
母親「もう、この子ったら……」
小太郎「誠くん。どうして、注射が嫌なんだ?」
誠「だって……。チクってして痛いんだもん」
小太郎「うーん。そっか。じゃあ、痛くなければいいんだな?」
誠「え?」
〇同
テーブルを挟んで美紀と誠が座っている。
誠の横には母親と、小太郎が立っている。
美紀の前には注射と腕を置く台があり、美紀が台を誠の前に置く。
美紀「じゃあ、腕を出してくれるかな?」
誠「うう……。本当に、痛くない?」
誠が小太郎の方を心配そうに見上げる。
小太郎「ああ。これから、注射が痛くなくなる、魔法をかける」
その言葉に誠と美紀が不安そうな表情になる。
小太郎「腕をまくって、こっちに出してくれ」
誠「うん」
誠が腕をまくって、小太郎の方に出す。
その腕を掴む小太郎。
小太郎「じゃあ、いくぞ」
いきなり、小太郎が指で誠の腕を思い切り叩く(しっぺ)。
物凄い音が響く。
誠、母親、美紀が目を丸くする。
小太郎「(美紀に)今のうちに打って」
美紀「え? あ、はい」
美紀がいそいそと誠の腕に注射をする。
誠は未だに呆然としている。
小太郎「(にっこりと)な? 注射は痛くなかっただろ?」
誠の腕に、くっきりと小太郎に叩かれた跡が赤く残っている。
小太郎「注射とは違うところを痛くすることで、注射の痛みを感じなくさせるんだよ」
小太郎に叩かれた方の腕が、腫れあがってくる。
誠「うわーーーん(大泣き)」
小太郎「え? なんで泣くんだ?」
〇院長室
院長が小太郎たちに背を向け、窓から外を見ている。
そんな院長の背中を見ている、小太郎と美紀。
院長「橘先生」
小太郎「はい」
院長「減俸だ」
小太郎「なんでだーーー!」
頭を抱える小太郎。
横でため息を吐く美紀。
終わり。